インド・交流拡大に向けた課題−業界各方面トップの意見

  • 2007年9月14日
 日印交流拡大に向けたセミナーで、旅行業界のトップが具体的な方策を語った。各氏の意見を取りまとめた。

▽ガイド育成を−INPAC Tours社・ナレッシュ・シャルマ氏

 インド側の代表としてパネルディスカッションに参加したINPAC Tours社社長のナレッシュ・シャルマ氏は、日本側から日本語ガイドの少なさを指摘されることに触れ、「インド政府がこのほどガイド約3500人の育成を掲げ、そのうち200人から300人が日本語を話すことができる人材になる模様である」ことを紹介。また、デリーを中心にホテル料金の高騰が叫ばれていることについて、「デリー、ムンバイ、コルカタが中心で、上昇は7%から10%ほど。また、その他はそれほどではない」と指摘。鉄道をはじめ、ソフト面の質が高まっていることを説明したほか、問い合わせが多い日本食の提供場所についてもデリーをはじめ、ムンバイなど5ツ星ホテルに多いと紹介した。


▽交流人口の拡大で50万人も−ジェイティービー・野沢肇氏

 ジェイティービー国際企画チームグローバル戦略担当部長の野沢肇氏は、日本人の海外旅行の概要について、インドの旅行業関係者に向けて説明。この中で、「交流人口の拡大という観点では、日中、日韓共に、交流人口が450万人ほどに達している」と語り、「両国で観光交流が促進すれば50万人も当然視野に入ってくる。両国には、その数値に達するだけの魅力があるのではないか」とコメント。交流拡大への期待を示した。


▽インドの広さを紹介する人材育成を−日本旅行・堀田正昭氏

 日本旅行執行役員海外旅行事業部長の堀田正昭氏は、「インドへの旅行の現実と課題」について説明。「インドの文化、歴史、遺産に対して関心が高い層は既にインドを訪れている。問題は関心が低い層が衝動的にはインドへ行かないということ」と指摘。需要拡大の施策として、「インドの観光を紹介できる語学力と知識をもつ人材の確保が重要である」とコメント。「IT産業などの発展で観光産業へのこのような人材確保は難しいかもしれない」と述べたものの、「観光ガイド育成のために日本への留学制度を作るといいと思う」と語り、人材育成のため日本側がサポートしていくことの必要性を訴えた。また、インフラの構築はもちろん、清潔で安心できるデスティネーションであることが需要拡大の鍵となることを強調。「日本人でインド旅行へ行った人は、インドが大好きになりリピーターになる人、もう絶対行かない人の2パターンにくっきり分かれる」と述べ、リピーターにならない層はこの清潔で安心できるデスティネーションとなることが重要であることを説明した。


▽団塊世代の知的好奇心をくすぐる−びゅう・佐藤勉氏

 びゅうトラベルサービス代表取締役社長の佐藤勉氏は、日印の旅行業の未来について語った。日本からインドへの旅行者が増えているものの、伸びがまだまだ小さいことを指摘。この原因の一つはインド側からの情報提供が少ないことを挙げ、日本語による観光情報が増えることに期待を示した。また、団塊世代の特徴からインドはこの層の需要獲得が見込めることを説明。団塊世代の知的好奇心を満たすようなツアー造成の案として、仏教関連の観光素材を組み合わせるなどの具体的な旅行ツアーを提案した。


▽インド線にCとYクラスで就航−日本航空・縄野克彦氏

 日本航空代表取締役副社長の縄野克彦氏は、「日本航空のインドへの取り組み」について語り、10月からのインド路線の増便を中心に説明した。その中で、まずインド路線の増便の背景には、好調に延びるビジネス需要の増加があることを強調。現在、「日本航空のインド路線は、約5割がビジネス需要ではないか」と明かし、好調さを訴えた。また、10月1日から週5便に、10月28日からデイリー運航となることを紹介。特に、使用機材がボーイングB777-200ER型機で、ビジネスクラスが56席、エコノミークラスが212席であるという、大型機材による増便であることを強調した。さらに、インドの各州政府から直行便の運航を要請されていることを明かしたものの、縄野氏は「当面はデリーへの直行便を継続する」と説明。ただし、「国内への乗り継ぎ強化を図るため、インド国内の航空会社と提携して利便性の向上を目指す」ことを訴えた。