インタビュー−香港政府観光局局長・加納國雄氏「自由化効果は早期にあらわれる」

  • 2008年2月21日
 香港政府観光局(HKTB)の2008年の目標は、日本人訪問者数の2007年比3.8%増(07年の1%増の132万人から推計すると約137万人)。日本・韓国地区局長の加納國雄氏は、東京をはじめ各地でのセミナーやワークショップや、先ごろ東京で開催された「香港トラベルミッション2008」で、その達成を強く確信を得たという。「旅行会社の担当者が例年以上に真剣なまなざしで各サプライヤーと話している。両者間には取引関係でいろいろな問題はあるものの、消費者に良い商品を提供しなければならないという姿勢のあらわれだろう。新しい商品、サービス、切り口を個々に考えていただいている」と語り、今年の目標達成に向けた良い風向きを語る。

 ただし、足元の日本市場の局面は良くないという認識だ。在日外国観光局協議会(ANTOR-Japan)会長でもある加納氏は、「各観光局がもっと新しい切り口、取り組みをしていかなければ」との焦燥感を抱く。「香港は1%増であったが、日本人出国者数は1.4%減。日本に事務所を置くすべての観光局が懸念している」という。海外旅行の停滞は、燃油サーチャージの上昇、円安傾向の為替相場、国内旅行の盛り上がり、従来の一大マーケットであった若い女性層の海外旅行離れ、といった問題がある。この対策を、まず香港で実践する考えで、従来の滞在方法やアトラクションに加え、新たな旅程を積極的に紹介するなど、新たな切り口で旅行会社への支援とする施策を見い出そうとしている。

 追い風はある。特に、日本と香港の航空自由化の締結で、香港エクスプレスエアウェイズ(UO)が4月から香港/那覇間の定期便を週2便で運航を計画、さらに鹿児島、岡山、名古屋などで定期便の就航をめざしており、供給が増加する見込み。キャセイパシフィック航空(CX)も日本/香港間で週100便超となり、香港からのインバウンドとあわせた観光振興をはかれる状況にある。加納氏は「自由化の効果は早い時期にあらわれるのでは」と期待をこめていう。これを踏まえ策定した今年の重点4方針は、(1)地方都市での需要獲得をめざしたローカルマーケットの活性化のほか、(2)若年層の回復、(3)団塊世代の取り組み強化、(4)インセンティブ誘致の継続、強化だ。

 このうち課題は(2)の若年層と(3)の団塊世代。若年層は「快適に、自分の思い描く休暇を過ごしたい」と考える人たちに向け、スパやレストラン、サービスの質が高い香港のホテルライフを紹介し、ショッピングだけに留まらない「ライフスタイル」を提案していく。団塊世代には、「夫が業務渡航で香港を訪れている人も多い。奥様にきっかけを求めながら、夫婦の会話で『香港を訪れたい』となるような仕掛けを展開したい」とし、特に新聞をよく読むとの調査結果を受け、こうした媒体との連携を強めようとしている。

 さらに「香港だけでなく、マカオ、広州、深センなど珠江デルタ地域への入り口として、この一帯がうまく連携するかたちになれば」と、各デスティネーションが協力し、互いに伸びていく形を作ることにも意欲的だ。こうした端緒とするのが、今年の北京オリンピック。香港では馬術競技が開催されるのにあわせ、街をあげてオリンピック・ムードを高め、受け入れのホスピタリティも高まっているところだという。この機運をチャンスとし、自由化の効果も追い風としながら、日本の海外旅行市場のけん引役のひとつとして、実績につなげていく考えだ。