取材ノート:ルフトハンザドイツ航空の旅客サービス戦略-機内食と機内サービス(第1回)
一流シェフが考案したメニューを提供する「スターシェフ」や世界ソムリエチャンピオンによるワインセレクション「ヴィノテーク・ディスカバリー」など、個性的な機内サービスで注目を集めるルフトハンザドイツ航空(LH)。クラス別に明確なコンセプトを定め、多様化する顧客のニーズに合わせた機内サービスを提供している。先ごろドイツ・フランクフルトで開催されたメディア・ブリーフィングから、機内食を中心とした同社の機内サービス戦略を機内食のサービス現場、ケータリング、客室乗務員と3回にわたってレポートする。(取材・文:古屋江美子、取材協力:ルフトハンザドイツ航空)
クラスごとのコンセプトを明確に、顧客のニーズを徹底的にリサーチ
「私たちのゴールはお客様を幸せにすること」と語るのは国際線の機内サービス開発を担当するプロダクト・マネージメント・インターコンチネンタル・ジェネラル・マネージャーのクリスティーナ・フォレスター氏。LHはクラスごとのコンセプトが明確だ。ファーストクラスは「ラグジュアリー」、ビジネスクラスは「スピード」、エコノミークラスは「フレンドリー」など、複数のキーワードで違いを打ち出し、機内サービスの開発もクラス別に行っている。
昨年同社を利用した人は年間約5200万人。「顧客のニーズが多様化していくなかで、どれだけそれに応えていけるかが鍵」と考える同社は、アンケートなどを通じてカスタマー・リサーチを恒常的に実施し、顧客が本当に求めるものを優先的に実現させている。例えば、ビジネスクラスの「ショートディナー・サービス」もそのひとつ。より多くの睡眠時間を確保できるよう短時間でとれる食事を提供するサービスで、2006年1月から開始した。
もちろんこうしたサービス拡充の背景には他社との競争もある。「他社が良いサービスを出したら、それに追随しなくては、お客様に選ばれない会社になってしまう」と同氏。だが、「トレンドを追うだけではなく、継続できるサービスを大切にしたい」とあくまで顧客のニーズを追求していくのが同社の基本姿勢だ。
常に新しい味を提供−食文化の違いを尊重し、機内食をローカライズする
現在LHで人気の機内食プログラムが、1998年に開始された「スターシェフ」。ドイツ発の長距離便のファーストクラスとビジネスクラスで、一流シェフによって考案された機内食を提供している。スターシェフは2ヶ月ごとに入れ替わり、メニューも一新される。
スターシェフの選出はミシュランなどのレストラン評価や最新情報を元に決定する。「ファーストクラスは比較的年齢層も高く伝統的な味が好まれるが、ビジネスクラスでは少し遊びのある料理も提供したい」とフォレスター氏。そのためスターシェフには多様な料理を生み出すフレキシブルな能力が求められている。2007年7月からのスターシェフは、さきごろ主要国首脳会議(G8)が行われたケンピンスキ・グランド・ホテルのティルマン・ハーン氏。モダン・ヨーロピアン料理を得意とする敏腕シェフだ。
また2005年1月からは日本発の成田/フランクフルト線、およびミュンヘン線で「スターシェフ」プログラムを展開。2007年1月からは名古屋発、大阪発のフライトにも導入した。ヒルトン大阪「源氏」料理長の桃原廣得氏が和食を、ヒルトン名古屋の総料理長である谷岡隆氏が洋食をそれぞれ担当。「季節感を大切にして食材を選んでいる。またソースの濃さや硬さも工夫した」と桃原氏。機内では皿の大きさに制限があるため、美しく見せる盛り付けにも苦労したという。
常に新しい味が楽しめるとあって、フリークエント・フライヤーにも好評な「スターシェフ」プログラム。「いずれは長距離便だけでなく、中距離便でもスターシェフを展開したいと考えている」と今後の拡大にも意欲を見せている。
「食事は機内でもっとも楽しみな時間のひとつ」−そんな結果が顧客アンケートから出ているという。同社では特に食文化の違いが大きいアジア路線において、韓国料理やインド料理など就航する国のローカル料理を提供している。日本路線では和食が必ず機内食の選択肢にあり、日本茶や日本酒も用意している。これも多様化する顧客のニーズやバックグラウンドを考慮してのことだ。
さらなる顧客満足を目指す、新機内サービス
今後も新たな機内サービスを次々と導入する。まずファーストクラスでは2007年9月から、夜間フライトで通常2時間半ほどかかる食事を1時間ほど短縮するサービスを開始。食事より休息に多くの時間を充てたい顧客のニーズに応える。またサプライズ・モーメントとして、2007年5月、6月には4種のシングルモルトウィスキーを試飲できるウィスキーテイスティングを実施。7月からはチョコレートやシャンパンと一緒に味わうアイスクリームテイスティングを行う。
ビジネスクラスでは、持ち帰り可能な「ブレックファースト・ボックス」の提供を開始する。飛行機を降りる直前まで休みたい人に向けたユニークなサービスだ。2007年7月にまずは、フランクフルト/ワシントン線でテストフライトが行われる予定。
エコノミークラスでは、2007年冬にシートを新調。各席にパーソナルモニターが付き、24チャネルのビデオとラジオ番組の提供を開始する。
また2007年7月からは機内食のメニューカードも刷新。デザインや材質の変更だけでなく、さらなる内容の充実を図る。ファーストクラスではスターシェフのレストランの紹介などを加えて、読んで楽しめる構成とする一方、ビジネスクラスではシェフへのQ&A形式などを用いて簡単に読めるスタイルにする。こうした部分にも同社のクラスコンセプトがきっちり反映されている。
