トップインタビュー:びゅうトラベルサービス代表取締役社長 佐藤勉氏
「大人の休日倶楽部」を海外へ
質の向上と需要開拓に期待
2006年10月に東日本旅客鉄道から「大人の休日倶楽部」を受託し、会員組織の運営も加わり事業領域の拡大に伴い、商号を変更したびゅうトラベルサービス。創業した当時の海外旅行に加え、政府が推進するビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)の好機を捉え、2003年には訪日旅行を含む国内旅行にも目をむけ、海外、国内、訪日旅行と取り組んでいる。「大人の休日倶楽部」を受託で業容の拡大も予想されるが、現状や今後の展開について、佐藤勉社長に聞いた。
―昨年10月から大人の休日倶楽部を受託されましたが、びゅうトラベルのメリットは何でしょうか
佐藤勉氏(以下、佐藤) 「大人の休日倶楽部」は会員に対して、3割引のJRチケットの提供や、付加価値のある旅行商品の提供、さらに写生など勉強や趣味の場を提供し、旅行需要を創り出していく役割があります。特に国内旅行の造成力は高いものがあり、これを今後は海外旅行にも発展させていきたい。
例えば、ハワイへの家族旅行を楽しんでいた熟年世代に対し、4泊6日など旅行期間に一定の制約があったこれまでのパッケージツアーで本来の旅の楽しさが味わえたのか、という疑問がある。こうした旅行をされてきた方には今後、フルムーンで少し長い期間の旅行を楽しんでいただきたい。
ちょっと長い旅行という意味で「プチ・ロングステイ」と私は言っているが、こうした旅を訴求していきたい。そのひとつのデスティネーションとして、オーストラリアは良い商品が造れるでしょう。時差がなく、温暖な気候ですごしやすい。単純なパッケージをベースとしながら、現地でスーパーをはじめ、生活に必要な場所をお伝えし、その後は自由に過ごしていただく。旅行の安心という観点から、ヘルプデスクを用意し、いつでも質問などに対応していく体制は整える。
個人的に思うところだが、日本人は欧米人のようにプールサイドで本を読みながら、2週間をのんびり過ごすというスタイルはなじみにくいのではないか。近所付き合いなどがあり、日本にいなければならない動機もある。そうであれば、今述べたハワイ、オーストラリアやそれ以外にもプーケット島やバリ島など、1週間程度ずつ滞在し、各地を巡りながらリピーターとなっていただく形を考えることも一案ではないだろうか。「プチ・ロングステイ」を続けながら、人生を楽しむ姿もあると思う。
―ちょっとした旅行気分と生活気分を味わうということですね。このほか、大人の休日倶楽部ではどのようなことが考えられますか。
佐藤 大人の休日倶楽部をさらに生かすには、より深いキーワードが必要だろう。
例えば、ジャルパックの王朝街道は、「質」の高い添乗員がおり、内容の質はもちろんのこと安全面でも配慮されている。九寨溝、シルクロードをはじめ多くの観光素材があることから、これらをキーワードとして会員に訴求することで、着実に広げていくことが出来るだろう。日中30周年でもJR東日本の企画として1000人を送客したが、今回の35周年でも同様に中国を訪問する企画を進めている。
また、インドでは「仏教」を軸に寺院、仏跡めぐりの観光が出来るだろう。インドはBRICsの一角として経済成長も著しく、ビジネスとレジャーの両面から、興味関心が高まっていくだろう。インドは一般的なイメージとしてカレーや象を思い浮かべることが多いだろうが、デスティネーションを形成する根本的なところに「仏教」をベースとした日本人の関心をひきつけるものがある。大人の休日倶楽部の会員層には、天竺の歴史をきっかけに、近隣のミャンマーやタイなど小乗仏教と結びつけながら、旅行先を広げていくことも出来るだろう。
―訪日旅行にも取り組んでおりますが、その進捗は
佐藤 現在のところ、草津温泉を「ONSEN」として、日本のお風呂の文化を海外に伝えている。例えば、旅館のおかみさんが和服でお迎えすること、裸で入るお風呂、夕食と朝食が一体となった料金体系など独自のスタイルはいたるところにある。また、お湯の効能や江戸時代からの草津の歴史を伝えていく必要がある。これは西洋のスパの文化とは全く異なるものであるから、「ONSEN」を世界語にしようと、VJCの後押しもあり、日本航空などと連携しながら海外でアピールしている。
草津の場合、台湾、オーストラリア、ハワイなどでプロモーションを実施、今年も既に香港で誘客活動を行った。正確な数値はないが、JR東日本では2003年には2500人の訪日外客数が昨年には3万人超になっているし、草津市によると5000人が1万5000人になったという話がある。いずれにしろ、航空会社がお客様を日本へ運び、鉄道地域と密着したプロモーションをすることでよい協力体制が出来ている。
