CORSIA創設10年、IATAがEU独自制度の拡大に警戒
国際航空運送協会(IATA)は10月6日、国際航空の二酸化炭素(CO2)排出を相殺する国際制度「CORSIA」の創設につながった国際民間航空機関(ICAO)総会決議から10年を迎え、各国政府に制度の一貫した実施と強化を求めた。欧州連合(EU)が進めるEU排出量取引制度(EU ETS)の見直しについては、国際的な制度との重複や追加的なコストにつながる可能性があるとして警戒感を示した。
CORSIAは2016年のICAO総会で採択された、国際航空を対象とする世界共通の市場メカニズム。一定の基準を上回るCO2排出量について、航空会社がCORSIAの基準を満たす適格排出ユニット(炭素クレジット)を購入・取り消すことで相殺する仕組みで、2026年は130カ国が参加している。
IATAによると、CORSIAによるCO2相殺量は2026年末までに2億トンを超える見込み。2027年以降は国際航空の年間CO2排出量の約85%が制度の対象となり、2035年の制度終了までに排出削減や炭素除去事業へ最大1200億ドルの資金を供給する可能性があるとしている。
一方、欧州委員会が7月に示したEU ETSの改正案では、2029年から欧州経済領域(EEA)の空港を出発し、フランクフルト空港を基準に5000キロ以内にある第三国の空港へ向かう便へ適用範囲を広げることなどを提案している。一部の国や空港などは対象外となる。第三国による炭素価格制度の導入を行政・技術面で支援する「EU ETS as a Service」の創設も盛り込んだ。
IATAは、地域・二国間の制度がCORSIAと並存すれば、航空会社の制度対応が複雑化し、重複する義務や追加的なコストにつながる可能性があると主張する。欧州委員会案にはCORSIAで生じた相殺費用をEU ETSの義務から差し引き、二重の炭素価格負担を避ける仕組みも盛り込まれているが、IATAは域外への適用拡大が第三国や国際航空ネットワークに及ぼす影響について十分な検証が行われていないと指摘している。
IATAの試算では、提案通りにEU ETSの対象が拡大された場合、2027~2040年の順守費用は現行の地理的な適用範囲を維持した場合と比べて約40%増え、累計約2800億ユーロに達する可能性がある。
IATAはEUに対し、CORSIAを国際航空の統一的な枠組みとして維持し、EU ETSの域外適用拡大と「EU ETS as a Service」を撤回するよう要請した。あわせて、持続可能な航空燃料(SAF)への支援を2029年まで待たずに拡充することや、SAFの生産地域に関する制限の撤廃、航空分野から得た排出枠収入をSAFの生産・供給インフラや新技術への投資に充てることを求めている。
EU ETSの見直しは今後、欧州議会やEU理事会による立法協議を経る必要があり、現時点で内容は確定していない。IATAは適用範囲の拡大が国際的な接続性や航空会社の競争力に及ぼす影響についても懸念を示しており、今後の協議の行方が注目される。