ハワイ・フォーカス・セッション採録、ハワイ旅行活性化に向けて

<日本側からの意見>

門倉尚史・エイチ・アイ・エス関東営業本部ツアー企画課ハワイグループグループマネージャー:ハワイとの競合はバリ、プーケット、マレーシアのビーチリゾートにケアンズが加わる。これらは料金的にハワイより安く、ホテルのグレードは高い。ハワイの客室はようやく上げ止まりの感がある。ただし、燃油サーチャージの動きも考慮すると、国内の沖縄などにも需要がシフトしているのではないか。
新町光示・日本旅行業協会(JATA)会長:ハワイが憧れのデスティネーションであることは基本的に変わっていない。業界にとっても重要なデスティネーションである。現在の沈滞ムードは昔からの課題に最近の課題が集積し、大きな課題になっているのでは。空港の改善については10年以上前からの懸案で、アジアとの競合についても、10年前から既に伝えていた。ハワイにとって結果的に良い形になったのは、SARSや津波など予期せぬ出来事があったからで、堂々と競争して勝ったというわけではない。個人的にはクオリティを高め、ハワイと日本でもう一度認識を合わせ、ハワイを一緒に売る必要があるのではないか。
石山醇・JATA事務局長:ラクジュアリーマーケットなど、これまでとは異なる取組みも必要だ。一方で、ツアー商品として高額でなくとも、価格に見合った満足度を提供する、つまり期待度と結果が一致するものを提供していく必要がある。目的、体験、学習などを旅行の主軸とし、デスティネーションを中心としていた旅行から、旅行で何をしたいのか目的型の旅行に変化している。
<航空会社の意見>

蜷川彰・日本航空旅客営業本部部長、観光政策推進担当:地方発のハワイ路線の運休で供給量を調整し、10年ぶりに路線として黒字までに持ち直してきた。供給量の減少に対処する目的で、2006年は73便のチャーター便を運航し、2007年も同規模を運航する。ただし、比較的発着時間帯の良い午前7時から午前10時にチャーター便は発着できない。チャーター便であっても便利な時間帯を使えると、さらに良くなる。
イベントではホノルルマラソンで約2万人の日本人にハワイを訪れていただいている。これだけでなく、ホノルルセンチュリーライド、トライアスロン、フラへの協賛などにより、いろいろな需要を創出している。
<ハワイ側の回答>
ハワイ州観光局:目的、体験、学習などを主体とする旅行について、「ディスカバーアロハ」キャンペーンで打ち出してきているところ。2007年から2008年のマーケティングプランを現在策定しているところで、方向としては単なる広告ではなく、ハワイが提供するものを伝えることに主眼を置く。
レックス・ジョンソン・ハワイツーリズムオーソリティプレジデント兼CEO:ハワイは何が特別か、打ち出していくことが重要だ。アジア各地との競合についても考えなければならないが、アメリカ本土からの訪問者もグローバルのデスティネーション競争にさらされている問題だ。方向としてはクオリティを重視する方向に向かっていくだろうが、市場からの反応を得るにはもう少し時間がかかると思う。
マーシャ・ウィナート・ツーリズム・リエゾン:中国など新しいデスティネーションとは背景が異なり、競争はできない。ただし、こうした世界各地のデスティネーションと差別化を図っていく。ハワイは安全性、アトラクションなど群を抜いており、こうした点について日本でもアピールしていく必要がある。

ハワイは広く日本からの訪問者を歓迎していく。体験や経験を目的とした旅行でも、ウクレレやフラなど、継続的に学習、体験ができるものがあり、日本で学びの環境も整っており、この点ではリーダー的な存在だ。
全米の子供たちに「科学」を学習したいところはどこかと聞いたところ、ビッグアイランドという回答であった。ビーチは世界中のどこにでもあるが、ハワイの特筆する点は、火山や天文学、海洋科学、植物学など最先端の知識が集積している。例えば、ハワイ島のマウナケアは火山だけでなく、夜空や多様な植物が自生している。これらは、子供たちにとっても「学び」の拠点になる。こうした観点から、子供たち、そしてMICEの誘致についても訴えていく必要があるだろう。
<懇談会で、左からマーシャ・ウィナート・ツーリズム・リエゾン、リンダ・リングル・ハワイ州知事、レックス・ジョンソン・ハワイツーリズムオーソリティプレジデント兼CEO>

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