―「びゅう」には特に、駅構内での販売が着目されます。駅の店頭販売の状況、また今後の見通しについてお聞かせください。
佐藤 駅が一等地であり続ける、ということへ回答するならば「NO」だろう。パンフレットを求めている人が昔と変わらずいたとしても、現在は駅でパンフレットを取り、インターネットを駆使した消費者が様々な商品を比較、吟味し、その後に旅行商品を購買するという流れだ。他社の商品と価格や品質など、あらゆる面で比較されている上、旅行商品の購買の動機も変化しており、こうした背景を踏まえた上で「駅」の強みを活かしていくのでなければ、一等地にはならない。
JR東日本が進めている「Suica」で、駅の役割は大きく変化している。「びゅうプラザ」はいわゆるフルサービス型で、さらに「みどりの窓口」、FIT向けの機能として券売機があるが、ICカードの普及で変化が進んでいる。今後、駅は販売やサービスなど、あらゆる側面の機能を特化していく形でビジネスが展開されていくと考えられ、こうした方向性を見据えた方針が必要だろう。
―今後、御社をどのように舵取りしていきますか。
佐藤 SARS禍の2003年には取扱人員を大きく減らし状況は非常に厳しかったが、2004年には9万人超に回復した。その後、2005年、2006年と取扱人数が減少している。ただし、人数は年々減少しているものの、わずかながら黒字を計上している。特に海外旅行では、自然災害をはじめ安全がさらされ、インターネットが大きな勢力を占めている中、企業として黒字計上する経営責任はあるものの、経営環境は難しい時代にある。
ただし、大人の休日倶楽部の受託事業で人員規模としては、概ね3倍程度に増え、拠点も東京・新宿の1拠点から5つの拠点に増えた。こうした観点から、イン・アウト・国内とそれぞれに提供する旅行の質の向上を図りながら、取り組みたい。特に、国内外にいろいろな分野で専門性の高い方々と一緒にビジネスをしていきたいと思っており、「国内外のコラボレーション」を目指したい。
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質の向上と需要開拓に期待
2006年10月に東日本旅客鉄道から「大人の休日倶楽部」を受託し、会員組織の運営も加わり事業領域の拡大に伴い、商号を変更したびゅうトラベルサービス。創業した当時の海外旅行に加え、政府が推進するビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)の好機を捉え、2003年には訪日旅行を含む国内旅行にも目をむけ、海外、国内、訪日旅行と取り組んでいる。「大人の休日倶楽部」を受託で業容の拡大も予想されるが、現状や今後の展開について、佐藤勉社長に聞いた。
―昨年10月から大人の休日倶楽部を受託されましたが、びゅうトラベルのメリットは何でしょうか
佐藤勉氏(以下、佐藤) 「大人の休日倶楽部」は会員に対して、3割引のJRチケットの提供や、付加価値のある旅行商品の提供、さらに写生など勉強や趣味の場を提供し、旅行需要を創り出していく役割があります。特に国内旅行の造成力は高いものがあり、これを今後は海外旅行にも発展させていきたい。
例えば、ハワイへの家族旅行を楽しんでいた熟年世代に対し、4泊6日など旅行期間に一定の制約があったこれまでのパッケージツアーで本来の旅の楽しさが味わえたのか、という疑問がある。こうした旅行をされてきた方には今後、フルムーンで少し長い期間の旅行を楽しんでいただきたい。
ちょっと長い旅行という意味で「プチ・ロングステイ」と私は言っているが、こうした旅を訴求していきたい。そのひとつのデスティネーションとして、オーストラリアは良い商品が造れるでしょう。時差がなく、温暖な気候ですごしやすい。単純なパッケージをベースとしながら、現地でスーパーをはじめ、生活に必要な場所をお伝えし、その後は自由に過ごしていただく。旅行の安心という観点から、ヘルプデスクを用意し、いつでも質問などに対応していく体制は整える。
個人的に思うところだが、日本人は欧米人のようにプールサイドで本を読みながら、2週間をのんびり過ごすというスタイルはなじみにくいのではないか。近所付き合いなどがあり、日本にいなければならない動機もある。そうであれば、今述べたハワイ、オーストラリアやそれ以外にもプーケット島やバリ島など、1週間程度ずつ滞在し、各地を巡りながらリピーターとなっていただく形を考えることも一案ではないだろうか。「プチ・ロングステイ」を続けながら、人生を楽しむ姿もあると思う。
