EUの旅行・航空サイトで3分の1が不当表示−燃油関連で公取「早期の対応を」

  • 2008年5月23日
 欧州連合(EU)は先ごろ、欧州での航空会社、旅行会社のウェブサイトを調査し、約3分の1が消費者に誤解を与える表示をしていると公表した。来年5月末を期限とし、それまでに改善がされない場合は、消費者保護法で定められた制裁に加え、新たな手段を講じるとしている。調査対象は、航空券を販売する旅行会社、格安航空会社、大手航空会社の386のウェブサイト。このうち、約3分の1にあたる137のサイトに深刻な違反があったとしており、こうした問題は航空会社と旅行会社に多く見られると警告を発している。

 一部の例として、ある旅行会社のサイトでは割引価格のみを表示し、予約にいたる最終段階で、空港税、ブッキング・フィーやクレジット・カード・フィー、またはその他のサーチャージを課金する流れがあった。EUでは既に対象のサイトに警告を発しており、このうちの半分は改善に着手したものの、いまだに改善されない例もあるという。


▽日本での表示は−燃油サーチャージが大きな論点

 ヨーロッパでも問題視されつつある航空、旅行商品の表示に関する問題は、日本では旅行商品の総額表示と関係した議論になっている。公正取引委員会(公取)経済取引局取引部消費者取引課では、「(追加徴収する燃油サーチャージの)金額が高騰していることもあり、消費者に誤解を与えないような表示にするよう、できるだけ早い時期に対応をして欲しい」とし、景品表示法で不当表示、誤解を招く行為を禁止している観点から、追加される燃油サーチャージ額の目安を表示するよう、方向性を示唆している。ただし、日本旅行業(JATA)が航空会社に対し、表示の根本となる燃油サーチャージのIT運賃への組み込みや一般消費者への広報・周知を働きかけることで、価格表示に関する解決をはかろうとする取り組みにも理解は示している。

 既に、旅行業公正取引協議会では、募集の段階から燃油サーチャージ額の金額について、確定額、または目安となる額を表示するよう改善案をまとめてあり、今月から来月をめどに会員各社に通知する意向だ。こうした動きを前に、エイチ・アイ・エスは総額表示を実施しているほか、クラブツーリズムは募集広告に目安金額を表示し、対応をしている。ただし、旅行業公正取引協議会では消費者からの苦情も多いことから、公取が現在の旅行業界の動きに理解を示しているとは言え、「不当表示として提起される可能性もある」という危機感を強く感じているようだ。国土交通省でも、燃油サーチャージ額の目安を表記する旨の通達を発出する準備はできており、業界の自主的な取り組みと各社の交渉を見守る姿勢にある。

 EUの場合は、ウェブサイトでの表示方法で、燃油サーチャージに限ったはなしではないが、消費者の誤解を招くという点で、日本での高額な燃油サーチャージ額の徴収とそれにともなう表示の問題と共通している。7月1日から、日系2社が燃油サーチャージ額をさらに引き上げると発表し、さらに旅行代金、および航空運賃本体との価格差が生じることになる。JATAが要望した09年上期商品に間に合わせた新IT運賃に対する航空会社の結論、旅行会社、および航空会社の募集広告、の表記の改善が、迫られる時期にきているだろう。