トップインタビュー:アマデウス・アジア・プレジデント デービッド・ブレット氏

効率化を実現し、付加価値提供の支援で有益な関係を
コスト削減の波はGDSにも及ぶも、それを上回る開発、投資を



 アマデウスは先ごろ、JTBコーポレートソリューションズと連携し、JCSは下期から海外出張の予約・管理サービスを提供する。この一連の流れは、アマデウスが06年に「ITソリューション企業」の方針を打ち出した答えのひとつ。燃油費が高騰する中、旅行会社に対するコミッションカット、ゼロなど、航空会社がコスト削減に奔走するなか、アマデウスではGDSも論外ではないとの観点で、相互発展に向けた付加価値の提供に力を入れている。先ごろ、日本での設立10周年を機に来日した、アマデウス・アジア・プレジデントのデービッド・ブレット氏が現況を語った。(聞き手:編集長 鈴木次郎)


−2006年に「ITソリューション企業」を打ち出したが、その進捗は

デービッド・ブレット氏(以下敬称略) ITソリューションは今後、さらに重要になってくる。特に、個々の企業の要望にあわせたかたちでカスタマイズをしていくこと、ニッチに対応していくことが鍵となる。この3年間はそのプロを育成することに注力し、重点を置いてきた。こうした成果の一つがJTBコーポレートソリューションズ(JCS)との連携だ。JCSの旅費・経費管理システム「J’s NAVI(ジェイズナビ)」とアマデウスの海外出張予約・管理システム「Amadeus e-Travel Management」の連携により、JCSの海外出張分野を補完しており、技術面が高いところにあると認識している。ITテクノロジーの分野で、ナンバーワンになりたい。


−GDS分野ではアジアでのせめぎあいも激しくなってきている

ブレット アマデウスは航空・旅行・ホテルなど旅行関連業界の将来を見て、投資をすることが非常に重要だと考えている。そのためには、航空、ホテルなどサプライヤーと、それらを販売する旅行会社、それぞれの顧客が何を求めているかを先取りして、ニーズを満たしていくことが必要になる。全世界のスタッフは約8000名、そのうち約3000名が研究・開発に携わっており、この充実度と投資は他社と比べれば、大きな差があるだろう。この結果、アマデウスは世界的にシェアを拡大しており、日本でも利用比率が高まっている。

 テクノロジーを基盤として、レガシー・システムからオープン・プラットフォームに変化したことで、予想をしていなかったメリットを享受している。例えば、航空会社はこれまで独自にシステムを開発していたが、オープン・プラットフォームへの変更により、1航空会社が開発した良い機能を、他の航空会社が利用することができる。例えば、フリークエント・フライヤーズ・プログラムで1社が良いシステムを開発した場合には、オープン・プラットフォームで開発するシステムにその仕組みが加わり、他社はその恩恵を受けることができる。

 こうした事例は、航空会社だけでなく、旅行会社に提供するシステムでも同様で、さまざまな分野に大きなメリットを提供できるようになっている。旅行の分野でITを独自に開発することは時代の主流でなくなりつつある。こうした大きな変化がおきていると感じている。


−航空会社は燃油費の高騰という難題に直面し、コミッションカットやゼロにするなど、これまで以上に躍起になってコスト削減に取り組んでいる。これは、旅行会社も真剣に取り組むべき大きな課題だ

ブレット インハウス旅行会社も真剣に取り組んでいる。これらの会社の価値を考え、差別化をはかる手助けが重要になってくる。例えば、アマデウスでは旅行会社の顧客企業が工場などを所有する場合、その近くにあるホテルを検索するアプリケーションを提供している。インハウスだけでなく、ホールセールも含めた旅行会社のニーズに対応できるサービスを提供していくことが求められている。旅行会社からも相談があり、個々の案件の内容にあわせた最適のシステム・ソリューションを提供していきたい。

 ジェイズナビとの連携も、JCSからの海外出張の機能がないという相談を元に実現したものだ。過去には、企業側がERPやSAPを導入してきたが、最終的に顧客となる企業の経営者が求めていることはコスト削減。出張の場合は、単なるオンライン・ブッキングだけでなく、企業内の承認をはじめとする社内手続きにかかる手間やコストもきちんと踏まえなければならない。そうしたツールを提供することで、市場も大きく変わっていくのではないか。

 航空会社のコミッション削減、ゼロの方向はシンガポールをはじめ、世界的には起こってきていること。GDSもそうしたコスト削減の動きで検討される項目のひとつだろう。ただし、航空会社にはGDSの機能を提供することに加え、イールド、レベニューマネジメントをはじめとする各種の機能を提供している。こうした一体的な取り組みに価値を見出してもらえるだろう。ただし、コストについては業界全体がより効率的にならなければと思っている。アマデウスとしてテクノロジーを提供することで、旧来のコスト構造からよりイールドを高めるシステムを提供し、本来やるべきマーケティング、FFPをはじめとする顧客サービスにかける体制に変化していく必要があるだろう。

 自動化できることは機械やシステムに任せることにより、旅行会社がより効率性を高め、店頭の方々、あるいは営業担当者など最前線にいる人たちが、より顧客との応対に時間を割くことができるような、付加価値を提供するを支援していきたい。無駄な時間、特に作業の部分を縮小していけるかが鍵となる。


−GDSとしては、航空、ホテル以外に、鉄道、レンタカーなど提供するコンテンツを拡充していく考えはあるか

ブレット コンテンツの増加は、現在、大きく前進をしている分野だ。ヨーロッパでは、鉄道の予約でシートマップを提供しているなど、システムの使いやすさの部分でも先行していると自負している。日本では、バスについて、GDSやアマデウスの理解が急速に進んでおり、今後はJR各社に同じように話をしていきたいと考えている。日本インバウンドの推進には、こうした流通システムの利用も大きな促進剤となるはずだ。


−日本では海外旅行の市場停滞が懸念されている。アマデウスは日本で数を追うのか、シェアを高めていくのか

ブレット 市場の伸びがなく前年と同レベルであるならば、シェアを高めていく。2010年には空港の容量拡大という大きな機会があるが、その時点でも戦略を変えていくわけではない。日本ではコミッションカット、インターネットの浸透、消費者の要求が高いことに対応をしていかなければならない。そのための対策を確実にするとともに、サービス、テクノロジー、顧客満足度の向上につなげていきたい。


ありがとうございました


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