現地レポート:カナダ・その3  プリンス・エドワード島編

  • 2007年7月6日
「赤毛のアン」100周年を迎えるプリンス・エドワード島と
ロイヤリストが作ったニュー・ブランズウィック州



カナダのプリンス・エドワード島(PEI)を舞台に描かれた名作「赤毛のアン」は来年、初出版から100周年を迎える。PEIでは、島の大切なアイコンとなっているこの小説や作者のルーシー・モード・モンゴメリを記念する様々なイベントを開催する予定だ。また、PEIと隣接し、コンフェデレーション・ブリッジで繋がるニュー・ブランズウィック州は、アトランティック・カナダのユニークな自然と、カナダ建国に関わる歴史に彩られた興味深い場所。PEIでの来年の記念行事情報に加え、新デスティネーションといえるニュー・ブランズウィック州の見どころを合わせて紹介する。(取材/吉沢博子、協力/カナダ観光局、アトランテイック・カナダ4州観光局、プリンス・エドワード島州観光局、ニュー・ブランズウィック州観光局、エア・カナダ、デルタホテル)


プリンス・エドワード島(PEI)

物語の舞台キャベンディッシュなどでも記念行事

 「赤毛のアン」は1908年、ボストンのページ社から初出版された。モンゴメリが34歳の時だ。彼女はシャーロットタウンのプリンス・オブ・ウェールズ・カレッジで教職の免許を取り、PEIの各地で学校教師などを経験。しかし養父の死亡後、自分が育ったキャベンディッシュの家に戻り、養母の面倒をみながら、小説や詩など多くの作品を執筆する。その中のひとつが、キャベンディッシュをアボンリーという村に置き換えて描かれた「赤毛のアン」だった。

 空想好きで個性豊かな孤児アンが、里親や村の人々との交流の中で成長していく姿を描いたこの物語は、モンゴメリの少女時代とも重なる。実際に、アンの家として登場し、原題にもなっているグリーン・ゲーブルズ・ハウスは、モンゴメリが子供の頃しばしば訪れて遊んだ従兄弟の家であった。

 この家は現在、パークス・カナダの管理の元、グリーン・ゲーブルズとして物語そのままに再現され、博物館となっている。この他にもキャベンディッシュを中心に、PEIには数多くの物語やモンゴメリゆかりの場所が残されている。出版100周年を迎える2008年には、これらの多くの場所で記念イベントが催される予定だ。
 ▽パークス・カナダ http://www.pc.gc.ca/index_e.asp












ミュージカル「アンとギルバート」も上演

 すでに具体的な内容が明らかになっているイベントのいくつかを紹介しておこう。まず3月には、キャベンディッシュなどでアンの誕生日を盛大に祝う。また、モンゴメリに影響を受けた作家が集まって行われる「ライターズ・フェスティバル」、「トリビアコンテスト」や、ゲストブックが設けられた特設ウェブサイト「Anne 2008」の開設、モンゴメリの世界をテーマにしたPEIの写真コンテストも予定されている。

 また7月にキャベンディッシュなどを中心に行われるモンゴメリ・フェスティバルや、シャーロットタウンで夏の間上演される「赤毛のアン」のミュージカルなど、恒例行事にも出版100年を記念する催しが企画されており、さらに盛り上がることになりそうだ。

 ミュージカルでは、前出の「赤毛のアン」に加え、ハーバーフロント・ジュビリー・シアターで「アンとギルバート」も上演される。これは2005年に初演され、好評を得た作品で、プロデューサーのキャンベル・ウェブスター氏が「赤毛のアンシリーズの『アンの青春』と『アンの愛情』を原作にしたラブストーリー。ダンスにもこだわっている」と言うように、より大人向けの作品となりそうだ。

 このほか、プリンス・エドワード島観光局による旅行者向けのスペシャル・プログラムとして100周年記念スタンプラリー、100周年記念PEI訪問証明書の発行、グリーン・ゲーブルズ郵便局限定の100周年記念消印サービスなども企画されている。来年に向け、今後も新しい記念行事やイベントが登場する予定で、新情報はプリンス・エドワード島観光局のホームページでも随時アップされる予定だ。

