取材ノート:ルフトハンザドイツ航空の旅客サービス戦略-メーカーを巻き込んだ機内食戦略(第2回)
世界マーケットの30%のシェアを誇る世界最大のケータリング会社、LSGスカイシェフ。ルフトハンザドイツ航空(LH)の100%子会社で、2006年はLSGスカイシェフグループ全体で約23億ユーロ(約3837億円)の売り上げを記録した。単なる機内食メーカーの枠を超えて、「機内でいかに快適に過ごすことができるか」をトータルプロデュースする会社へと進化を遂げた同社。先日行われたメディア・ブリーフィングで、その取り組みや今後の戦略が明かされた。(取材・文:古屋江美子、取材協力:ルフトハンザドイツ航空)
単なるサプライヤーから、トータルプロデューサーへ
「当社はすでに単なる機内食メーカーではない」と語るのは、コーポレート・コミュニケーション・プロジェクト・マネージャーのクラウディア・リン氏。同社では従来の機内食ケータリング業務に加え、機内設備や機内サービスのマネージメントも行っている。具体的には食器や毛布など機内で使う物品のデザインや在庫管理、機内サービスのコンセプト立案やキャビンクルーへの機内販売トレーニングなど、機内サービスに関する業務全般を幅広く網羅。機内サービスのトータルソリューションを提案している。
顧客の増加や経験の蓄積を背景に、10年から15年ほど前から徐々にこのような体系にシフトしてきた。「良質のケータリングと機内サービスを統合し、グローバル市場で優位に立つことを目指す」と同氏。より付加価値の高いサービスを顧客に提供していく考えだ。
今後はアジア・パシフィック地域に注力
同社の地域別のマーケットシェアは、北・中南米が43%、ヨーロッパ・中東・アフリカが33%、アジア・パシフィックが16%。売り上げはそれぞれ、6億5200万ユーロ(約1088億円)、12億5000万ユーロ(約2086億円)、1億5400万ユーロ(約257億円)。このなかで最も成長が著しいのがアジア・パシフィック地域だ。現在のところマーケットの規模こそ最小だが、「今後さらなる成長が見込まれる重要な地域」と同社では位置づけている。「アジアの人たちは食に感心が高い人が多く、機内食に求めるレベルも高い。そういう意味でも私たちにとって非常に興味深いマーケットだ」とリン氏は言う。
また今後の展開については、「アジア・パシフィック地域の航空会社の多くは既に独自のケータリング会社や部門を持っている。長期的にはそれらの航空会社とのパートナーシップを組んで、機内サービス全般を提供していきたいと考えている」と語った。
インターナショナル企業として、本格的な味を追求
LHを含め、270もの航空会社にサービスを提供しているLSGスカイシェフ。それに対応できるよう、従業員の国籍も多岐にわたる。和食には日本人シェフ、インド料理にはインド人シェフなど、というようにローカルな料理にはその国のシェフを起用することで、コミュニケーションの円滑化と本格的な味の実現を目指している。
フランクフルトのジャパニーズ・キッチンで料理長を務める宮園勝己氏は「料理や食材に関する考え方は国によって異なり、和食に関しては日本人でなければ理解しがたいところも多い。特に盛り付けなどは日本人のアドバイスが必要」と語る。実際、同部門で和食を担当するスタッフの約半数が日本人だ。商品開発を担当している小林拓五氏いわく、「日本人は舌が肥えており、機内食に求めるレベルも高い。ただ現地ではどうしても入手できない食材もある」。そこがはがゆくもあり、同時に挑戦しがいのあるところでもあると、今後のさらなる挑戦に意欲を見せた。
また2000年から、LHの機内食プログラム「スターシェフ」がスタート。一流シェフの考案したメニューを忠実に再現し、最上級の料理を機内で提供している。
味だけでなく雰囲気も重視
「顧客を満足させることに徹底的にこだわっていきたい」と語るのは、メニュー&カリナリー・デザイン・マネージャーのトーマス・ブロッケナウアー氏。「ここ10年ほど価格より品質を求める顧客が増えている。料理と雰囲気の両方を、機内で味わってほしい」と同氏。2005年からはLHの機内食にノリタケ製の食器を使うなど、料理だけではなく雰囲気も重視した機内食をトータルで提供していく方針を打ち出している。
