旅行業は複合企業化かM&Aへ、先手が有利−野村総合研究所・森沢氏

  • 2008年2月27日
 野村総合研究所経営コンサルティング部担当部長上席コンサルタントの森沢徹氏は、旅行業界が現在の厳しい状況下で生き残るための方策として、(1)他業種など含むコングロマリット(複合企業体)化、(2)M&A、のどちらかが必要との考えを示した。もし、こうした動きがなく、現在の業態のままでは「業界ごと沈んでしまう」との分析だ。これは、2月26日に開催されたJATA経営フォーラムの分科会D「検証『旅行会社じゃないとできないこと!』」に、コメンテーターとして登壇した際のコメント。

 森沢氏は旅行業界について、経営コンサルタントが用いる「5forces」という競争要因の分析を実施。旅行業界内とそれを取り巻く、新規事業、代替サービス、買い手(消費者)、売り手(サプライヤー)の5つの相互影響を分析するもの。旅行業界内は競争が激しく、新規事業はネット系旅行会社、代替サービスは旅行以外のレジャーの多様化、買い手はネットにより情報力が増加しており、それぞれ大きな力があるという。売り手側である航空会社、ホテルなどの淘汰が進んでおり、旅行会社への交渉力も大きくなったことから、「旅行業界にはそれぞれの力が強く働き、構造的に不況。利益力が高まる余地がなく、珍しい業界」と評した。

 ただし、近年は売り手の中に独自のサービス、特色を持つ強いリゾートなど、有力な企業やプレイヤーが出現しており、これらとタイアップする、あるいは複合化に生き残りの活路が見出せるという。その例として、ドイツのTUIを例にあげるが、巨大な資本力が必要であるため、日本の旅行会社には難しい側面があり、M&Aが主流になるとの読みを示し、先に仕掛けるほうが有利だとアドバイスした。