トップインタビュー:トラベラー代表取締役副社長 神山健氏
旅行の満足度を高めるパートナーとして共栄を
小売業を意識した手数料ビジネスへ
以前は団体旅行でお土産が付き物という時代もあったが、現在は旅行の個人化が進み、トラベラーの「お土産ビジネス」にも変容が見られる。同社が主力とするお土産ビジネスが、旅行会社からの提案などにより、単なる手数料ビジネス以上に変化しているという。さらに、女性誌やファッション誌では旅行関連グッズが紹介され、トレンドにも変化が見られる。代表取締役副社長の神山健氏に現況と今後の方針を聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長 岡田直樹)
−旅行市場は団体から個人へという大きな変化が進んでいます。お土産ビジネスにはどのような影響がありますか
神山健氏(以下、神山) 団体旅行から個人旅行へと旅行需要がシフトしていく環境において、個人の方が利用しやすいようにカタログの構成を変更しております。ただ、販売状況は旅行会社経由が8割で、直販は約2割。3年前と大きな変化はありません。市場環境はさらに変化しているものの、弊社は最後までパートナーである旅行会社さんとビジネスを展開していきます。
昨年は企業の社員旅行が増えたという報道のとおり、旅行会社の営業現場で、いわゆる「泥臭い」営業により団体旅行が戻ってきている感があります。ただし、個人旅行が進んでいく流れの中、旧来型の「団体旅行」が減り、新たにFIT的な意識のある「団体旅行」に移ってきた、というのが今の団体旅行ではないかと思います。こうした変化に対応する旅行会社も多く、弊社に様々な提案を投げかけていただきます。この点で、いわゆる手数料ビジネスから、小売業へ変わっているな、と感じる場面は多々あります。実際、商品構成など話し合いは熱を帯びるのですが、われわれも商品の質や企画力を高めていける環境はありがたいこと、と感じています。
弊社では今期から、カタログの表紙に幅広い年齢層から支持のあるタレントの愛川欽也、うつみ宮土理夫妻に登場していただき、団塊世代に注力する旅行業界の動きに歩調を合わせました。お土産販売では1パック1000円前後のチョコレートの人気が根強く、その中でも年間で約3割程度の商品を入れ替えしながら、新しい可能性を探っています。また、チョコレートでは「限定品」を旅行関連の企業とタイアップし、お客様に満足していただけるような取組みを進めています。
新しい取組みでは、オーストラリア方面で、タロンガ基金のコーナーを新設しました。これは絶滅危惧種の動物保護活動をされているタロンガ財団へ寄付するもの。販売価格の約3%が寄付金となりますが、お土産品の購入でも動物愛護への取組みにつながるようにしております。
−旅行業界ではジェイティービー、旅行業界の外にも多くの商社、ネット系企業などがあり、お土産ビジネスの競合が激しいと思いますが、そうした環境にどのように取り組んでおられますか
神山 ジェイティービーはグループ会社でお土産品を取り扱っていますが、本業は旅行ですね。弊社は動向を意識しますが、われわれが競合と思っても及ばない部分があります。弊社の強みは独立系であることで、その強みは、全ての旅行会社さんを対象として営業、ご提案ができることです。
また、カタログ販売では消費者と直接、接する機会もあります。ご注文をいただく際、発送や商品をお届けする際に、お客様の声をお伺いできる。「消費者を意識した商品作りやサービスをしよう」と社内で話をしますが、われわれの商品がお客様に支持されないと旅行会社さんにも選ばれず、旅行の満足度も高めることが出来ない。顧客視点で、サービスを展開することはとても重要なことだと捉えております。
旅行業界でインターネットの力が増すと同時に、お土産ビジネスの環境にも大きな変化が訪れています。弊社の主力商品であるチョコレートなどは、専門店や大きな通販などが脅威です。ただし、これまで数百社というサプライヤーの方々との信用を築いてきたという点も重要です。先ほどもお話ししましたが、最後に評価をいただくのは旅行をするお客様で、常に商品に開発をすることで、一定の市場を獲得できる、あるいは獲得していきたいと考えています。
お土産ビジネスでの今後の取組みとしては、近所にお土産を配る「義理みやげ」の需要に頼ることなく、需要が伸びてきている業務渡航でも出張者がその奥様、あるいはお子様たちに持ち帰るお土産であったり、あるいは海外の取引先に儀礼としてお持ちする日本のお土産など、新しいニーズを開拓していきたいと考えています。もちろん、インターネットを使った商品販売も考えていかなければならないでしょう。
−旅行用品をはじめその他の分野ではどのような状況でしょうか
神山 弊社はお土産と旅行用品で伸びてきましたが、このところはお土産が主力で旅行用品は、本腰を入れていなかったところがあります。ただし、市場では旅行用品は伸び、見直されています。例えば、ファッション誌でボストンバッグやスーツケースなど、頻繁に取り上げられるようになっています。旅行の楽しみの一つとして、再びこのような持ち物にも目が向けられているのではないでしょうか。個人旅行が活発になる環境において、お客様がこだわりを追い求める傾向が強くなっています。弊社でも旅行用品事業部を今期から改めて力を入れて取り組みをはじめ、もう一度、弊社事業の柱にしていきたいと考えています。トラベラー単体ではお土産と旅行用品という2大柱で事業を展開していきます。
また、これ以外の分野へは、グループ会社で取り組んでいきたい。例えば、トラベラー単体で強みとしている旅行業界とのお付き合いという分野を超える事業に取り組むことは無いでしょう。つまり、空港、JR、私鉄などを含む旅行関連で、食品や旅行かばんなど強みを活かしながら、グループ全体としても旅行業界を支える形に取り組んでいきたい。
−インバウンド需要が増えていますが、この市場で御社がビジネスを展開されますか?