また同社では昨年、フライトごとの乗客情報を自動的に計算するソフトウェアを導入。どこで誰がチケットを購入したかが瞬時にわかるようにした。そのデータと過去の実績を照らし合わせてカテゴリ別のミールの数を決定し、機内食の過不足を最小限に抑えるようにしている。
<ルフトハンザドイツ航空の旅客サービス戦略-機内食と機内サービス(第1回)はこちら>
単なるサプライヤーから、トータルプロデューサーへ
「当社はすでに単なる機内食メーカーではない」と語るのは、コーポレート・コミュニケーション・プロジェクト・マネージャーのクラウディア・リン氏。同社では従来の機内食ケータリング業務に加え、機内設備や機内サービスのマネージメントも行っている。具体的には食器や毛布など機内で使う物品のデザインや在庫管理、機内サービスのコンセプト立案やキャビンクルーへの機内販売トレーニングなど、機内サービスに関する業務全般を幅広く網羅。機内サービスのトータルソリューションを提案している。
顧客の増加や経験の蓄積を背景に、10年から15年ほど前から徐々にこのような体系にシフトしてきた。「良質のケータリングと機内サービスを統合し、グローバル市場で優位に立つことを目指す」と同氏。より付加価値の高いサービスを顧客に提供していく考えだ。
今後はアジア・パシフィック地域に注力
同社の地域別のマーケットシェアは、北・中南米が43%、ヨーロッパ・中東・アフリカが33%、アジア・パシフィックが16%。売り上げはそれぞれ、6億5200万ユーロ(約1088億円)、12億5000万ユーロ(約2086億円)、1億5400万ユーロ(約257億円)。このなかで最も成長が著しいのがアジア・パシフィック地域だ。現在のところマーケットの規模こそ最小だが、「今後さらなる成長が見込まれる重要な地域」と同社では位置づけている。「アジアの人たちは食に感心が高い人が多く、機内食に求めるレベルも高い。そういう意味でも私たちにとって非常に興味深いマーケットだ」とリン氏は言う。
また今後の展開については、「アジア・パシフィック地域の航空会社の多くは既に独自のケータリング会社や部門を持っている。長期的にはそれらの航空会社とのパートナーシップを組んで、機内サービス全般を提供していきたいと考えている」と語った。
インターナショナル企業として、本格的な味を追求
LHを含め、270もの航空会社にサービスを提供しているLSGスカイシェフ。それに対応できるよう、従業員の国籍も多岐にわたる。和食には日本人シェフ、インド料理にはインド人シェフなど、というようにローカルな料理にはその国のシェフを起用することで、コミュニケーションの円滑化と本格的な味の実現を目指している。
フランクフルトのジャパニーズ・キッチンで料理長を務める宮園勝己氏は「料理や食材に関する考え方は国によって異なり、和食に関しては日本人でなければ理解しがたいところも多い。特に盛り付けなどは日本人のアドバイスが必要」と語る。実際、同部門で和食を担当するスタッフの約半数が日本人だ。商品開発を担当している小林拓五氏いわく、「日本人は舌が肥えており、機内食に求めるレベルも高い。ただ現地ではどうしても入手できない食材もある」。そこがはがゆくもあり、同時に挑戦しがいのあるところでもあると、今後のさらなる挑戦に意欲を見せた。
また2000年から、LHの機内食プログラム「スターシェフ」がスタート。一流シェフの考案したメニューを忠実に再現し、最上級の料理を機内で提供している。
味だけでなく雰囲気も重視
「顧客を満足させることに徹底的にこだわっていきたい」と語るのは、メニュー&カリナリー・デザイン・マネージャーのトーマス・ブロッケナウアー氏。「ここ10年ほど価格より品質を求める顧客が増えている。料理と雰囲気の両方を、機内で味わってほしい」と同氏。2005年からはLHの機内食にノリタケ製の食器を使うなど、料理だけではなく雰囲気も重視した機内食をトータルで提供していく方針を打ち出している。
また同社では昨年、フライトごとの乗客情報を自動的に計算するソフトウェアを導入。どこで誰がチケットを購入したかが瞬時にわかるようにした。そのデータと過去の実績を照らし合わせてカテゴリ別のミールの数を決定し、機内食の過不足を最小限に抑えるようにしている。
<ルフトハンザドイツ航空の旅客サービス戦略-機内食と機内サービス(第1回)はこちら>