新春インタビュー:エクスペディア・ジャパンのエリック・ファイゲンバーム氏
昨年11月末に日本語によるエクスペディアが開設され、アメリカをはじめ、世界各地で展開してきた旅行予約サイトがいよいよ日本に上陸した。だが、本格展開はダイナミック・パッケージの提供を開始してからとなる。今後の動向、日本市場での勝算など、さまざまな面についてエクスペディア・ジャパン代表取締役社長のエリック・ファイゲンバーム氏に聞いた。
−ホテル予約から開始したサービスの進捗は
予約の滑り出しは十分満足とはいかないが、満足できるレベルにある。
サイトの使い勝手を考慮し、トップページにはアメリカの「Expedia.com」で予約している日本人の顧客データをもとにサイトの予約画面を構成した。今後、ホテル予約の人気デスティネーションは変わっていく可能性がある。
−使いやすさという点ではどのような工夫をしているのか。
例えば、ホテルの概観を360度で閲覧できる機能が代表例だ。写真を入れるだけでなく、できるだけ自宅のパソコンの前でユーザーに選択肢を多く与えることを考えている。
こうしたコンテンツに加え、基本的な概要についても情報を提供している。これだけの情報量は他のサイトでも類を見ないだろう。1軒のホテルのデータにタブを利用するなど画面遷移を減らす工夫をし、情報量の多さと使いやすさを両立している。
−ホテルの情報はどうやって集めているのか。
エクスペディアは全世界でコンテンツ提供のみに従事しているスタッフが約100名、(ホテルなど)商品開発に700名ほどが従事している。このスタッフが日々、情報を更新しており、われわれは最も新しい情報を重視してサイトでの情報提供をしている。
こうした独自の情報とミシュランなどさまざまな機関が出す評価、ホテル利用者からの評価などが組み合わさってエクスペディア独自の星をつけており、この星は常に変動している。つまり、ホテルが出したピーアール的な内容で構成されているものではない。
独自の評価システムは、エクスペディアの営業部隊とは完全に切り離して展開している。評価の最高ランクは星5つだが、より細かく0.5星ずつ区切っており、より細かく評価の参考とすることができる。
−コールセンターを無くし、オンラインで完結するビジネスは考えていないのか
エクスペディアではグローバル・コンシューマー・コールセンターを持っており、日本でも同様にコールセンターがある。これはお客様の信頼を得ることが重要であるという認識から、設置しているものだ。
オンライン旅行会社としてアメリカではNO.1だが、アメリカにもコールセンターがあり、他のオンライン旅行会社もこうしたコールセンターを持っている。いずれにせよ、われわれのビジネス・プラン上で、現在は「コールセンターは必要」という結論だ。
−旅行業界はダイナミック・パッケージの展開がいつか注目している
われわれのロードマップは近々、「エア+ホテル」の予約を提供することだ。世界各地でエクスペディアを展開してきたが、オーストラリアでホテル予約から開始し、その後にダイナミック・パッケージを展開、その前のイタリアでも同様だった。
「ダイナミック・パッケージ」という用語は旅行業界では非常によく知られている。ただし、消費者は知らない。内容は「エア+ホテル」であって、これがダイナミックと呼ばれるのはリアルタイムの予約、料金、アベイラビリティを束ねて提供することで、経済学的に「ダイナミック」という意味であるだけだ。
消費者がどのように反応するかについて、エクスペディアがアメリカ、カナダ、イギリス、イタリア、フランス、ドイツ、オーストラリアなどでも経験してきたことを活用する。このうちヨーロッパは大きな旅行会社があり、団体旅行も盛んという点で日本に非常に似ているが、エクスペディアがこうした商品を展開した時に格安航空会社(LCC)の登場など予期せぬ出来事もあった。
既存の大手旅行会社が手を出さなかった分野では、週末の主要都市のホテルが開いているところに送客するビジネスをしたところ、「シティ・ブレイク」と言われるほど盛況となった。日本でも予測できない変化がおきうるかもしれない。
−日本でのビジネス展開は国内、海外、訪日と取り組むのか
