ニューヨーク、訪問者好調で5000万人達成を前倒し−日本への投資も積極姿勢

  • 2008年6月5日
(ラスベガス発 特派:宮田麻未、本紙:鈴木次郎) ニューヨーク市観光局(NYCC)CEOのジョージ・ファティータ氏は、世界規模で展開するマーケティング・キャンペーンで、NYの認知度を高めることに成功していると強調し、引き続き需要の喚起をはかる考えだ。2007年にニューヨーク市を訪れた観光客は4600万人超で、2006年比で5%増。内訳はアメリカ国内の観光客は1.5%増に対し、カナダとメキシコを除く海外は23%増と大きな伸びを示した。特に、ドル安の為替環境から、フランスやドイツなど各国とも30%増から40%増と大きな伸びを示した。また、日本からの訪問客は、米国全体では前年度を下回ったが、ニューヨークは3%増の28万3000人と増加。2008年度の上半期も、全体的な上昇傾向は続き、年度末には4770万人台に達するものと予測されている。

 これにともない、ニューヨーク市は2006年に設定した「2015年までに集客数5000万人達成」という目標を前倒し、ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏はビデオ・メッセージで、「2012年までに5000万人」を目指すことを語った。特に、「This is New York City」のキャッチフレーズを基本に、ニューヨークはマンハッタンだけでなく、ブルックリンやクィーンズなど、NYCの5つのボロー(行政区)を包括的に紹介する「ファイブ・ボロー・キャンペーン」を展開し、一極集中ではなく、広がりを確保しながら集客につなげている。

 また、ドナルド・トランプ氏の娘のイバンカ・トランプ氏、俳優のジュリアン・ムーア氏など、ニューヨーク在住のセレブ22名が、テレビや街角のバナー広告などで、「我が街、NYC」を紹介する「Just Ask the Locals」も展開しているところ。このキャンペーンに参加しているセレブたちは、全て無償で協力を申し出ており、お気に入りの場所やレストラン、クラブなどを紹介している。こうした点でも「クチコミ」の力を持つキャンペーンで効果的のようだ。

 さらに、昨年来、NYC観光局は海外支局を7カ所から17カ所に増設。東京やソウル、上海にも支局が置かれることとなった。さらに今年中にインドのムンバイにも開設予定だ。


▽日本市場への積極姿勢も示唆

 ファティータ氏は、日本市場が3%増となっていることを受け、日本語サイトのリニューアルの時期、ヨーロッパで展開している旅行会社を対象とした教育プログラムの展開時期をそれぞれ早めることを示唆した。ファティータ氏は「かつてのレベルにニューヨークを訪れてもらえるようにしたい。さらに1日の過ごし方も多くの滞在方法がある」として、プロモーションを積極化する考え。また、ニューヨーク・ヤンキース、ニューヨーク・メッツの本拠がそれぞれ今年をもって改修に入るため、最後のシーズンとなることから、球場の一部を販売するなどのイベントをテコに、需要の活性化をめざす。

 また、「5000万人達成」の目標年を繰り上げたことは、市当局や観光局の積極的な姿勢を示すものとして評価すべきだろう。その一方、ホテルのキャパシティの問題など、解決すべきことは少なくない。ファティータ氏は「クリスマスのショッピング・シーズンをはずし、1月や2月の訪問でも、お得感のあるショッピングを楽しめるなどの告知を行うことで、予約が取りにくいことに対処できる。宿泊先をマンハッタンに限定せず、5つのボローにあるホテルも考慮してもらえるようにすることもキャンペーンの目的」と述べた。なお、2008年の最初の3ヶ月で、NYC内のホテルはすでに54万泊分を売り上げ、昨年の同時期比で5%増と好調。ホテルの稼動率も、米国平均の60%を大きく上回る80%超を推移しており、「かつてのレベル」に戻りつつあるようだ。