ITBベルリンはインド対中国の様相−観光成長は途上国に期待、危機対応も重視

  • 2007年3月9日
<ベルリン発:鈴木次郎> 184ヶ国、1万923出展者が一同に介し、現地3月7日から11日までの日程でITBベルリンが開催されている。今年の注目国はインドで、「インクレディブル・インディア(Incredible !ndia)」というキャッチフレーズでアピールしており、デスティネーションとして、また旅行需要の高まりとしてインドと中国の対決という様相を呈している。中国については、空港が巨大化するなどインフラ面の整備が進んでいることに対して軍配が上がるが、こうした面についてはインドも着手し始めた。例えば、デリーではフランクフルト空港会社と提携、2010年までに130のチェックインカウンターを備える第3旅客ターミナルを建設し、現在の1200万人規模から3700万人規模の需要に対応していく計画だ。



 世界観光機関(UNWTO)事務局長のフランシスコ・フランジアリ氏は全世界で4%の増加であるものの、アジア太平洋やアフリカが8%増と旅行者数の非常に高い伸びを引き合いに今後の観光業の成長は途上国の伸びにかかっていると言及。ただし、先進国は観光でも競争力があり、アフリカなど競争力をつける必要があることを力説。こうした状況からすると、インドや中国などの観光業が盛んになることはUNWTOとして取り組んできた「貧困」への解決方策として望ましい方向にある。

 ただし、近年は鳥インフルエンザ、テロ、SARSなどの伝染・感染症対策、異常気象による環境の変化など危機対応が観光業全体で取り組む新たな課題。特に、異常気象による影響は、降雪量の減少による経済への影響だけでなく、海水面の上昇による観光地の消滅の危機などが予想される。フランジアリ事務局長は「10年前の様にビジネスだけに集中すれば良い時代は終わった」とし、環境問題についても「実務家レベルでも3年程度の中期だけでなく長期的な視野も持ち、物事を見ていく必要がある」と課題を投げかけた。

 なお、UNWTOは危機管理対応の専門サイト「SOS・ドット・トラベル」を立ち上げた。これは観光業が取り組むべき危機に対し、「万が一の際に最新の情報を業界だけでなく一般旅行者にも情報を提供する」(フランジアリ事務局長)狙い。現在は、鳥インフルエンザの情報を中心に掲載しており、最新情報では韓国での鳥インフルエンザの疑い、ミャンマーの対応策、ラオスでの少女の死亡を8日付けで報告している。

▽UNWTO運営の危機管理対応サイト
http://www.sos.travel