「人間中心のAI」と「地域の求心力」、Rakuten AI Optimism 2026から考える人口減少時代の観光

  • 2026年8月14日

地域の『求心力』は景観だけではない

 では、人口が減っても人を引き付け、存続できる地域とはどのような場所か。

 安宅氏は、その条件として、経済が持続的に回ること、災害などから自ら回復できるレジリエンスを備えること、都市とは異なる求心力を持つこと、そして多様な人が混ざり合い、新たな変化が生まれ続けることの4点を挙げた。

 このうち観光との関わりが深い「求心力」について、安宅氏はさらに具体的に説明した。まず必要なのは、その場所を訪れたいと思わせる自然や景観などの魅力だという。ただし、それだけでは十分ではない。一定期間滞在しながら仕事ができる通信環境や机、宿泊環境に加え、医療や教育なども含め、安心して過ごせる生活基盤が必要になるとした。

 さらに重視したのが、その土地ならではの歴史や文化、自然などに触れられる「出会い」だ。地域には、道や水、集落、暮らしなど、長い時間をかけて形成されてきた固有の背景がある一方、地元にとって当たり前になり過ぎ、その価値が十分に認識されていない場合もあると指摘した。そうした土地の記憶や魅力を見つけ直し、訪れた人が実際に触れられる形にしていくことが、地域の求心力につながるとの考えを示した。

人口減少時代に問われる「人とAI」の役割

 2つのセッションは、企業のAI活用と地域の持続可能性という異なるテーマを扱ったが、共通していたのは、人や地域が持つ知識や価値をいかに生かすかという視点だ。AXの議論では、AIを単なる自動化の手段とせず、人のノウハウや能力を引き出す活用が示された。一方、地域と観光の議論では、人口減少を前提にしながら、土地固有の魅力や人の力を生かして地域を存続させる必要性が語られた。

 人手不足への対応が課題となる旅行業界でも、AIに任せる業務と、人が担うべき役割をどう組み合わせるかが今後一層問われそうだ。業務効率化によって生まれた時間や人材を、地域の魅力の発掘や商品造成、顧客への提案など、より付加価値の高い仕事に振り向けられるか。人口減少時代の観光を考えるうえで、両セッションはそうした視点を提示した。