観光庁、旅行業制度の海外調査に着手 海外OTA対応や消費者保護など検証
観光庁は、旅行市場や取引形態の変化を踏まえ、諸外国の旅行業に関する法制度や運用実態を調べる「各国の旅行業法制度の現状等調査」に着手した。海外OTAへの対応や旅行事業者に対する規制、消費者保護の仕組みなどを調査し、今後の旅行業法の運用や旅行業のあり方を検討する際の基礎資料とする。現時点で法改正など具体的な方向性を定めているものではなく、まず海外の制度や動向を把握する。観光庁観光産業課の辺見晋弘旅行業務適正化指導室長らが本紙の取材に説明した。
旅行業法が制定されて以降、オンラインによる旅行取引の拡大など、旅行を取り巻く社会環境やビジネスの形態は大きく変化している。辺見室長は、制定当時には想定されていなかった取引も生まれているとしたうえで、今後の制度のあり方を考えるためにも、まず諸外国でどのような制度が採用され、どのような考え方が一般的になっているのかを把握する必要があるとの考えを示した。
同庁が旅行業法制度について具体的な調査に取り組むのは今回が初めてという。辺見室長は、旅行業を巡る制度については以前から課題の一つとして認識していたとし、マンパワーや調査予算などの条件が整ってきたことから、今回「まず第一歩」として調査に着手したと説明した。調査結果を踏まえ、さらに確認すべき論点が明らかになれば、来年度以降に追加的な調査を行う可能性もある。
調査では海外OTAへの対応も対象となる。辺見室長は、海外OTAを巡っては以前からさまざまな課題があるとの認識を持っていたと説明。
具体的な対象国や調査項目については今後、事業者と調整しながら絞り込む。山川寛二旅行業務適正化指導室専門官によると、欧州を中心に制度を調べる方針で、EUにおけるパッケージ旅行制度の見直しなども参考とする考えだ。
EUでは2026年4月、パッケージ旅行と関連旅行手配に関する指令を改正する指令(EU)2026/1024が成立した。旅行者保護をより実効的にするとともに、一部ルールを簡素化・明確化する内容で、キャンセルや払い戻し、事業者の倒産時の保護などに関する規定が見直された。
観光庁の調査では、こうした海外の制度変更に加え、日本の旅行業務取扱管理者に相当する仕組みが各国に存在するのか、旅行事業者の業務をどのような制度で管理しているのかといった点も、調査対象として検討する。
一方、現時点で旅行業法の改正を前提としているわけではない。山川専門官は、法改正について現段階では具体的に検討していないと説明。辺見室長も、今回の調査について、今後何らかの制度検討を行う際にもまず基礎となる情報が必要との考えから実施するもので、具体的な制度改正などを議論する段階よりも前にあるとの認識を示した。
調査終了後についても、現時点で有識者会議など具体的な検討体制を予定しているわけではない。辺見室長は、調査結果を踏まえて仮に制度改正などの方向へ進む場合には、その先のプロセスとして有識者による検討なども考えられるとした。
旅行業登録手続き、デジタル化と負担軽減を検討
観光庁は併せて、「旅行業登録手続き等の業務適正化に向けた調査・検討等業務」にも着手している。
旅行業の登録や更新、変更登録、旅行業約款の審査などでは、現在も紙を基本とした手続きが多い。辺見室長は、押印した書類の提出や紙による確認・やり取りを続ける現在の方法について、デジタル技術を活用し、より効率的な方法を検討していく必要があるとの認識を示した。
調査では、単に現在の申請書類をオンラインで提出できるようにすることだけでなく、事業者側の負担軽減につながる手法を検討する。山川専門官によると、必要書類や手続きの内容自体を簡素化できるかどうかについても調査の中で検討する。ただし、こちらについても制度改正を前提としたものではなく、現行制度を前提にどのような効率化が可能かを幅広く調べる段階としている。
まずは観光庁が登録行政庁となっている第1種旅行業者の手続きを中心にオンライン化を検討する。第2種、第3種旅行業などについては都道府県が登録を所管しており、すでに独自に電子化を進めている自治体もあるという。観光庁での検討結果によっては、将来的に各都道府県での手続きにも参考となる可能性がある。
観光庁は調査結果を踏まえて今後の対応を検討する。