トップインタビュー:日本旅行・アメリカンエキスプレス代表取締役社長のメリンダ・タラント氏
BTMの「フィー」ビジネス、さらに啓蒙を
マーケットシェア拡大のチャンス
先ごろ、日本旅行・アメリカンエキスプレス(日旅アメックス)代表取締役社長に、メリンダ・タラント氏が就任した。タラント氏はアメリカン・エキスプレスにおいて、ビジネス・ディベロップメント&コンプライアンス室で、為替事業を皮切りに、アジア太平洋地域における為替業務部門の責任者、アメリカン・エキスプレス・ビジネス・トラベルのビジネス・ディベロップメント&コンプライアンス室の責任者として活躍。特に、オーストラリアでのビジネス・トラベルの市場開拓、成長戦略の策定とその支援、コンプライアンスの観点から顧客への課金する料金の妥当性を検討する立場にあった。こうした経歴を活かし、今後の日本市場でどのような展開をするのか聞いた。(聞き手:編集長 鈴木次郎)
−着任の抱負とこれまでの経歴をどのように活用するか、お聞かせください
メリンダ・タラント氏(以下、敬称略) マーケットシェアの拡大をはかること、そしてチームを率いてこれまで培った知識、技術を有効に使いたい。アメリカン・エキスプレスでは、為替業務部門は旅行部門の一部として、実際に出張に行く方、そして旅行会社を対象としたオンラインでの外国通貨の購入に携わる仕組みの開発に携わった。オーストラリアで導入した仕組みはその後、7ヶ国に導入している。その意味でオンラインツールに関して理解はあるが、これは旅行業ほど複雑な仕組みではない。旅行業界には既に多くの専門家がおり、このようなツールの開発は任せていきたい。
成長が見込める戦略的なプロジェクトを見いだし、それを成功に導く施策を考え、実行してきた。例えばオーストラリアでのグループ旅行について、アウトソースをすることによって成長を見いだした。また、アドオンのサービスについては、効率的、生産的に課金できるかどうかをチェックしてきた。こうした経験を活かせればと思う。
−昨年の業績と今年の目標、また日本市場に関する所感を教えてください
タラント 2007年の業績は非常に良く、今後に向けた礎を築くことができた年であった。取扱額は前年比8%増であり、企業との契約の継続率は99%であった。今年度については2007年の業績と同様に大きな成功を収めることができると見ている。グローバル・アカウントと同時に、日本企業のアカウントを確実に増やし、昨年獲得したことによるアカウントの増加による業績の向上も期待できる。
そもそも、日本は他の国と比べ、出張費というコストはまだ高いと考えている。その理由はプロセスが複雑であることがあげられる。例えば、GDSも複数を利用しなければならないこと、航空券はeチケット化がすすんでいるが、鉄道はデリバリーをする必要があるなど、複雑さがコスト高につながっている側面がある。こうした点は、1社ではなく業界団体を通して働きかけをしていく必要があると考えるが、さらに個別にGDSや航空会社などとも話をしていく必要がある。また、中国も複雑さという点では日本市場と類似するところがあり、日本市場と中国市場での対応を互いに学習し、改善につなげていくことも役に立つだろう。最終的には出張者を出す企業の支払いになるわけだが、お客様への商品提供という観点では効率的なコスト管理を提供できるという点で、日本旅行AMEXとしてのビジネスチャンスを見いだすことができる。
−日本のビジネス・トラベル市場の将来性をどのように見ているか
タラント 日本のビジネス・トラベルはまだ拡大すると思うし、明るいと見ている。コミッションカットやオンライン会議の導入など、逆風の側面もあるが、サービス提供者に依存する側面が大きい。大企業であれば、インハウス旅行会社もあり、今後のコミッションカットの流れを考えると、BTMに関心を高めていく可能性は高い。コミッションカットの流れは、日本旅行AMEXとしては一つの機会と捉えている。これまでのモデルは、インハウスは「プロフィットセンター」の役割を果たしていたが、ゼロ・コミッションの時代になれば例えば、マネジメントフィー、トランスアクションフィーといったコストになる。そうした時代に、単にコストだけでなく、提供するサービスの質についても重視される時代だ。つまり、「リベートモデル」の時代から、「フィーを払って旅行サービスを受ける」という流れを市場に啓蒙し、認知を高めていく必要もある。