―ちょっとした旅行気分と生活気分を味わうということですね。このほか、大人の休日倶楽部ではどのようなことが考えられますか。
佐藤 大人の休日倶楽部をさらに生かすには、より深いキーワードが必要だろう。
例えば、ジャルパックの王朝街道は、「質」の高い添乗員がおり、内容の質はもちろんのこと安全面でも配慮されている。九寨溝、シルクロードをはじめ多くの観光素材があることから、これらをキーワードとして会員に訴求することで、着実に広げていくことが出来るだろう。日中30周年でもJR東日本の企画として1000人を送客したが、今回の35周年でも同様に中国を訪問する企画を進めている。
また、インドでは「仏教」を軸に寺院、仏跡めぐりの観光が出来るだろう。インドはBRICsの一角として経済成長も著しく、ビジネスとレジャーの両面から、興味関心が高まっていくだろう。インドは一般的なイメージとしてカレーや象を思い浮かべることが多いだろうが、デスティネーションを形成する根本的なところに「仏教」をベースとした日本人の関心をひきつけるものがある。大人の休日倶楽部の会員層には、天竺の歴史をきっかけに、近隣のミャンマーやタイなど小乗仏教と結びつけながら、旅行先を広げていくことも出来るだろう。
―訪日旅行にも取り組んでおりますが、その進捗は
佐藤 現在のところ、草津温泉を「ONSEN」として、日本のお風呂の文化を海外に伝えている。例えば、旅館のおかみさんが和服でお迎えすること、裸で入るお風呂、夕食と朝食が一体となった料金体系など独自のスタイルはいたるところにある。また、お湯の効能や江戸時代からの草津の歴史を伝えていく必要がある。これは西洋のスパの文化とは全く異なるものであるから、「ONSEN」を世界語にしようと、VJCの後押しもあり、日本航空などと連携しながら海外でアピールしている。
草津の場合、台湾、オーストラリア、ハワイなどでプロモーションを実施、今年も既に香港で誘客活動を行った。正確な数値はないが、JR東日本では2003年には2500人の訪日外客数が昨年には3万人超になっているし、草津市によると5000人が1万5000人になったという話がある。いずれにしろ、航空会社がお客様を日本へ運び、鉄道地域と密着したプロモーションをすることでよい協力体制が出来ている。
―「びゅう」には特に、駅構内での販売が着目されます。駅の店頭販売の状況、また今後の見通しについてお聞かせください。
佐藤 駅が一等地であり続ける、ということへ回答するならば「NO」だろう。パンフレットを求めている人が昔と変わらずいたとしても、現在は駅でパンフレットを取り、インターネットを駆使した消費者が様々な商品を比較、吟味し、その後に旅行商品を購買するという流れだ。他社の商品と価格や品質など、あらゆる面で比較されている上、旅行商品の購買の動機も変化しており、こうした背景を踏まえた上で「駅」の強みを活かしていくのでなければ、一等地にはならない。
JR東日本が進めている「Suica」で、駅の役割は大きく変化している。「びゅうプラザ」はいわゆるフルサービス型で、さらに「みどりの窓口」、FIT向けの機能として券売機があるが、ICカードの普及で変化が進んでいる。今後、駅は販売やサービスなど、あらゆる側面の機能を特化していく形でビジネスが展開されていくと考えられ、こうした方向性を見据えた方針が必要だろう。
―今後、御社をどのように舵取りしていきますか。
佐藤 SARS禍の2003年には取扱人員を大きく減らし状況は非常に厳しかったが、2004年には9万人超に回復した。その後、2005年、2006年と取扱人数が減少している。ただし、人数は年々減少しているものの、わずかながら黒字を計上している。特に海外旅行では、自然災害をはじめ安全がさらされ、インターネットが大きな勢力を占めている中、企業として黒字計上する経営責任はあるものの、経営環境は難しい時代にある。
ただし、大人の休日倶楽部の受託事業で人員規模としては、概ね3倍程度に増え、拠点も東京・新宿の1拠点から5つの拠点に増えた。こうした観点から、イン・アウト・国内とそれぞれに提供する旅行の質の向上を図りながら、取り組みたい。特に、国内外にいろいろな分野で専門性の高い方々と一緒にビジネスをしていきたいと思っており、「国内外のコラボレーション」を目指したい。
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