JATA、オーストラリア送客拡大に本腰 団体・教育旅行も視野に
 (左から)JATA秋山秀之氏、オーストラリア政府観光局デレック・ベインズ氏
(左から)JATA秋山秀之氏、オーストラリア政府観光局デレック・ベインズ氏
日本旅行業協会(JATA)は10月30日、オーストラリア政府観光局や州観光局協力のもと2025年度のオーストラリア向けアウトバウンド拡大施策を発表した。サステナブルな観光をテーマに、環境保全への取り組みを通じた旅行の付加価値向上を目指すもので、個人・団体双方の施策を用意した。訪日・訪豪の需給バランスの是正を視野に、社会的意義を備えた旅の創出で海外旅行市場の回復を後押しする考えだ。
訪日・訪豪の需給格差の是正目指す
JATAアウトバウンド促進協議会(JOTC)オセアニア・大洋州部会の秋山部会長は同日の会見で、「オーストラリアと日本の観光交流は依然としてアンバランスな状態にある」と指摘した。オーストラリアから日本への訪日客が年間約90万人を超える一方、日本からの訪豪者数は約40万人にとどまり、倍以上の差が生じているという。航空運賃の高止まりや円安の影響もあるが、「社会的価値のある旅の提案を通じて送客を増やすことが、JATAとしての重要課題」と強調した。
今回の施策は、個人向けと団体向けの2本柱で構成される。個人旅行では、オーストラリア国内でサステナブルな取り組みを行う施設やエリアを含むツアーを造成。対象商品には共通ロゴマークを掲示し、旅行代金の一部を現地の環境保全団体に寄付する仕組みを導入する。販売期間は2025年11月1日から2026年3月31日まで。グレートバリアリーフ(ケアンズ)、ブルーマウンテンズ(シドニー)、ロットネスト島(パース)の3エリアを対象に展開し、JTB、日本旅行、阪急交通社、HIS、ANA X、近畿日本ツーリストブループラネット、ジャルパック、読売旅行の各社が参画する。
団体向けでは、2026年度以降の実施を見据え、企業・学校向けの社会貢献型旅行の提案を支援する。特に環境配慮型MICEや教育旅行を対象に、オーストラリアの排出管理削減基金を通じて発行されるカーボンクレジット(ACCU)を活用し、森林再生プロジェクトや植樹活動を取り入れた「カーボンオフセットツアー」の実現を目指す。また、Green KeyやGreen Globeなど世界的な認証を受けた宿泊・観光施設の情報を共有し、共通基準(スタンダード)の確立を目指す。
会見では、オーストラリア政府観光局日本・韓国地区局長のデレック・ベインズ氏も登壇。自局の調査で「旅行者の70%が持続可能な観光を重視し、55%が追加費用の支払いもいとわない」と紹介したうえで、サステナブル以外の魅力にも言及した。「オーストラリアは世界遺産を多数有する大自然の国であり、カフェ文化や食の多様性も魅力。安全で時差が少なく、為替面でも“グッドバリュー”なデスティネーション」と強調した。直近では、「特に教育旅行やインセンティブなど団体需要の伸びが顕著」との傾向も示した。
企業・学校から広がるサステナブルツアー需要
団体旅行の分野では、秋山部会長は「企業や学校からは環境配慮や社会貢献を重視した旅行ニーズが急増している。オーストラリアはSDGs先進国であり、需要と供給の両面で好相性」と述べ、教育旅行部会など他部会との連携も視野に入れる考えを示した。修学旅行を含む学生団体旅行についても「探求型プログラムなど社会的テーマがなければ成立しにくい時代。持続可能性をテーマにした海外学習旅行は今後の主流になる」と語った。
JATA海外旅行推進部の大久保英雄副部長は「2025年度内に提案書を整え、2026年以降の実施につなげたい。まずは30団体程度の新規受注を目指す」と目標を示した。さらに、今回の活動を部会限定にとどめず、JATA全体の取組へと広げる方針も明らかにし、「まずはオセアニア・大洋州部会の参加各社でスタートし、今後海外旅行推進委員会などを通じて会員各社にも参加を募りたい」と説明した。