「ゼロ・コミッション」は既に、オーストラリア、シンガポール、アメリカをはじめその他の市場でも起きていること。もうすぐゼロになるという予測がある中で、希望的観測に基づいた伝統的なやり方だけではなく、お客様、あるいは顧客となる企業も変わっていかなければならないだろう。
−市場の見通しが明るいとすれば、御社の営業拡大をどのように考えているのか
タラント BTMでは標準化とカスタマイズと大きく2つのレベルがある。中規模の企業であれば、限られたコストの中で出張をやりくりするニーズに対して、傾向をはじめとするデータを提供するが、おおむね標準的な対応になる。また、グローバルに展開するような大企業であれば、出張のボリュームがあり、かつVIPサービスの提供、あるいは緊急時の対応など様々なオプションを付加すること、あるいは包括契約の中に含めるなど個別の企業にあわせたカスタマイズ化への対応といずれも可能だ。
世界的に中規模の企業にBTMの照準が向いているが、これは日本も世界の流れと同じだ。特に、中規模の企業には航空会社との契約が無いことが多く、その点でわれわれのチャンスであり、市場シェアを高めていく上でも、良いレートの航空券を提供する上でも重要だと認識している。
また、航空会社が法人営業を拡大していることも歓迎すべき動きだ。企業契約を成約していく上では、航空会社との利害は一致しており、目標とするボリュームの達成に向けた手助けをデータから提供でき、顧客にはさらに良い条件の提案などにつながる。
−45%の株式を持つ日本旅行は新たな中期計画を策定し、その中でビジネス・トラベルを重視する考えを打ち出している。日本旅行とどのようなシナジーを考えているのか
タラント 日本旅行(NTA)の中期経営計画と日本旅行AMEXとしての成長プランは一致している。グローバルなトラベル・マネジメント・カンパニーと、日本に強みを発揮できるNTAの連携により、昨年に獲得した大口アカウントのサービス向上にもつながる。引き続き、NTAと連携することによる成功事例を生み出していきたい。また、NTAは日本国内の旅行関連業、ホテル業などとのつながりが深く、こうした点も活用できる。ただ、システム関連についてはすべてを共有することが良いわけではなく、データの取りまとめや(契約企業に提出する)ベンチマークなどはアメリカン・エキスプレスのものを使い、国内のオンライン予約などで共有するといった、2つの親会社の良いところを活用しつつ、展開をしていきたい。
マーケットシェア拡大のチャンス
先ごろ、日本旅行・アメリカンエキスプレス(日旅アメックス)代表取締役社長に、メリンダ・タラント氏が就任した。タラント氏はアメリカン・エキスプレスにおいて、ビジネス・ディベロップメント&コンプライアンス室で、為替事業を皮切りに、アジア太平洋地域における為替業務部門の責任者、アメリカン・エキスプレス・ビジネス・トラベルのビジネス・ディベロップメント&コンプライアンス室の責任者として活躍。特に、オーストラリアでのビジネス・トラベルの市場開拓、成長戦略の策定とその支援、コンプライアンスの観点から顧客への課金する料金の妥当性を検討する立場にあった。こうした経歴を活かし、今後の日本市場でどのような展開をするのか聞いた。(聞き手:編集長 鈴木次郎)
−着任の抱負とこれまでの経歴をどのように活用するか、お聞かせください
メリンダ・タラント氏(以下、敬称略) マーケットシェアの拡大をはかること、そしてチームを率いてこれまで培った知識、技術を有効に使いたい。アメリカン・エキスプレスでは、為替業務部門は旅行部門の一部として、実際に出張に行く方、そして旅行会社を対象としたオンラインでの外国通貨の購入に携わる仕組みの開発に携わった。オーストラリアで導入した仕組みはその後、7ヶ国に導入している。その意味でオンラインツールに関して理解はあるが、これは旅行業ほど複雑な仕組みではない。旅行業界には既に多くの専門家がおり、このようなツールの開発は任せていきたい。
成長が見込める戦略的なプロジェクトを見いだし、それを成功に導く施策を考え、実行してきた。例えばオーストラリアでのグループ旅行について、アウトソースをすることによって成長を見いだした。また、アドオンのサービスについては、効率的、生産的に課金できるかどうかをチェックしてきた。こうした経験を活かせればと思う。
−昨年の業績と今年の目標、また日本市場に関する所感を教えてください
タラント 2007年の業績は非常に良く、今後に向けた礎を築くことができた年であった。取扱額は前年比8%増であり、企業との契約の継続率は99%であった。今年度については2007年の業績と同様に大きな成功を収めることができると見ている。グローバル・アカウントと同時に、日本企業のアカウントを確実に増やし、昨年獲得したことによるアカウントの増加による業績の向上も期待できる。
