ハワイ・フォーカス・セッション採録、ハワイ旅行活性化に向けて
ハワイ州知事のリンダ・リングル氏を筆頭に、上院議員および、ハワイ・ツーリズムオーソリティ(HTA)のメンバーら10人超のデリゲーションが来日、日本の旅行業界関係者と意見交換をする「ハワイ・フォーカス・セッション」が開催された。ピーク時には220万人の日本人が訪れたハワイだが、最近は130万人台。これを低迷と表現するか否かは棚上げするとしても、ハワイ側も日本側も互いに重要なパートナーと認識していることに違いはない。この懇談会の一部を採録し、両者が「Win-Win」関係を築くきっかけとしたい。
<日本側からの意見>
相良浩・ジャルパック執行役員ハワイカンパニープレジデント:今年は前年並みだが、バリは前年の2倍で推移している。ハード面は改善されてきたが、ソフト面はどうなのか。また、ソフト面で東南アジアとどう違うのかが明確に打ち出す必要がある。
門倉尚史・エイチ・アイ・エス関東営業本部ツアー企画課ハワイグループグループマネージャー:ハワイとの競合はバリ、プーケット、マレーシアのビーチリゾートにケアンズが加わる。これらは料金的にハワイより安く、ホテルのグレードは高い。ハワイの客室はようやく上げ止まりの感がある。ただし、燃油サーチャージの動きも考慮すると、国内の沖縄などにも需要がシフトしているのではないか。
新町光示・日本旅行業協会(JATA)会長:ハワイが憧れのデスティネーションであることは基本的に変わっていない。業界にとっても重要なデスティネーションである。現在の沈滞ムードは昔からの課題に最近の課題が集積し、大きな課題になっているのでは。空港の改善については10年以上前からの懸案で、アジアとの競合についても、10年前から既に伝えていた。ハワイにとって結果的に良い形になったのは、SARSや津波など予期せぬ出来事があったからで、堂々と競争して勝ったというわけではない。個人的にはクオリティを高め、ハワイと日本でもう一度認識を合わせ、ハワイを一緒に売る必要があるのではないか。
石山醇・JATA事務局長:ラクジュアリーマーケットなど、これまでとは異なる取組みも必要だ。一方で、ツアー商品として高額でなくとも、価格に見合った満足度を提供する、つまり期待度と結果が一致するものを提供していく必要がある。目的、体験、学習などを旅行の主軸とし、デスティネーションを中心としていた旅行から、旅行で何をしたいのか目的型の旅行に変化している。
<航空会社の意見>
マーク・シュワブ・ユナイテッド航空太平洋地区副社長:長年の蓄積したものが大きな課題という捉え方に同感だ。供給量については、現在のイールドではロードファクターが120%に達しないとビジネスにならない。つまり、質を重視していくことになる。ビジネスクラスやファーストクラスをハネムーンで利用してもらうなど、ニッチだが高いお金を払っても良いという人に販売していかないと成り立たない。旅行業界から燃油サーチャージに関して批判が高いことは承知している。ただし、3年前と比べても燃油費は大幅に増えており、短期的にはクオリティを高める方向で対処する。
蜷川彰・日本航空旅客営業本部部長、観光政策推進担当:地方発のハワイ路線の運休で供給量を調整し、10年ぶりに路線として黒字までに持ち直してきた。供給量の減少に対処する目的で、2006年は73便のチャーター便を運航し、2007年も同規模を運航する。ただし、比較的発着時間帯の良い午前7時から午前10時にチャーター便は発着できない。チャーター便であっても便利な時間帯を使えると、さらに良くなる。
イベントではホノルルマラソンで約2万人の日本人にハワイを訪れていただいている。これだけでなく、ホノルルセンチュリーライド、トライアスロン、フラへの協賛などにより、いろいろな需要を創出している。
<ハワイ側の回答>
