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VWCが始動、佐々木氏「熱気をうみだそう」-「首都圏は雰囲気、数値は地方で」

  • 2008年4月7日
 日本旅行業協会(JATA)はビジット・ワールド・キャンペーン(VWC)を正式に開始、JATA海外旅行委員会委員長で、VWC特別委員会委員長、ジェイティービー代表取締役社長の佐々木隆氏は「2000年の1780万人をピークに海外旅行の魅力が減少している。国の目標の1つである2010年2000万人をめざし、熱気を作っていくことが重要」と語った。「できる限り、動き、熱気をもたらしたい」とし、「3年間、楽しく時には意見が対立するかもしれないが、共に手を携えて海外に行くように努力を」と呼びかけた。

 記者会見に同席した国土交通省大臣官房総合観光政策審議官の本保芳明氏は「海外旅行は黙っていても伸びてきたが、この10年は延びていない」とし、「韓国、中国と比べ若い人が海外に出ていない。若い人たちの経験値が下がることは、国際競争力が落ちることで日本の国力や文化力に影響のあること」と、このキャンペーンの意義を指摘。その一方で、日本の海外旅行は民間の取り組みとし、「各方面のステークホルダーが連携し、政府としても精一杯、応援をしたい」とした。また、2000万人推進室長の澤邊宏氏は各機関との連携で活動を進めるが、「消費者の旅行マインドの変化を、旅行会社がいかに理解できるか、そして魅力ある旅行商品をどのようにつくって行くか」を課題としてあげた。


 2000万人に向けた計画は、(1)ツー・ウエイ・ツーリズムを基本とした関係省庁、関係機関との連携による海外旅行のムーブメント、気運づくりの創出、(2)地方での活性化を積極的に推進し、定期便とチャーター便を含めた地方発空港の需要喚起、(3)低迷するデスティネーションや方面、渡航者が増える方面の積極的なプロモーション、(4)若者やシニア層まで需要層別、旅行形態別の需要喚起、(5)海外旅行を阻害する要因への取り組みの5つでなるもの。関係機関は、観光局、ランドオペレーター、バス会社、航空会社などで、具体的には旅行商品の展開で、市場にメッセージを送るものとする。

 また、年度別には2008年に1800万人、09年に1900万人、2010年には2000万人の達成をめざす。具体的に、佐々木社長がいう熱気づくり、あるいは気運作りには公募による世代、方面別の海外旅行民間親善大使を任命し、実際に訪問してもらうことによるピーアール活動、首都圏の私鉄を活用した「トレイン・ジャック」について、平成20年度上期におこなう。重点地域を指定した取り組みについては今週にも発表するが、澤邊氏は「北米、ハワイ、オーストラリア、香港、フランスをはじめ8から9ヶ国・地域をあげたい」とし、「指定したデスティネーションだけでなく、(VWCの)意図にそったところであれば、積極的に取り組みたい」とした。


▽オピニオン−地方市場の活性化が鍵

 2010年まで、日本人出国者数を2000万人とする目標は、数字だけでなく「熱気」や「気運」が重要だという。4月4日の会見でこうした点が強調され、レセプション会場でも雰囲気づくりの重要性を多くの人たちが共有したように感じる。ただ、個人的には、今回の数値目標は必達して欲しい。そのための成否は、2010年までという時間を考えれば、人数の増加は首都圏ではなく地方に重点を置くべきで、首都圏は気運づくりという「切り分け」を提案したい。

 燃油サーチャージ額の徴収、表示方法や、若者層の海外への意欲をいかに高めるかは、非常に大きな課題だ。ただ、羽田空港と成田空港を活用した海外旅行者数の増加は、発着枠の制限や、航空会社の機材の小型化などを踏まえれば、大きな期待はできない。爆発的な増加は2010年以降だろう。この2年から3年をかけて、じっくりと腰をすえた消費者への意識改革と、旅行業界の商品造成での変化を促したい。

 一方で、関西、中部を含む首都圏を除く市場は、人数増に最も効果のある、かつ短期的な成果を導き出せる方策だ。地方市場に関して、4日の記者会見で佐々木社長は以前から指摘しているパスポート所持率の低さに改めて言及した。さらに、「東京、名古屋、大阪市場と同じような手軽さで、海外にいけるように」とも述べている。確かに、そうした初歩的な条件は重要で、VWCではパスポート取得キャンペーンの展開も、視野に入れている。こうしたキャンペーンとともに、新潟空港の事例は非常に参考にすべきポイントがある。このサイトは新潟空港発で、世界各地に行けることを広く周知するねらいで、好きなデスティネーションへの乗継ぎが検索でき、こうした取り組みは積極的に周知し、同じような機能は旅行会社が果たすべき重要な役割だろう。

 また、中部国際、関西国際空港を活用した国内線/国際線の乗継ぎは、仁川、上海、香港、グアムなど、地方発国際定期便が就航する路線にまで広げ、展開することも重要ではないか。グアムでも、サイパンのほか、ケアンズへも行ける。仁川、上海、香港は世界各地とつながっている。提案だが、航空会社は地方発路線について、ロードファクターを公表してはどうだろうか。これにより、地方路線を運航する航空会社が、旅行会社がチャーター便を設定すると、「定期便がないがしろにされる」という主張がいかに正しいか、そして定期便を活用する力にもなるだろう。関西線を撤退したシンガポール航空のような事態を、地方市場で起こることは避けたい。2000万人キャンペーンは、「気運」づくりもふくめ、消費者だけでなく、旅行業界がどのように動くかが重要で、地方市場が成否を握っている。(鈴木)