ビジネストラベラー:海外主要都市への出張は着実に増える

  • 2007年7月31日
今回は「ユニクロ」のマーケティング担当として世界各地を精力的に巡っている諏訪賢介氏へのインタビュー。海外との接点は高校時代の留学から現在のユニクロでの活躍に至るまでと長く、しかも経験豊富だ。今回は諏訪氏の経験を踏まえ、ビジネス旅行についての考えなどを聞いた。
(聞き手:山見インテグレーター代表、山見博康氏)


海外での店舗開設で各地を訪問

Q:海外とのつながりは?

諏訪賢介さん(以下、諏訪): 高校2年16歳の時、英国イーストボーンに1ヶ月語学留学し、海外は「いいな」と思いました。大学の時には、1年間ブリスベンの大学に本格的に留学したのです。卒業して商社に入社したのは、自然の流れだったのでしょう。

Q:これまで訪問した国はどんな国ですか?

諏訪: 商社時代にはインド、メキシコ、ハンガリー、セルビア、ボスニア、クロアチア、スロベニア、フランス、イギリス、アメリカ、オーストリアなど。

 ユニクロでは韓国、中国、香港、アメリカ、イギリスなどで、プライベートを含めると30ヶ国近くになります。次回の海外出張は、今月か来月には一度どこかへ行くことになるでしょう。

Q:出張は、どのような目的が多いのですか

諏訪: 昨年は海外店舗のオープンが相次ぎ、出張が重なりました。まず、9月にアメリカ、韓国、香港と新規オープンし、そのマーケティング支援が主な目的です。外部のパートナーやPR会社、広告代理店の選定、現地会社へのアドバイス、ブランド管理などが主な仕事です。

 アメリカでは、ニュージャージー州のメンローパークに出店し、現地のメディアにも大きく取り上げられ、現地のお客様にも好評でした。韓国では、ロッテショッピング社との合弁会社、エフアールエルコリア社によりソウルにオープン。大きなPR効果もあり、こちらも大成功です。香港にも初出店。アメリカ、韓国と同様に、現地の人たちにとても喜ばれ、出店して「良かったな」と実感します。

 その後、英国と中国でも新規店舗をオープンしました。両国はすでに2002年に最初の店舗をオープンし、成功していたので、今回は店舗の増設となります。英国はロンドンに8店舗を出店していたのですが、そのうちリージェントストリート店をリニューアルオープンし、好調です。中国は既に上海に6店舗、杭州に1店舗を出店していますが、今回は北京に2店舗を新たにオープンしました。現地の状況を見ていると、とても喜ばれているようです。ぜひ、海外旅行の際には、お立ち寄りください。


旅行会社に求めるサービスは「取りにくいフライトの座席確保」

Q:現在、御社の海外出張者数、行き先などをお教え下さい。また、海外出張の数は増えますか

諏訪: 出張者の数は正確につかめませんが、1つ1つを数えると、数千人になるのではないでしょうか。

 今後、主要都市に向けての海外出張は、確実に増えていきます。なぜなら、出店のための調査や店舗展開、マーケティング、素材の調査、および購買など、世界中で倍々の規模で増えることも予想されるからです。どの地域とは限定できるものではなく、むしろどの地域でも増えるでしょう。

Q:旅行会社の指定、出張時の座席の規程などはありますか?

諏訪: 旅行会社の指定は、特にありません。各自が効率的な手段を探して手配しています。

 座席規定ですが、役員も基本的にエコノミーです。

Q:企業として旅行会社に求めるサービスの順位はいかがでしょうか?

諏訪: やはり手配の確実性ですね。次にローコスト、危機対応力でしょう。

Q:旅行会社に注文はありますか?

諏訪: 通常のことは自分でもやれるのであまり注文はありません。予約しにくいフライトを手配してくれることが第一でしょうか。

 私の場合、出発直前までなかなかフライトが決まらないケースが多いので、複数のフライトを押さえておく必要があります。そこで、最後でとれないとなると困るのです。中にはリクエスト中というのも出てきます。そんな時、どうにかして手配してくれる旅行会社を信頼することになりますね。それが旅行会社の真の実力になるでしょう。

 ホテルの予約も、複数の選択肢を示してくれる旅行会社は重宝します。高級なホテルから、高級ではないが利便性が高い、あるいは何か特徴があるなど、理由を加えて示してくれると助かります。


上海の変貌スピードに脅威

Q:旅行準備で気をつけていることはありますか

諏訪: いつも持参するのは、髭剃りなど洗面道具をいれたポーチです。大体1週間くらいなので、ジャケット1着にズボン2本、シャツや下着は日数分持っていきます。カジュアルの会社なので背広は不要です。

 パソコンは当然、持参します。それに、機内用枕は忘れないようにしています。

Q:経験を踏まえ、安全に対する秘訣があれば、お教え下さい

諏訪: 幸いにもこれまで盗難や危ない目に遭ったことはないのです。外出時にもパスポートや財布などは持って外出しますが、おそらく結構気を配っているからでしょう。

 安全の確保については、一言で言えば無茶をしないことです。例えば、夜は出歩かないとか、レストランからは必ず車で帰るとか、疲れたときには無理をせずに体調を整えるとか常識的なことですが・・・。

 今、思い出しましたが、スリにやられそうになったことはあります。学生の頃、マドリッドの地下鉄でのことです。どうも太ももの所がおかしいと気づくと、ズボンの前ポケットに手が入っているのです。その手を押さえて「ダメだぞ」というと、慌てて手を引っ込めて逃げていったのです。いまでもその感触は覚えています。

Q:世界の各地に旅されてもっとも印象に残っている町はどこでしょうか?

諏訪: 1999年に、ブルガリアからセルビアに入ったときです。戦後まもなくだったので、町中が爆撃や銃撃で穴だらけ。道という道が爆撃でぼこぼこ、車でそれを避け、縫うように走りました。首都機能がまったく崩壊しており、戦争のすさまじさを目の当たりにし、相当ショックでした。その荒廃した町のシーンはいまでもありありと覚えています。

 他に挙げると、2004年10月に3年振りに上海に行ったときのことです。3年前の印象は、大きなビルが立ち並んでいるもののお店などの状態はまだ洗練されておらず、何かアンバランスでした。

 ところが、今回訪れた時にはそれが一変、すばらしい発展ぶりです。仕事柄、服装が気になり、街歩きで見るポイントとなるのですが、服装はモダンで実におしゃれになっています。洗練されたお店も多く、全く様変わりしているのには驚きかつ感動した位です。もちろん貧富の差は大きくなっているかもしれないのですが、ビジネスのダイナミズムや経済の発展拡大には目を見張るばかりでした。また、そのスピードには脅威さえ感じるほどです。

Q:ご家族との旅行では、どちらに行きたいと思いますか

諏訪: これまで家族では、ドイツ、フランス、英国、ハワイに訪れました。次に連れて行きたいところは、イタリアですね。強いて都市名をあげれば歴史的遺跡の見所が多いローマでしょう。


諏訪 賢介(すわ・けんすけ)氏
株式会社ユニクロ マーケティングチーム リーダー

1996年 大手商社入社、海外プラント営業部に配属 
2001年 株式会社ファーストリテイリング(当時)入社。マーケティング部(国内担当) 
2004年 海外担当、現在に至る