ハワイ州観光局:目的、体験、学習などを主体とする旅行について、「ディスカバーアロハ」キャンペーンで打ち出してきているところ。2007年から2008年のマーケティングプランを現在策定しているところで、方向としては単なる広告ではなく、ハワイが提供するものを伝えることに主眼を置く。
レックス・ジョンソン・ハワイツーリズムオーソリティプレジデント兼CEO:ハワイは何が特別か、打ち出していくことが重要だ。アジア各地との競合についても考えなければならないが、アメリカ本土からの訪問者もグローバルのデスティネーション競争にさらされている問題だ。方向としてはクオリティを重視する方向に向かっていくだろうが、市場からの反応を得るにはもう少し時間がかかると思う。
マーシャ・ウィナート・ツーリズム・リエゾン:中国など新しいデスティネーションとは背景が異なり、競争はできない。ただし、こうした世界各地のデスティネーションと差別化を図っていく。ハワイは安全性、アトラクションなど群を抜いており、こうした点について日本でもアピールしていく必要がある。
リンダ・リングル・ハワイ州知事:10年前と同じ課題を取り上げるようではダメだ。安全の問題や燃油サーチャージについてはさておき、次の会合では課題の進捗を話したい。今後、同じ課題を取り上げることの無いようにしていく。
ハワイは広く日本からの訪問者を歓迎していく。体験や経験を目的とした旅行でも、ウクレレやフラなど、継続的に学習、体験ができるものがあり、日本で学びの環境も整っており、この点ではリーダー的な存在だ。
全米の子供たちに「科学」を学習したいところはどこかと聞いたところ、ビッグアイランドという回答であった。ビーチは世界中のどこにでもあるが、ハワイの特筆する点は、火山や天文学、海洋科学、植物学など最先端の知識が集積している。例えば、ハワイ島のマウナケアは火山だけでなく、夜空や多様な植物が自生している。これらは、子供たちにとっても「学び」の拠点になる。こうした観点から、子供たち、そしてMICEの誘致についても訴えていく必要があるだろう。
<懇談会で、左からマーシャ・ウィナート・ツーリズム・リエゾン、リンダ・リングル・ハワイ州知事、レックス・ジョンソン・ハワイツーリズムオーソリティプレジデント兼CEO>
▽関連記事
ハワイ州・リングル知事、観光施策で「クオリティ・オブ・ライフ」を重視(2007.06.19)
<日本側からの意見>
相良浩・ジャルパック執行役員ハワイカンパニープレジデント:今年は前年並みだが、バリは前年の2倍で推移している。ハード面は改善されてきたが、ソフト面はどうなのか。また、ソフト面で東南アジアとどう違うのかが明確に打ち出す必要がある。
門倉尚史・エイチ・アイ・エス関東営業本部ツアー企画課ハワイグループグループマネージャー:ハワイとの競合はバリ、プーケット、マレーシアのビーチリゾートにケアンズが加わる。これらは料金的にハワイより安く、ホテルのグレードは高い。ハワイの客室はようやく上げ止まりの感がある。ただし、燃油サーチャージの動きも考慮すると、国内の沖縄などにも需要がシフトしているのではないか。
新町光示・日本旅行業協会(JATA)会長:ハワイが憧れのデスティネーションであることは基本的に変わっていない。業界にとっても重要なデスティネーションである。現在の沈滞ムードは昔からの課題に最近の課題が集積し、大きな課題になっているのでは。空港の改善については10年以上前からの懸案で、アジアとの競合についても、10年前から既に伝えていた。ハワイにとって結果的に良い形になったのは、SARSや津波など予期せぬ出来事があったからで、堂々と競争して勝ったというわけではない。個人的にはクオリティを高め、ハワイと日本でもう一度認識を合わせ、ハワイを一緒に売る必要があるのではないか。
石山醇・JATA事務局長:ラクジュアリーマーケットなど、これまでとは異なる取組みも必要だ。一方で、ツアー商品として高額でなくとも、価格に見合った満足度を提供する、つまり期待度と結果が一致するものを提供していく必要がある。目的、体験、学習などを旅行の主軸とし、デスティネーションを中心としていた旅行から、旅行で何をしたいのか目的型の旅行に変化している。
