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アメリカの旅行業界の今−「グリーン」に取り組む時期−パウワウ雑感

  • 2008年6月5日
 世界の各メディアをにぎわせる原油高騰の話題。車の依存度が高いアメリカ社会では、ABCやCNNなどのメディアが連日、この話題を取り上げている。旅行業界にとっても大きな問題で、特に切実なことは航空燃料の高騰に関連する燃油サーチャージのこと。アメリカ人の今夏の車を使った休暇は控える傾向にあるという調査結果も出ているほど、原油の高騰は日常生活から余暇の旅行にまで、幅広く影響を及ぼしている。

 パウワウで原油高騰の話が直接、議論されることはなかったが、初日の昼食時の講演で「グリーン」、いわゆる企業側が環境に配慮した対応をしなければならない、と打ち出したことは画期的だ。初日の講演に「Green to Gold」の共著者でウィンストン・エコ・ストラテジストのアンドリュー・ウィンストン氏が、企業は環境対策に取り組むべきと力説した。世界に拠点を展開するウォルマートが省資源、環境への配慮などを基準に仕入先の選定に着手、消費者も「クオリティ」に対する意識が高まっていることも紹介した。

 旅行業界は、移動時の航空、船舶、車などで原油を消費、かつ二酸化炭素を排出し、地球温暖化に「貢献している」業界である。しかも、航空需要が最も多い国であり、車も日常生活からレジャーまで幅広く使われているアメリカにおいて、その旅行業界が「グリーン」を積極的に打ち出すことは大きな前進だ。昨年のITBベルリンでは、世界観光機関(UNWTO)事務総長のフランシスコ・フランジアリ氏が環境問題について、「実務家レベルでも3年程度の中期だけでなく長期的な視野も持ち、物事を見ていく必要がある」と課題を提示したことを想い起こすが、世界の旅行業でビッグプレイヤーのアメリカが環境に配慮したビジネスを展開していけば、こうした企業活動も世界に広まることが期待される。UNWTOは9月27日の世界観光デーに環境を考慮した観光全体での対応を行うことを明らかにしている。

 しかし、会場内の冷房、ゴミ捨てなどを見ると、掛け声だけの状態に感じられる。アメリカの旅行業界全体が、環境に対して実践的に取り組まなければならず、旅行関係者が一同に介するこうした見本市において、実践していくことで業界全体に波及するだろう。

 日本でも、旅行会社から航空会社まで、それぞれの企業レベルで「環境」、「エコ」を意識した取り組みが始まっている。アメリカでは全米旅行産業協会(TIA)が旗振り役とすれば、日本では10月にできる「観光庁」にこの旗振り役を期待したい。日本ツーリズム産業団体連合会(TIJ)や日本旅行業協会(JATA)にも環境やエコの分野では、業界の各企業に伝えていく大きな役割がある。特に、JATAは9月の旅行博では環境に関して数年来、取り組んできた実績はある。需要喚起は重要で、TIAの取り組みなどにより、911以前のレベルに来年のアメリカ・インバウンドが復活するというが、質の高い旅行は需要喚起に加え、環境といった10年先、あるいは100年先の姿を想像しながら、ビジネスに取り組む必要がある時代になってきている。(鈴木)


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