弊社は全世界に約3万3000軒のホテルと直接の契約を結び、約400名のマーケット・マネージャーが世界各地で動いている。こうした点から、日本では海外の情報、知識をすぐに提供できる。日本人のニーズに対して、アメリカだけでなく、ヨーロッパ、オーストラリア、そして中国に対してすぐにでも提供が可能だ。
SARS以後、FIT層は毎年増加する傾向にある。エクスペディアの2005/06年会計年度(9月30日)では3700万泊を記録しており、これは1秒で1泊の予約をしている計算だ。例えば、ニューヨークのホテル予約のうち、10%から12%がエクスペディアからの予約だ。こうした強みを活かすのは日本ではアウトバウンドに取り組むことだ。また、日本へのインバウンドにも若干取り組むことにはなる。
−日本市場はよく独自性が強いといわれるが、その対応は
例えば航空業界では、日本での昨年のeチケット率と今年を比べると大きな変化を遂げている。同時に日本では旅行の専門家でなくとも「パッケージツアー」というものの重要性を認識している。
これまで、われわれはヨーロッパでも大きな変化に遭遇し、それに対処してきた。エクスペディアが対象とするFIT層について言えば、全世界に共通する普遍的な点と市場毎の特有さがある。FITの普遍さは価値を求めること、選択肢の豊富さなど。一方で特有なものは、顧客毎の体験をどのように捉えるか、が大きく異なる。エクスペディアでは、100を超える項目に渡り調査し、日本の利用者が喜ぶサイトを作り上げている。
−日本の海外旅行市場は拡大していくか
燃料費の増大、航空座席の供給量、円安基調にある為替レート、国際旅費の増加傾向などさまざまな要素を考慮しなければならない。私は以前、アナリストであったが「予測をすること」は非常に難しい。ただ、これらは「マクロ」的な要素であって、使いやすい商品、多くの価値、競争力のある商品を提供することであれば、多くの顧客を集めていくことができる。
弊社はオンライン旅行予約でエクスペディアが第1位、世界の旅行会社で第3位の規模を誇っている。日本の海外旅行者数は1750万人で、これも世界で有数の規模。ただ、オンライン市場は海外旅行が約10%。
これらの数値を個々に見るのではなく、複合的、かつ全体的に見るとまだまだ多くのビジネスチャンスがあると思われる。成功の秘訣はお客様の信頼を得ることで、その後に「口コミ」でも広がる。
<過去のトップインタビューはこちら>
−ホテル予約から開始したサービスの進捗は
予約の滑り出しは十分満足とはいかないが、満足できるレベルにある。
サイトの使い勝手を考慮し、トップページにはアメリカの「Expedia.com」で予約している日本人の顧客データをもとにサイトの予約画面を構成した。今後、ホテル予約の人気デスティネーションは変わっていく可能性がある。
−使いやすさという点ではどのような工夫をしているのか。
例えば、ホテルの概観を360度で閲覧できる機能が代表例だ。写真を入れるだけでなく、できるだけ自宅のパソコンの前でユーザーに選択肢を多く与えることを考えている。
こうしたコンテンツに加え、基本的な概要についても情報を提供している。これだけの情報量は他のサイトでも類を見ないだろう。1軒のホテルのデータにタブを利用するなど画面遷移を減らす工夫をし、情報量の多さと使いやすさを両立している。
−ホテルの情報はどうやって集めているのか。
エクスペディアは全世界でコンテンツ提供のみに従事しているスタッフが約100名、(ホテルなど)商品開発に700名ほどが従事している。このスタッフが日々、情報を更新しており、われわれは最も新しい情報を重視してサイトでの情報提供をしている。
こうした独自の情報とミシュランなどさまざまな機関が出す評価、ホテル利用者からの評価などが組み合わさってエクスペディア独自の星をつけており、この星は常に変動している。つまり、ホテルが出したピーアール的な内容で構成されているものではない。
独自の評価システムは、エクスペディアの営業部隊とは完全に切り離して展開している。評価の最高ランクは星5つだが、より細かく0.5星ずつ区切っており、より細かく評価の参考とすることができる。
−コールセンターを無くし、オンラインで完結するビジネスは考えていないのか
エクスペディアではグローバル・コンシューマー・コールセンターを持っており、日本でも同様にコールセンターがある。これはお客様の信頼を得ることが重要であるという認識から、設置しているものだ。