<航空会社の意見>
マーク・シュワブ・ユナイテッド航空太平洋地区副社長:長年の蓄積したものが大きな課題という捉え方に同感だ。供給量については、現在のイールドではロードファクターが120%に達しないとビジネスにならない。つまり、質を重視していくことになる。ビジネスクラスやファーストクラスをハネムーンで利用してもらうなど、ニッチだが高いお金を払っても良いという人に販売していかないと成り立たない。旅行業界から燃油サーチャージに関して批判が高いことは承知している。ただし、3年前と比べても燃油費は大幅に増えており、短期的にはクオリティを高める方向で対処する。
蜷川彰・日本航空旅客営業本部部長、観光政策推進担当:地方発のハワイ路線の運休で供給量を調整し、10年ぶりに路線として黒字までに持ち直してきた。供給量の減少に対処する目的で、2006年は73便のチャーター便を運航し、2007年も同規模を運航する。ただし、比較的発着時間帯の良い午前7時から午前10時にチャーター便は発着できない。チャーター便であっても便利な時間帯を使えると、さらに良くなる。
イベントではホノルルマラソンで約2万人の日本人にハワイを訪れていただいている。これだけでなく、ホノルルセンチュリーライド、トライアスロン、フラへの協賛などにより、いろいろな需要を創出している。
<ハワイ側の回答>
ハワイ州観光局:目的、体験、学習などを主体とする旅行について、「ディスカバーアロハ」キャンペーンで打ち出してきているところ。2007年から2008年のマーケティングプランを現在策定しているところで、方向としては単なる広告ではなく、ハワイが提供するものを伝えることに主眼を置く。
レックス・ジョンソン・ハワイツーリズムオーソリティプレジデント兼CEO:ハワイは何が特別か、打ち出していくことが重要だ。アジア各地との競合についても考えなければならないが、アメリカ本土からの訪問者もグローバルのデスティネーション競争にさらされている問題だ。方向としてはクオリティを重視する方向に向かっていくだろうが、市場からの反応を得るにはもう少し時間がかかると思う。
マーシャ・ウィナート・ツーリズム・リエゾン:中国など新しいデスティネーションとは背景が異なり、競争はできない。ただし、こうした世界各地のデスティネーションと差別化を図っていく。ハワイは安全性、アトラクションなど群を抜いており、こうした点について日本でもアピールしていく必要がある。
リンダ・リングル・ハワイ州知事:10年前と同じ課題を取り上げるようではダメだ。安全の問題や燃油サーチャージについてはさておき、次の会合では課題の進捗を話したい。今後、同じ課題を取り上げることの無いようにしていく。
ハワイは広く日本からの訪問者を歓迎していく。体験や経験を目的とした旅行でも、ウクレレやフラなど、継続的に学習、体験ができるものがあり、日本で学びの環境も整っており、この点ではリーダー的な存在だ。
全米の子供たちに「科学」を学習したいところはどこかと聞いたところ、ビッグアイランドという回答であった。ビーチは世界中のどこにでもあるが、ハワイの特筆する点は、火山や天文学、海洋科学、植物学など最先端の知識が集積している。例えば、ハワイ島のマウナケアは火山だけでなく、夜空や多様な植物が自生している。これらは、子供たちにとっても「学び」の拠点になる。こうした観点から、子供たち、そしてMICEの誘致についても訴えていく必要があるだろう。
<懇談会で、左からマーシャ・ウィナート・ツーリズム・リエゾン、リンダ・リングル・ハワイ州知事、レックス・ジョンソン・ハワイツーリズムオーソリティプレジデント兼CEO>
▽関連記事
ハワイ州・リングル知事、観光施策で「クオリティ・オブ・ライフ」を重視(2007.06.19)