デスティネーション・スペシャリスト、受験申込は1509名−要件緩和が奏功
日本旅行業協会(JATA)によると、第3回デスティネーション・スペシャリスト(D/S)認定試験の3月12日現在での受験申込数は1509名となった。昨年度から申込者数は大幅に増加したという。なお、試験は17日から21日の5日間にオンラインで実施する。
増加の要因は特例措置の適用。旅行会社のD/S認定要件としては、旅行業務経験1年以上でトラベル・コーディネーター、もしくは総合旅行業務取扱管理者資格の保有者、かつ現地へ過去5年以内の渡航経験がある者。ただし、2008年度までの特例措置として所属する会社の研修の受講と推薦により、D/S認定するとして要件を緩和している。JATAでは特例について「制度の早期普及の観点からの措置」としており、これが大きく受験者数の増加につながった。
受験形態ではD/S講座の修了者が802名、現地への渡航経験が過去3年間で2回以上などの要件を満たした場合に講座をスキップして受験することができるダイレクト受験が707名。このうち、旅行業からはJATA会員会社からは1466名、ANTA会員は6名、その他8名、添乗員からはTCSA会員17名、その他12名となっている。地域別ではオーストラリアが237名、ハワイが191名、アメリカが153名、イタリア・マルタが152名、中国が147名となった。
▽特例措置の今後
今回の特例措置の適用は、D/S制度の存続をかけた対応と見られる。これまで、2回実施したD/Sでの資格保有者は19デスティネーション合計で93名。観光局側が講座の問題作成などで果たした役割が大きく、JATAとしてもD/S認定者の増加を迫られ、苦肉の策が「所属する会社の研修の受講と推薦」であった。
もともと、D/S認定要件として、旅行業務経験1年以上でトラベル・コーディネーター、もしくは総合旅行業務取扱管理者資格を基本としていたD/S制度であるが、現状、旅行会社には総合旅行業務取扱管理者を保有していなくとも十分に仕事ができ、かつ支障の無い場合も多い。JATAが実施した主要旅行業者50社とJATA役員会社の合計60社を対象とした調査では、旅行部門の社員数に対する総合旅行業務取扱管理者の比率は45.8%であったという。この調査からも、旅行会社従事者の保有率は半分にも至っていない現状が浮き彫りになっており、観光局が望むD/S認定者の増加という方向に管理者を要件とすると大きな阻害要因となる。
一方、D/Sの構想自体は紆余曲折があったものの、総合旅行業務取扱管理者とセットで考えられてきたものだ。現在、JATAは「総合旅行業務取扱管理者」を業界全体で「標準装備化したい」としており、一体的な運用をしていく狙いに変わりはない。ただし、今回の要件緩和でも明らかになったように、「総合旅行業務取扱管理者」資格と合わせて運用することのデメリットも大きいのは明らかだ。
JATAでは特例について、「トラベルカウンセラー協議会で検討していく」としているが、基本的には旅行業界の人材育成の一環として考えていくべきことと思われる。「総合旅行業務取扱管理者」資格を必要としてハードルを高くして継続するか、特例を継続して旅行業界の隅々に至る資格としていくかは大きな岐路で、旅行業界の人材育成全体の方向性を照らして考えるべきではないだろうか。(鈴木)
増加の要因は特例措置の適用。旅行会社のD/S認定要件としては、旅行業務経験1年以上でトラベル・コーディネーター、もしくは総合旅行業務取扱管理者資格の保有者、かつ現地へ過去5年以内の渡航経験がある者。ただし、2008年度までの特例措置として所属する会社の研修の受講と推薦により、D/S認定するとして要件を緩和している。JATAでは特例について「制度の早期普及の観点からの措置」としており、これが大きく受験者数の増加につながった。
受験形態ではD/S講座の修了者が802名、現地への渡航経験が過去3年間で2回以上などの要件を満たした場合に講座をスキップして受験することができるダイレクト受験が707名。このうち、旅行業からはJATA会員会社からは1466名、ANTA会員は6名、その他8名、添乗員からはTCSA会員17名、その他12名となっている。地域別ではオーストラリアが237名、ハワイが191名、アメリカが153名、イタリア・マルタが152名、中国が147名となった。
▽特例措置の今後
今回の特例措置の適用は、D/S制度の存続をかけた対応と見られる。これまで、2回実施したD/Sでの資格保有者は19デスティネーション合計で93名。観光局側が講座の問題作成などで果たした役割が大きく、JATAとしてもD/S認定者の増加を迫られ、苦肉の策が「所属する会社の研修の受講と推薦」であった。
もともと、D/S認定要件として、旅行業務経験1年以上でトラベル・コーディネーター、もしくは総合旅行業務取扱管理者資格を基本としていたD/S制度であるが、現状、旅行会社には総合旅行業務取扱管理者を保有していなくとも十分に仕事ができ、かつ支障の無い場合も多い。JATAが実施した主要旅行業者50社とJATA役員会社の合計60社を対象とした調査では、旅行部門の社員数に対する総合旅行業務取扱管理者の比率は45.8%であったという。この調査からも、旅行会社従事者の保有率は半分にも至っていない現状が浮き彫りになっており、観光局が望むD/S認定者の増加という方向に管理者を要件とすると大きな阻害要因となる。
一方、D/Sの構想自体は紆余曲折があったものの、総合旅行業務取扱管理者とセットで考えられてきたものだ。現在、JATAは「総合旅行業務取扱管理者」を業界全体で「標準装備化したい」としており、一体的な運用をしていく狙いに変わりはない。ただし、今回の要件緩和でも明らかになったように、「総合旅行業務取扱管理者」資格と合わせて運用することのデメリットも大きいのは明らかだ。
JATAでは特例について、「トラベルカウンセラー協議会で検討していく」としているが、基本的には旅行業界の人材育成の一環として考えていくべきことと思われる。「総合旅行業務取扱管理者」資格を必要としてハードルを高くして継続するか、特例を継続して旅行業界の隅々に至る資格としていくかは大きな岐路で、旅行業界の人材育成全体の方向性を照らして考えるべきではないだろうか。(鈴木)