神山 インバウンドに対しては大きな期待を寄せています。現在は、成田空港などで小さい規模で販売するに留まっていますが、本格的な取組みを計画していきたいと思います。訪日外国人のスポットとして人気の秋葉原などは個人消費のものであり、われわれはこれまで続けてきた「お土産文化」に可能性があると考えています。アジアの各地でも日本と同様に、海外に行ってきたのでご近所に配る文化があるでしょう。そうした可能性に対し、日本の良い食品を開拓、提供していきたいと考えております。特に、中国から日本を訪れていただける方に、大きな期待をしています。
−最後に御社の経営の基本方針を改めて
神山 そうですね。トラベラーは旅行会社があってこそ、成り立つという大前提は変わりません。ただし、市場がインターネット販売や個人旅行が進むといった変化の時代に、「トラベラーは使えない」といわれないように、旅行業界についていきたい。パートナーとしての旅行会社と共に、旅行されるお客様が喜んでいただけることを共通の目的として、皆様からの協力を得られるように努力していきます。
<過去のトップインタビューはこちら>
小売業を意識した手数料ビジネスへ
以前は団体旅行でお土産が付き物という時代もあったが、現在は旅行の個人化が進み、トラベラーの「お土産ビジネス」にも変容が見られる。同社が主力とするお土産ビジネスが、旅行会社からの提案などにより、単なる手数料ビジネス以上に変化しているという。さらに、女性誌やファッション誌では旅行関連グッズが紹介され、トレンドにも変化が見られる。代表取締役副社長の神山健氏に現況と今後の方針を聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長 岡田直樹)
−旅行市場は団体から個人へという大きな変化が進んでいます。お土産ビジネスにはどのような影響がありますか
神山健氏(以下、神山) 団体旅行から個人旅行へと旅行需要がシフトしていく環境において、個人の方が利用しやすいようにカタログの構成を変更しております。ただ、販売状況は旅行会社経由が8割で、直販は約2割。3年前と大きな変化はありません。市場環境はさらに変化しているものの、弊社は最後までパートナーである旅行会社さんとビジネスを展開していきます。
昨年は企業の社員旅行が増えたという報道のとおり、旅行会社の営業現場で、いわゆる「泥臭い」営業により団体旅行が戻ってきている感があります。ただし、個人旅行が進んでいく流れの中、旧来型の「団体旅行」が減り、新たにFIT的な意識のある「団体旅行」に移ってきた、というのが今の団体旅行ではないかと思います。こうした変化に対応する旅行会社も多く、弊社に様々な提案を投げかけていただきます。この点で、いわゆる手数料ビジネスから、小売業へ変わっているな、と感じる場面は多々あります。実際、商品構成など話し合いは熱を帯びるのですが、われわれも商品の質や企画力を高めていける環境はありがたいこと、と感じています。
弊社では今期から、カタログの表紙に幅広い年齢層から支持のあるタレントの愛川欽也、うつみ宮土理夫妻に登場していただき、団塊世代に注力する旅行業界の動きに歩調を合わせました。お土産販売では1パック1000円前後のチョコレートの人気が根強く、その中でも年間で約3割程度の商品を入れ替えしながら、新しい可能性を探っています。また、チョコレートでは「限定品」を旅行関連の企業とタイアップし、お客様に満足していただけるような取組みを進めています。
新しい取組みでは、オーストラリア方面で、タロンガ基金のコーナーを新設しました。これは絶滅危惧種の動物保護活動をされているタロンガ財団へ寄付するもの。販売価格の約3%が寄付金となりますが、お土産品の購入でも動物愛護への取組みにつながるようにしております。
−旅行業界ではジェイティービー、旅行業界の外にも多くの商社、ネット系企業などがあり、お土産ビジネスの競合が激しいと思いますが、そうした環境にどのように取り組んでおられますか