オンライン旅行会社としてアメリカではNO.1だが、アメリカにもコールセンターがあり、他のオンライン旅行会社もこうしたコールセンターを持っている。いずれにせよ、われわれのビジネス・プラン上で、現在は「コールセンターは必要」という結論だ。
−旅行業界はダイナミック・パッケージの展開がいつか注目している
われわれのロードマップは近々、「エア+ホテル」の予約を提供することだ。世界各地でエクスペディアを展開してきたが、オーストラリアでホテル予約から開始し、その後にダイナミック・パッケージを展開、その前のイタリアでも同様だった。
「ダイナミック・パッケージ」という用語は旅行業界では非常によく知られている。ただし、消費者は知らない。内容は「エア+ホテル」であって、これがダイナミックと呼ばれるのはリアルタイムの予約、料金、アベイラビリティを束ねて提供することで、経済学的に「ダイナミック」という意味であるだけだ。
消費者がどのように反応するかについて、エクスペディアがアメリカ、カナダ、イギリス、イタリア、フランス、ドイツ、オーストラリアなどでも経験してきたことを活用する。このうちヨーロッパは大きな旅行会社があり、団体旅行も盛んという点で日本に非常に似ているが、エクスペディアがこうした商品を展開した時に格安航空会社(LCC)の登場など予期せぬ出来事もあった。
既存の大手旅行会社が手を出さなかった分野では、週末の主要都市のホテルが開いているところに送客するビジネスをしたところ、「シティ・ブレイク」と言われるほど盛況となった。日本でも予測できない変化がおきうるかもしれない。
−日本でのビジネス展開は国内、海外、訪日と取り組むのか
弊社は全世界に約3万3000軒のホテルと直接の契約を結び、約400名のマーケット・マネージャーが世界各地で動いている。こうした点から、日本では海外の情報、知識をすぐに提供できる。日本人のニーズに対して、アメリカだけでなく、ヨーロッパ、オーストラリア、そして中国に対してすぐにでも提供が可能だ。
SARS以後、FIT層は毎年増加する傾向にある。エクスペディアの2005/06年会計年度(9月30日)では3700万泊を記録しており、これは1秒で1泊の予約をしている計算だ。例えば、ニューヨークのホテル予約のうち、10%から12%がエクスペディアからの予約だ。こうした強みを活かすのは日本ではアウトバウンドに取り組むことだ。また、日本へのインバウンドにも若干取り組むことにはなる。
−日本市場はよく独自性が強いといわれるが、その対応は
例えば航空業界では、日本での昨年のeチケット率と今年を比べると大きな変化を遂げている。同時に日本では旅行の専門家でなくとも「パッケージツアー」というものの重要性を認識している。
これまで、われわれはヨーロッパでも大きな変化に遭遇し、それに対処してきた。エクスペディアが対象とするFIT層について言えば、全世界に共通する普遍的な点と市場毎の特有さがある。FITの普遍さは価値を求めること、選択肢の豊富さなど。一方で特有なものは、顧客毎の体験をどのように捉えるか、が大きく異なる。エクスペディアでは、100を超える項目に渡り調査し、日本の利用者が喜ぶサイトを作り上げている。
−日本の海外旅行市場は拡大していくか
燃料費の増大、航空座席の供給量、円安基調にある為替レート、国際旅費の増加傾向などさまざまな要素を考慮しなければならない。私は以前、アナリストであったが「予測をすること」は非常に難しい。ただ、これらは「マクロ」的な要素であって、使いやすい商品、多くの価値、競争力のある商品を提供することであれば、多くの顧客を集めていくことができる。
弊社はオンライン旅行予約でエクスペディアが第1位、世界の旅行会社で第3位の規模を誇っている。日本の海外旅行者数は1750万人で、これも世界で有数の規模。ただ、オンライン市場は海外旅行が約10%。
これらの数値を個々に見るのではなく、複合的、かつ全体的に見るとまだまだ多くのビジネスチャンスがあると思われる。成功の秘訣はお客様の信頼を得ることで、その後に「口コミ」でも広がる。
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