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トップインタビュー:IATA-Japan代表・中沢氏

  • 2007年4月11日
旅行業界と連携で需要拡大を目指す―IATA-Japan代表・中沢氏

先週掲載した、日本旅行業協会(JATA)・新町会長へのインタビューは、国際航空運送協会日本事務所・中沢祥行代表との対談から抜粋したもの。対談では航空業界出身の新町氏が航空業への理解を示しつつ、旅行業界側の主張と歩み寄りの提案をしたのに対し、旅行業界出身の中沢氏も旅行業界への理解と同時に航空業界のスタンスへの理解を求めた。中沢氏の言葉をまとめた。 (聞き手:弊紙編集長 鈴木次郎)


  ※新町会長とのインタビューは
   JATA、IATA、行政の3つのスクラムで市場拡大へ(その1) [掲載日:2007/04/04]
   旅行会社の労に対する対価を払うのは当然−新町会長(その2) [掲載日:2007/04/04]

需要拡大に向け、IATAとしてできること

JATAの「17項目のアクションプラン(提言)」(中間答申)では、パスポート取得キャンペーンの推進が盛り込まれている。単純にパスポートの取得者と非取得者の比較をすると、当然ながら取得者の方が出国率は高いことが分かっているので、パスポートの取得促進は中間答申の大きな柱の一つとしてふさわしいものだと思う。

IATAとして旅行業界に対して協力できることはたくさんあり、例えば出国に関する円滑化も一つの例。エアポートとエアラインと同じ動線で捉えた場合、シンプリファイング・パッセンジャー・トラベル(SPT)、つまり「入国、出国の審査の簡素化」があげられる。

具体的には、既に成田空港でICパスポート、ICカードなど、いわゆるテクノロジーを踏まえたペーパーレスの出入国審査の試験運用をしており、さらにこれを推進したEエアポート構想など、大変興味があるところだ。

もう一つ、搭乗手続きについても、インターネットを利用したオンラインチェックインができる。ウェブ上でボーディングパスも印刷できるので、空港で必要なことは飛行機に乗るだけになり、出入国が円滑になるはずだ。これは現在、旅行業界を上げて取り組まれている海外出国者数2000万人とポスト2000万人に、多少なりとも力になれると思う。

また、空港という点では、各空港をネットワークで繋げたい。これは行政やJATAと一緒に取り組むべきことだと思うし、ハードルは高いと思うが、首都圏や関西圏、そして出国率が低いといわれる地方のトラフィックの活性化を目的とした考えだ。

東南アジアを例にすれば、バンコク、クアラルンプール、シンガポール、それに香港の4つのハブ空港があり、それぞれ、多くのキャリアに就航してもらおうと、サービス向上やネットワーク化にしのぎを削っている。このように日本の空港同士も効率よく相互利用することを行政を含めて政策的にできれば、航空業界もメリットが増え、旅行業界もツアーが組みやすくなり、地方からの旅行者増加が見込める。最終的にお客様にとって海外旅行がより身近なものとなる。

ただ、日本は規制緩和の中間にあり、完全な自由化になっていないので、協力が難しい部分もある。関連して、新町会長がおっしゃるように、マーケットの動きに応じてビジネスモデルが引っ張られていく可能性がある。そう言う意味で、市場を重視する意向は、航空業界と旅行業界共に一緒だと思う。


航空も旅行を担う一部と認識

現在、航空業界と旅行業界の間には、多様な問題があり、個々の会社間のコマーシャルアグリーメントはIATAの範囲外だが、一般的な話として今、航空会社もかなり苦しい状況にある。一つの現象として機材をダウンサイズし、コストを軽減する努力をしている。当然、キャパシティに限りがあるので、JATAの目指す2000万人にも影響する可能性はないとはいえないだろう。

一方、旅行会社経由の航空券販売は、周知の通り日本では比率が高く、お互い協力していく必要はある。ただ、市場の変化が早いので、航空会社も旅行会社も双方とも戸惑っているというのが正確なところかと思う。

お客様の旅行のニーズとウォンツを考えたとき、旅行の楽しみとして機内で過ごす時間を充実させる意味でのサービス向上など、今後も協力していきたいと思う。近年、お客様のトラベルパターンはかなり多様化し、クルーズなどの1人1000万円位する高額なツアーを望む人もいれば、1泊2日の韓国旅行をしたい人もいる。

いろんなところで市場にばらつきがあり、それぞれに対応するのは航空会社も旅行会社も難しい点がある。航空会社としては現在、政府認可のされた各種の運賃体系を出しているが、格安航空券という違う種類のものも出ており、その辺を上手にマネジメントしていく必要があるかと思う。


Eチケット化への啓蒙活動も開始

Eチケット化については既にJATA、各旅行会社には協力いただいている。この機会を借りして申しあげたいが、本当に物理的に紙がなくなることになる。急にその場に対応するのは大変ですから、旅行会社にも周知徹底をお願いしたい。

先日、ある旅行会社さんから聞いたお話だが、お客様に切符を届ける納品行為が営業に繋がっているといて、これがEチケットになると、営業行為の重みがないという意見を頂戴した。確かに、私が営業マンとして同じ立場ならそのように思うかもしれないが、最終的に考えればEチケットはお客様にとって切符をなくす必要がなく、とても便利なものといえる。

パスポートを忘れてしまったら仕方がないが、空港に到着してからチケットを忘れたことに気づいたり、なくしたりしても、搭乗手続きには支障はない。これは大きなメリットです。特に、帰国便は安心です。既にJATAにもあらゆる場面で協力いただいており、引き続きお願いしたい。

IATAとして航空会社に、機内のビデオでEチケットに関する情報を提供してもらっている。搭乗されているお客様は再度の搭乗機会がある方々と仮定しているので、有力な告知方法の一つだと考えている。これらの活動も含め、今後JATAと一体型の活動ができたらいいと思う。


密なコミュニケーションで歩み寄りを

航空会社と旅行会社は助け合いの世界なので、Win-Winの関係を作る努力をお互いにするためのコミュニケーションは、密にする必要があると思う。

航空業は国際ビジネスなので、どうしてもグローバルスタンダードの影響を受けることがある。もちろん、市場主義の考えでは日本市場の特性を考慮に入れなくてはいけないが、すべてその通りにできるわけではない。だからこそ、JATAと話し合いの中で日本用にカスタマイズできるところは変更し、グローバルスタンダードのシステムで通さざるを得ないところは理解いただくという、妥協点を探す努力をする必要があることも加えておきたいと思う。IATAとしてもJATAと定期的な会合を持つことは望ましいこと。両者で需要創造を目指していきたいと思う。


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