そもそも、日本は他の国と比べ、出張費というコストはまだ高いと考えている。その理由はプロセスが複雑であることがあげられる。例えば、GDSも複数を利用しなければならないこと、航空券はeチケット化がすすんでいるが、鉄道はデリバリーをする必要があるなど、複雑さがコスト高につながっている側面がある。こうした点は、1社ではなく業界団体を通して働きかけをしていく必要があると考えるが、さらに個別にGDSや航空会社などとも話をしていく必要がある。また、中国も複雑さという点では日本市場と類似するところがあり、日本市場と中国市場での対応を互いに学習し、改善につなげていくことも役に立つだろう。最終的には出張者を出す企業の支払いになるわけだが、お客様への商品提供という観点では効率的なコスト管理を提供できるという点で、日本旅行AMEXとしてのビジネスチャンスを見いだすことができる。
−日本のビジネス・トラベル市場の将来性をどのように見ているか
タラント 日本のビジネス・トラベルはまだ拡大すると思うし、明るいと見ている。コミッションカットやオンライン会議の導入など、逆風の側面もあるが、サービス提供者に依存する側面が大きい。大企業であれば、インハウス旅行会社もあり、今後のコミッションカットの流れを考えると、BTMに関心を高めていく可能性は高い。コミッションカットの流れは、日本旅行AMEXとしては一つの機会と捉えている。これまでのモデルは、インハウスは「プロフィットセンター」の役割を果たしていたが、ゼロ・コミッションの時代になれば例えば、マネジメントフィー、トランスアクションフィーといったコストになる。そうした時代に、単にコストだけでなく、提供するサービスの質についても重視される時代だ。つまり、「リベートモデル」の時代から、「フィーを払って旅行サービスを受ける」という流れを市場に啓蒙し、認知を高めていく必要もある。
「ゼロ・コミッション」は既に、オーストラリア、シンガポール、アメリカをはじめその他の市場でも起きていること。もうすぐゼロになるという予測がある中で、希望的観測に基づいた伝統的なやり方だけではなく、お客様、あるいは顧客となる企業も変わっていかなければならないだろう。
−市場の見通しが明るいとすれば、御社の営業拡大をどのように考えているのか
タラント BTMでは標準化とカスタマイズと大きく2つのレベルがある。中規模の企業であれば、限られたコストの中で出張をやりくりするニーズに対して、傾向をはじめとするデータを提供するが、おおむね標準的な対応になる。また、グローバルに展開するような大企業であれば、出張のボリュームがあり、かつVIPサービスの提供、あるいは緊急時の対応など様々なオプションを付加すること、あるいは包括契約の中に含めるなど個別の企業にあわせたカスタマイズ化への対応といずれも可能だ。
世界的に中規模の企業にBTMの照準が向いているが、これは日本も世界の流れと同じだ。特に、中規模の企業には航空会社との契約が無いことが多く、その点でわれわれのチャンスであり、市場シェアを高めていく上でも、良いレートの航空券を提供する上でも重要だと認識している。
また、航空会社が法人営業を拡大していることも歓迎すべき動きだ。企業契約を成約していく上では、航空会社との利害は一致しており、目標とするボリュームの達成に向けた手助けをデータから提供でき、顧客にはさらに良い条件の提案などにつながる。
−45%の株式を持つ日本旅行は新たな中期計画を策定し、その中でビジネス・トラベルを重視する考えを打ち出している。日本旅行とどのようなシナジーを考えているのか
タラント 日本旅行(NTA)の中期経営計画と日本旅行AMEXとしての成長プランは一致している。グローバルなトラベル・マネジメント・カンパニーと、日本に強みを発揮できるNTAの連携により、昨年に獲得した大口アカウントのサービス向上にもつながる。引き続き、NTAと連携することによる成功事例を生み出していきたい。また、NTAは日本国内の旅行関連業、ホテル業などとのつながりが深く、こうした点も活用できる。ただ、システム関連についてはすべてを共有することが良いわけではなく、データの取りまとめや(契約企業に提出する)ベンチマークなどはアメリカン・エキスプレスのものを使い、国内のオンライン予約などで共有するといった、2つの親会社の良いところを活用しつつ、展開をしていきたい。