デルタ航空、CEOのグリンシュタイン氏ら経営陣が語る今後の国際線戦略

  • 2007年5月28日
デルタ航空(DL)が国際線に注力し、アジアにもこれまで以上に熱い視線を送る−。チャプター11から脱したDLは、現在は欧米路線に視野を向けているところだが、今後はロサンゼルスをハブとしてアジアでの路線展開を拡充していく。DLは先ごろ、メディア・ブリーフィングを開催、DL・CEOのジェラルド・グリンシュタイン氏を筆頭に経営幹部が語ったその狙い、戦略などに加え、アトランタ空港の機能拡張もレポートする。


−チャプター11申請の意図とその結果について

チャプター11の申請はコストカットが主な目的。申請以前は、所有する機材が国際線に活用できるものでありながら、国内線に使用しており、これを転換していくため、いわゆる「ネットワークキャリア」を目指した。これにより、国内線を主力としていた収益体制から、国際線へとシフトしてきた。
人件費、機材費用でそれぞれ1000万ドル(約12億円超)の削減に成功。国際線への進出で1000万ドルの増収する計画も達成する見込みだ。市場環境の好不調に関わらず、特に、コスト面で競争に生き抜いていく良い体質改善が進んだ。

チャプター11からの脱却を機に、新たなコーポレート・ブランドを打ち出し、再生を印象付けたい。
 ※右写真は、チーフ・ファイナンシャル・オフィサーのエド・バスティアン氏

−今後の国際線の進出計画について

スカイチームでの連携を強化するほか、欧米路線ではヒースロー/ニューヨーク(JFK)線への参入などを視野に入れている。先ごろの欧米当局での航空自由化の合意を受けた施策だが、今後1日3便程度を運航したい。発着枠はスカイチームとして確保することも可能ではないだろうか。競争という意味では、大西洋線については「ローコスト」とも言える体質となっており、これが成功への秘訣だ。

その他の路線では、アジアではソウルの運航を開始する。また、2008年にはアトランタ/上海線の就航を予定しており、航空当局と話し合いを持っているところだ。2008年にはボーイング777型機でインドへのフライトも開始する計画がある。また、ハブ空港であるアトランタ、ニューヨーク(JFK)については引き続き、ハブ空港としての機能を維持するため投資をしていく。
 ※右写真は、チーフ・オペレーティング・オフィサーのジム・ホワイトハースト氏

−投資についての考え方

チャプター11下ではバランスシートの改善、コスト構造の改善が急務であった。これはアメリカ系の航空会社でチャプター11を申請した他の航空会社と比べ、短い期間で実現することが出来た。国内、国際線の運航比率も国内線が8割程度の状況から、国際線のシェアが高まり、改善が進んでいる。最終的には国内線が55%、国際線が45%というシェアにしていきたい。

こうした資金繰りを背景に、投資面では特に顧客に関するあらゆる部分での投資を優先的に行う。これが収益にも反映されてくることだろう。例えば、定時発着率などはアメリカ運輸省が発表するデータなどによると、以前と比べて大きく改善されている(注:2004年は米航空会社で10位、05年に6位、06年に3位。今年は3月、4月に1位となっている)。

投資ではないが、顧客サービスに関する点からすると、乗継利便の向上も重視している。ヨーロッパから南米、アジアから南米など、スケジュールの改善を図り、MCTの短縮も重要だ。特に、現在の成田路線ではリマ、サンパウロへの需要が高く、こうしたコネクションをさらに改善する必要がある。

−ローコストへの考え方

先ほど、大西洋線は「ローコスト」と言える体質といったが、北米では低コスト構造でなくては競争力が保てない。また、今後の大西洋路線ではローコスト、ローフェアが重要だ。エコノミークラスでライアンエア(FR)などと競合ができ、ビジネスクラスもローフェアで提供していく。

格安航空会社(LCC)との違いはハブ機能を有していることだ。「Point to Point」の考え方は重要であるが、これと同時にあらゆるところから旅客を集めてくるハブ機能も重要だ。こうした利用方法はLCCにはあまり見られない。大西洋路線の競争激化で勝ち残るにはこうした施策が重要になる。

−国際線ネットワーク展開の考え方

現在、大西洋路線はDLが29%、コンチネンタル航空(CO)が19%、アメリカン航空(AA)が18%、ユナイテッド航空(UA)が15%、ノースウエスト航空(NW)が10%、USエアウェイズ(US)が9%という状況。ロンドン・ヒースロー空港に就航するAA、UAはシェアに比べて大西洋路線に強い。これが今後は変わっていくだろう。

その他、5月にはプラハ、ウィーン、ドバイへ就航する。アジアからは成田、ソウル線があり、リオデジャネイロ、ブエノスアイレスへの便と接続することで、欧州、アジアからのゲートウェイとなることが出来る。いわゆる「グローバル・ハブ」だ。このほか、ニューヨークJFKは2006年夏スケジュールに11地点を加え、将来的にはマンチェスター、ムンバイ、アフリカ各地のほか、アジアへの就航も視野にいれている。

ロサンゼルスはDLの第3のハブとして、ラテンアメリカへのゲートウェイとしていきたい。特に、メキシコ路線は既に充実していることが活きてくるだろう。地理的にロサンゼルスは、アジアからの便を就航することが重要だ。特に、米系航空会社のアジア太平洋路線は10%程度と少なく、チャンスは大きい。ただし、機材繰りの関係から直近に拡大することは難しいが、2008年2月から3月をめどに納入されるボーイング777型機をアトランタ/上海線に使う。ロサンゼルスがアジアのゲートウェイになる時期は、2010年ごろだろう。

−今後の販売戦略は

現在、DLの全路線で直販は28%、グループや旅行会社を経由するのが72%。アメリカでの販売を除くと直販が10%、旅行会社などの販売が90%を占めている。つまり、アメリカ国内での販売は「Delta.com」で、アイルランドやイギリスではDLサイトを利用する直販の傾向が強い。その他の地域ではGDSを経由した予約、つまり旅行会社での販売が重要となり、実際に3000以上の契約が結ばれている。

路線によっても、流通経路、販売の力点が異なる。例えば、アトランタ/ドバイ線ではビジネス旅客が主体だが、アトランタ/ソウル線ではレジャーとビジネスの需要をそれぞれ見込んでいる。

なお、この夏には日本でも「Delta.com」を日本語化する予定だ。これは単に翻訳するだけでなく、「ローカライズ」、いわゆるその地域の特性に合わせた内容で構成する。中国語やロシア語でも準備も進めており、これまで英語圏の12ヶ国で展開していたものが拡大するだろう。

−アトランタ空港の拡張計画

現在、昨年にオープンした5本目の滑走路の全てを運用している。また、新たに国際線、国内線の旅客ターミナルを建設している。国際線用としては12ゲートを新設し、2008年末には供用開始する予定。現在、約500万人が国際線を利用しており、供用開始されると約1400万人まで増加する見込みで、空港の建設が全て終了するのは2012年だ。

アトランタ空港は、2001年のテロ事件まで国際線の需要が伸び続けており、テロ以降に減少していたものの、再び国際線の需要が伸びているところだ。国際線のゲートはコンコースFとなり、新たに免税ショッピング、バゲージハンドリング施設などを建設している。これにより、現在、アトランタに就航する、ブリテッシュエアウェイズ(BA)、大韓航空(KE)、ルフトハンザ航空(LH)などはチェックインカウンターの移設なども計画があるという。

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