アセアンへの教育旅行、学校側提案に旅行会社の企画力が問われる

  • 2006年2月15日
 日本アセアンセンターは14日、東京でアセアン観光セミナー「アセアン地域への修学旅行・教育旅行の現状と展望」を開催した。日本アセアンセンター事務総長の赤尾信敏氏によると、1月のアセアン観光会議の場において、日本アセアンセンターの教育旅行の取り組みが各国代表の強い関心を呼び、今後の取り組みに意欲的な協力姿勢を示す国が多かったという。「教育旅行は日本とアセアン地域の交流を促進し、相互理解、観光促進に繋がる重要なもの」と赤尾氏は語り、アセアン地域への教育旅行の拡大に期待する。
 日本修学旅行協会理事長の河上一雄氏は、教育旅行の動向を紹介。「学校は受け身の状態から旅行会社へ提案していくスタイルに変わってきている。特に、学校側が保護者に対して、海外教育旅行を実施する費用対教育効果の提示を強く求められている」と現況を解説した。「今後は、旅行会社が学校からの提案に対し、どのようにマッチングしていくかがポイント」とコメントした。

 現在、アセアン地域への修学旅行が継続し、増加傾向だ。2005年度の教育旅行の渡航者数では、1位がオーストラリア、2位が韓国、3位がシンガポール、4位がマレーシア、5位がハワイと上位にアセアンの2ヶ国が入ったほか、シンガポールが04年度比約14%増、マレーシアが約13%増となる、高い成長率を示した。河上氏は「中国、韓国への需要が昨今の情勢により、アセアン地域に動いているのも一因」と分析。一方で、「アセアンに、ふれあいと感動体験に加え、地球規模の問題となっている自然と環境の学習ができる」とアセアン地域での教育旅行の魅力を学校側の視点で紹介。治安の良さ、環境と自然を軸に、日本との歴史的、文化的繋のある素材の充実を強調し、アセアン地域での教育旅行の実施を勧めた。

 また、2005年度から東京都、茨城県の公立学校での海外教育旅行が解禁になったほか、2006年度には栃木県でも実施可能となるが、「経済的な規定はまだ厳しい。旅行会社から学校に対して、質のいい、料金も値ごろ感ある教育旅行の提案を求める」と強調した。


▽ASEAN各国の観光局が修旅の素材、デスティネーションを紹介

 セミナーでは、タイ国政府観光庁(TAT)、マレーシア政府観光局、シンガポール政府観光局(STB)が日本からの教育旅行の受入状況、教育旅行に適した素材を説明。タイでは、バンコクを筆頭に世界遺産の街アユタヤ、エコ・ツーリズムや戦争に関する学習ができるカンチャナブリ、現地の学生が遺跡を英語で案内してくれる人気上昇中のプログラムのあるナコンラチャシマなどを教育旅行のデスティネーションとして紹介。
 マレーシアは、多民族国家で親日的な国民性というソフト面の特徴に加え、マレー人の村を訪問、現地の文化や人々との交流を体験できるホームステイ・プログラム「カンポンステイ・プログラム」が全国の多くの村で体験できるインフラの充実を強調した。
 シンガポールは、教育旅行で訪れた学生に対し、現地の学生が引率。観光施設でシンガポールの風習などを説明する異文化交流「ツーリズム・アンバサダー制度」をはじめ、これまであまり知られていなかったホームステイ・プログラムの充実をアピールした。