サービスの3つの柱として、「お客様の個々の希望に応えること、品質と技術革新が常にあること、お客様にとって価値のあることにフォーカスすること」をあげるフォレスター氏。「今後も顧客にとって、より価値の高いサービスを生み出していく」と力強く語った。
クラスごとのコンセプトを明確に、顧客のニーズを徹底的にリサーチ
「私たちのゴールはお客様を幸せにすること」と語るのは国際線の機内サービス開発を担当するプロダクト・マネージメント・インターコンチネンタル・ジェネラル・マネージャーのクリスティーナ・フォレスター氏。LHはクラスごとのコンセプトが明確だ。ファーストクラスは「ラグジュアリー」、ビジネスクラスは「スピード」、エコノミークラスは「フレンドリー」など、複数のキーワードで違いを打ち出し、機内サービスの開発もクラス別に行っている。
昨年同社を利用した人は年間約5200万人。「顧客のニーズが多様化していくなかで、どれだけそれに応えていけるかが鍵」と考える同社は、アンケートなどを通じてカスタマー・リサーチを恒常的に実施し、顧客が本当に求めるものを優先的に実現させている。例えば、ビジネスクラスの「ショートディナー・サービス」もそのひとつ。より多くの睡眠時間を確保できるよう短時間でとれる食事を提供するサービスで、2006年1月から開始した。
もちろんこうしたサービス拡充の背景には他社との競争もある。「他社が良いサービスを出したら、それに追随しなくては、お客様に選ばれない会社になってしまう」と同氏。だが、「トレンドを追うだけではなく、継続できるサービスを大切にしたい」とあくまで顧客のニーズを追求していくのが同社の基本姿勢だ。
常に新しい味を提供−食文化の違いを尊重し、機内食をローカライズする
現在LHで人気の機内食プログラムが、1998年に開始された「スターシェフ」。ドイツ発の長距離便のファーストクラスとビジネスクラスで、一流シェフによって考案された機内食を提供している。スターシェフは2ヶ月ごとに入れ替わり、メニューも一新される。
スターシェフの選出はミシュランなどのレストラン評価や最新情報を元に決定する。「ファーストクラスは比較的年齢層も高く伝統的な味が好まれるが、ビジネスクラスでは少し遊びのある料理も提供したい」とフォレスター氏。そのためスターシェフには多様な料理を生み出すフレキシブルな能力が求められている。2007年7月からのスターシェフは、さきごろ主要国首脳会議(G8)が行われたケンピンスキ・グランド・ホテルのティルマン・ハーン氏。モダン・ヨーロピアン料理を得意とする敏腕シェフだ。
また2005年1月からは日本発の成田/フランクフルト線、およびミュンヘン線で「スターシェフ」プログラムを展開。2007年1月からは名古屋発、大阪発のフライトにも導入した。ヒルトン大阪「源氏」料理長の桃原廣得氏が和食を、ヒルトン名古屋の総料理長である谷岡隆氏が洋食をそれぞれ担当。「季節感を大切にして食材を選んでいる。またソースの濃さや硬さも工夫した」と桃原氏。機内では皿の大きさに制限があるため、美しく見せる盛り付けにも苦労したという。
常に新しい味が楽しめるとあって、フリークエント・フライヤーにも好評な「スターシェフ」プログラム。「いずれは長距離便だけでなく、中距離便でもスターシェフを展開したいと考えている」と今後の拡大にも意欲を見せている。
「食事は機内でもっとも楽しみな時間のひとつ」−そんな結果が顧客アンケートから出ているという。同社では特に食文化の違いが大きいアジア路線において、韓国料理やインド料理など就航する国のローカル料理を提供している。日本路線では和食が必ず機内食の選択肢にあり、日本茶や日本酒も用意している。これも多様化する顧客のニーズやバックグラウンドを考慮してのことだ。
さらなる顧客満足を目指す、新機内サービス
今後も新たな機内サービスを次々と導入する。まずファーストクラスでは2007年9月から、夜間フライトで通常2時間半ほどかかる食事を1時間ほど短縮するサービスを開始。食事より休息に多くの時間を充てたい顧客のニーズに応える。またサプライズ・モーメントとして、2007年5月、6月には4種のシングルモルトウィスキーを試飲できるウィスキーテイスティングを実施。7月からはチョコレートやシャンパンと一緒に味わうアイスクリームテイスティングを行う。
ビジネスクラスでは、持ち帰り可能な「ブレックファースト・ボックス」の提供を開始する。飛行機を降りる直前まで休みたい人に向けたユニークなサービスだ。2007年7月にまずは、フランクフルト/ワシントン線でテストフライトが行われる予定。
エコノミークラスでは、2007年冬にシートを新調。各席にパーソナルモニターが付き、24チャネルのビデオとラジオ番組の提供を開始する。
また2007年7月からは機内食のメニューカードも刷新。デザインや材質の変更だけでなく、さらなる内容の充実を図る。ファーストクラスではスターシェフのレストランの紹介などを加えて、読んで楽しめる構成とする一方、ビジネスクラスではシェフへのQ&A形式などを用いて簡単に読めるスタイルにする。こうした部分にも同社のクラスコンセプトがきっちり反映されている。
サービスの3つの柱として、「お客様の個々の希望に応えること、品質と技術革新が常にあること、お客様にとって価値のあることにフォーカスすること」をあげるフォレスター氏。「今後も顧客にとって、より価値の高いサービスを生み出していく」と力強く語った。