▽プリンス・エドワード島観光局
http://www.gov.pe.ca/visitorsguide/index.php3?number=1015658&lang=E


ニュー・ブランズウィック

世界一の干満差を誇るホープウェル・ロック

 日本からPEIへのアクセスは、トロントかハリファックスを経由し、飛行機で州都のシャーロットタウンに入るのが一般的だ。しかしPEIのあるアトランティック・カナダには、他にも個性あふれる見どころが点在している。1997年に開通したコンフェデレーション・ブリッジでPEIと繋がるニュー・ブランズウィック州もその一つ。まだ日本ではあまり馴染みのない場所だが、ユニークな奇観や歴史ある町が多い。まずはそれらを回り、陸路から橋を渡ってPEIへと入るのも面白いだろう。

 ニュー・ブランズウィックでの最大の見どころは、世界最大の干満差をもつファンディ湾にある岩「ホープウェル・ロック」だろう。この湾がもつ特殊な地形により、ここでは満潮時と干潮時の水位の差は最大で13メートルもあるのだ。実際にこの地に行き、その岩を見ると、満潮時には海に浮かぶ島にしか見えないのだが、干潮時には岩の根元まで干上がり、底の部分を歩くことができる。1日2回繰り返される干満の強い潮流により、もろい砂岩でできた茶色い岩はどんどんと削られてキノコのような形になっているのもユニークだ。その形を見るためにも、なるべく干潮時に訪れたい場所だ。


ロイヤリストの歴史をたどる

 ニュー・ブランズウィック州では、ロイヤリストが作った州としての歴史を辿りながら回ってみるのもお勧め。1783年のアメリカ合衆国独立と前後して、この地には多くのロイヤリストが流入して来た。

 ロイヤリストとは、イギリス王室に忠誠を誓い、イギリスからの独立を好まなかった王党派の人々である。アメリカでの居場所を失った彼らの多くは北のカナダ(当時はイギリス植民地)に逃れたが、その多くはイギリスの助けを借りてファンディ湾の北岸に移り住んだ。そして自分たちの植民地を熱望し、1784年にニュー・ブランズウィック州が誕生した。ロイヤリストが最初に上陸したファンディ湾岸のセント・ジョンをはじめ、州都のフレデリクトンなど、彼らの足跡が残された都市は多く、イギリス情緒漂う街並みを散策して見るのも面白い。

 こうした歴史に興味をもったら、フレデリクトンの近くにあるキングス・ランディングを訪れてみるのもいい。ここは州内の古い建物30棟以上を移設し、19世紀のロイヤリストの集落を再現した歴史村。夏の間、当時の衣装を身につけたスタッフが実際に農作業や、ウール作り、製鉄作業などをおこなっており、かつての生活の様子を体験しながら知ることができる。


コンフェデレーション・ブリッジの楽しみ方


ニュー・ブランズウィック州とPEIを結ぶコンフェデレー
ション・リッジは、全長13キロメートル。ノーザンバー
ランド海峡の上を曲線を描いて横切る優美な橋を渡る
のも、旅のハイライトとなるだろう。橋のドライブを楽しむ
には一般車ではなく、定期バスやツアーバスなどを利用
するのがおすすめ。大型のバスは座席が高い位置に
あるため、通過中も海峡の風景と、美しい橋の全貌を
眺めることができる。

また、ニュー・ブランズウィック側にはケープ・ジャーメイン、PEI側にはゲートウェイ・
ビレッジと、橋のたもと双方に橋を見渡せる展望台が設けられている。いずれも絶好
の写真スポットだ。晴れた日に橋を渡るなら、ぜひ立ち寄ってみたい。



(取材/吉沢博子、協力/カナダ観光局、アトランテイック・カナダ4州観光局、プリンス・エドワード島州観光局、ニュー・ブランズウィック州観光局、エア・カナダ、デルタホテル)

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