神山 ジェイティービーはグループ会社でお土産品を取り扱っていますが、本業は旅行ですね。弊社は動向を意識しますが、われわれが競合と思っても及ばない部分があります。弊社の強みは独立系であることで、その強みは、全ての旅行会社さんを対象として営業、ご提案ができることです。
また、カタログ販売では消費者と直接、接する機会もあります。ご注文をいただく際、発送や商品をお届けする際に、お客様の声をお伺いできる。「消費者を意識した商品作りやサービスをしよう」と社内で話をしますが、われわれの商品がお客様に支持されないと旅行会社さんにも選ばれず、旅行の満足度も高めることが出来ない。顧客視点で、サービスを展開することはとても重要なことだと捉えております。
旅行業界でインターネットの力が増すと同時に、お土産ビジネスの環境にも大きな変化が訪れています。弊社の主力商品であるチョコレートなどは、専門店や大きな通販などが脅威です。ただし、これまで数百社というサプライヤーの方々との信用を築いてきたという点も重要です。先ほどもお話ししましたが、最後に評価をいただくのは旅行をするお客様で、常に商品に開発をすることで、一定の市場を獲得できる、あるいは獲得していきたいと考えています。
お土産ビジネスでの今後の取組みとしては、近所にお土産を配る「義理みやげ」の需要に頼ることなく、需要が伸びてきている業務渡航でも出張者がその奥様、あるいはお子様たちに持ち帰るお土産であったり、あるいは海外の取引先に儀礼としてお持ちする日本のお土産など、新しいニーズを開拓していきたいと考えています。もちろん、インターネットを使った商品販売も考えていかなければならないでしょう。
−旅行用品をはじめその他の分野ではどのような状況でしょうか
神山 弊社はお土産と旅行用品で伸びてきましたが、このところはお土産が主力で旅行用品は、本腰を入れていなかったところがあります。ただし、市場では旅行用品は伸び、見直されています。例えば、ファッション誌でボストンバッグやスーツケースなど、頻繁に取り上げられるようになっています。旅行の楽しみの一つとして、再びこのような持ち物にも目が向けられているのではないでしょうか。個人旅行が活発になる環境において、お客様がこだわりを追い求める傾向が強くなっています。弊社でも旅行用品事業部を今期から改めて力を入れて取り組みをはじめ、もう一度、弊社事業の柱にしていきたいと考えています。トラベラー単体ではお土産と旅行用品という2大柱で事業を展開していきます。
また、これ以外の分野へは、グループ会社で取り組んでいきたい。例えば、トラベラー単体で強みとしている旅行業界とのお付き合いという分野を超える事業に取り組むことは無いでしょう。つまり、空港、JR、私鉄などを含む旅行関連で、食品や旅行かばんなど強みを活かしながら、グループ全体としても旅行業界を支える形に取り組んでいきたい。
−インバウンド需要が増えていますが、この市場で御社がビジネスを展開されますか?
神山 インバウンドに対しては大きな期待を寄せています。現在は、成田空港などで小さい規模で販売するに留まっていますが、本格的な取組みを計画していきたいと思います。訪日外国人のスポットとして人気の秋葉原などは個人消費のものであり、われわれはこれまで続けてきた「お土産文化」に可能性があると考えています。アジアの各地でも日本と同様に、海外に行ってきたのでご近所に配る文化があるでしょう。そうした可能性に対し、日本の良い食品を開拓、提供していきたいと考えております。特に、中国から日本を訪れていただける方に、大きな期待をしています。
−最後に御社の経営の基本方針を改めて
神山 そうですね。トラベラーは旅行会社があってこそ、成り立つという大前提は変わりません。ただし、市場がインターネット販売や個人旅行が進むといった変化の時代に、「トラベラーは使えない」といわれないように、旅行業界についていきたい。パートナーとしての旅行会社と共に、旅行されるお客様が喜んでいただけることを共通の目的として、皆様からの協力を得られるように努力していきます。
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