インタビュー:フランス政観パリ本部マーケティング・ディレクター ヴィザンテネール氏

  • 2008年4月9日
フランスの多様性を楽しんで
ホテル評価に「5ツ星」を加え、ホスピタリティも重視


 フランス政府観光局パリ本部マーケティング・ディレクターのパスカル・ヴィザンテネール氏は、日仏交流150周年の事業を契機に「これからも多くの日本人を(フランスに)受け入れたい」と意欲を示した。日仏交流年では、フランス政観は加盟するフランス国内の1300社に呼びかけ、デパートやワインセラーなどを含む幅広い観光関連業が日本人客を迎えるメッセージを用意するなど、歓迎ムードを盛り上げている。また、日本では旅行会社のパッケージツアーでも、パリだけではなく、フランスの田舎町を訪れるツアーの造成が進んでおり、フランス政観が消費者にアピールしていくフランスの多様性に応える商品と評価する。今回のキャンペーンは「旅行業界へのサポートにつながる」との確信を示し、消費者とともに旅行業界にも、「フランスを創った要素である地理、歴史、そして現代の新たなものを理解して欲しい」とアピール。旅行者が、それを体験できる旅行を実現して欲しいという。

 このように語る背景には、フランス政観が「クオリティ(質)」を重視し、プロモーション戦略でも「サービス向上に立脚したものでなければ」という方針だ。特に「クオリティ」は2005年から2010年の戦略を立案する際に、全世界の1万2000人を対象とした調査から浮かびあがった課題だ。フランスを訪れたことのない人は、パリのエッフェル塔を背景とした様々な「使い古されたイメージ」というマイナスの先入観が強く、費用対効果やもてなしに対する期待値が低かったという。もちろん、訪問経験がある人はこうした印象は薄れるものの、「現実も改良すべき」という問題意識から、プロモーションでのイメージ改良とともに、改善をめざしてクオリティコントロールをおこなう仕組みを導入するなどの対応を進めた。ただし、ヴィザンテネール氏はフランス人の気質について「文化的には個人主義で、相手のプライバシーに深く立ち入らない」という背景があり、「表面的な愛想の良さよりも、長く本心で付き合える良さ」を「発見」して欲しいという。特に、「フランスの田舎のオーベルジュやビストロなどで人々と触れ合い、フランスの素に触れてもらえれば」と勧める。

 官民一体となった改善も、さらに進める。官の担当では近く、フランス国内のホテル格付けは1ツ星から4ツ星の4段階から、5ツ星までの5段階に評価が変わる。4ツ星までの評価はこれまでと変更はなく、客室の広さなどの項目による客観的評価だが、新たに加わる5ツ星は主観を加えたものとなる。例えば、サービスのよさ、室内の雰囲気などが評価基準に加わり、もてなしやホスピタリティの評価が拡充される。一方、民では、各ホテルの改装が進められ、世界的なブランドのあるホテルグループやチェーンホテル以外のブティックホテルも洗練されたうえ、アパートメントをはじめとする宿泊施設のバラエティも多様化がはかられているところだ。

 日本での活動では、現在の「(日本人訪問者数の)65万人を将来的に80万人にしたい」というものの、実際的には消費額の増加、そして全世界からの訪問者に占める割合を高めることをねらう。具体的には滞在日数の増加、アクティビティの紹介、費用対効果、リピーターの育成と増加を軸とする。このうち、滞在日数の増加に対しては、従来の売れ筋であるヨーロッパ周遊型をフランス周遊型へと旅行商品の企画に変化を促したいという。フランスは30の地域に分かれ、テーマでも歴史、建築、食などさまざまあり、「フランス」というひとつの国でありながら、地域が独立した国であるような多様性、独立性を楽しむ旅行にしてもらいたいという。

 こうした日本での活動について、「日本流のやり方もある」として定期的な来日やプロモーションの継続する考え。さらに、日仏交流年で新たなプロモーション手法として携帯電話を活用するなど、「日本でフランスを売る新しい方法を考え、他の市場でも取り組みたい」と意欲を見せている。


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