旅館・ホテル市場、25年度6.5兆円で過去最高更新へ 需要回復も財務改善が急務

 帝国データバンク(TDB)の調査によると、2025年度の国内旅館・ホテル市場は6.5兆円に達し、過去最高を更新する見通しとなった。需要は回復基調を維持する一方、債務超過企業が約3割を占めるなど、財務体質の脆弱さが業界課題として浮き彫りとなっている。

 今回の調査では、2025年度の市場拡大の背景として、円安を追い風とした訪日客の増加に加え、国内の観光や出張需要の回復、大規模イベントの開催が重なった点が挙げられる。実際に約3割の事業者が増収となり、特に東京や大阪、京都などの都市部や著名観光地では需給逼迫を背景に客室単価の上昇が続いた。地方においても、自然や文化体験を求める訪日客の取り込みや、素泊まりやオールインクルーシブといった商品設計の見直しにより、一定の需要と単価向上がみられた。

 一方で、約1割の企業は減収となり、地域間・施設間の格差が拡大している。交通アクセスに課題を抱える地方施設ではインバウンドの取り込みが限定的で、コスト増を価格転嫁できず収益が伸び悩んだ。慢性的な人手不足や大手チェーンの新規開業も競争環境を厳しくしている。

 財務面では、債務超過企業の割合が28.6%と依然高水準にあり、コロナ禍での借入依存体質からの脱却が進んでいない。大手では設備投資やリニューアルが進む一方、中小事業者では資金余力の乏しさから老朽化対応が遅れ、競争力低下の懸念が強まっている。市場拡大の裏側で、規模や立地による二極化が一層鮮明となっている。

 2026年度も訪日需要は高水準を維持する見込みで、市場の拡大基調は続くとみられる。ただし、原油価格上昇による航空運賃の高騰や国際情勢の不確実性は下振れリスクとして残る。国内旅行では物価上昇を背景に選別消費が進む見通しであり、価格だけでなく体験価値やターゲット設定が収益力を左右する要素となる。

 TDBでは、今後は需要拡大が必ずしも収益増加に直結しない局面に入ると指摘。価格戦略や投資判断、オペレーション効率といった経営力の差がより明確になるとみられる。人手不足を前提とした省人化投資やサービス設計とともに、持続的な財務基盤の構築が、宿泊事業者にとって喫緊の課題となる。