エア・カンボジア、日本初就航で東南アジア新動線を開く-東京支店長が語る「福州経由」と日本市場戦略
2025年10月26日、エア・カンボジアが成田〜福州〜プノンペン線を開設する。週3便(水・金・日)の運航で、日本とカンボジアを約8時間で結ぶ唯一の直通ルートだ。初年度の搭乗率目標は85%。日本市場初進出となる同社は、ASEAN航空ネットワークの再構築を背景に、日本市場へ参入する動きが加速している。
再出発した"フラッグキャリア"
旧ロイヤル・エア・カンボッジおよびカンボジア・アンコール航空として1956年に設立された同社は、2025年1月に「エア・カンボジア」へと改称。現在カンボジア政府、ベトナム航空、中国の河南航空港投資グループの三者による合弁体制だ。取締役会長はカンボジア民間航空大臣を兼任し、"国家的フラッグキャリア"としての性格を強めている。
同社はカンボジア唯一のIOSA(運航安全監査)認証航空会社であり、スカイトラックスの三つ星評価を獲得。プノンペン新テチョ空港(9月開港)を拠点に、ASEAN・中国・インド市場を結ぶ広域ネットワークを構築中だ。
日本市場の戦略的位置
日本初就航により取材に応じたエア・カンボジア東京支店長ケビン・リー氏は、「日本はカンボジアにとって投資・観光ともにトップ5に入る重要な国。観光・ビジネス・親族訪問がそれぞれ約3分の1ずつを占めると見込んでいる」と話す。
2019年の時点で、日本からカンボジアへの渡航者は約21万人、在日カンボジア人は3万人超。両国の往来はコロナ期を経ても堅調で、イオンやトヨタなど日系企業の進出も盛んだ。ANAの撤退で直行便が途絶えていた中、同路線は唯一の直通手段として再接続の役割を担う。
運航スケジュール(2025/10/26–2026/3/28)
便名 | 区間 | 運航日 | 成田 出発 | 福州 到着 | 福州 出発 | プノンペン 到着 |
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K6 593 | 成田→福州→プノンペン | 水・金・日 | 20:00 | 23:30 | 00:30 +1 | 02:55 +1 |
便名 | 区間 | 運航日 | プノンペン 出発 | 福州 到着 | 福州 出発 | 成田 到着 |
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K6 592 | プノンペン→福州→成田 | 水・金・日 | 09:40 | 14:00 | 14:50 | 19:00 |
※すべて現地時刻/福州 -1時間、プノンペン -2時間。
また、今回のルートで特徴的なのが「福州経由」の設定。リー氏はこれについて、「福建省出身者の在日人口は多く、帰省需要が安定的に見込める」と説明した。
加えて、保有機材では日本への直行便就航が難しいとの事情もあるようで、2029年にはボーイング737MAXの導入を予定し、直行便化を視野に入れている。

販売拡大へリー氏が優位性を強調したのが価格面だ。成田発での「片道3万円・往復6万円」という競争力のある運賃設定により、短期滞在・周遊需要の拡大が期待できる。
アビアレップスが日本総代理店(GSA)として販売支援を担い、GDS(インフィニ、セーバー、アマデウス等)での予約も可能。旅行会社向けセミナーを10月3日に実施し、主要エージェントとの協議も進む。リー氏は「HISなどとパッケージ造成を検討中」と述べ、BtoBセールス強化を明言した。
大阪・福岡、そして東アジアネットワークへ
同社は2026年3月に大阪〜福州〜プノンペン線の開設を予定しており、福岡も将来候補に挙げる。2032年までに33機体制を構築し、北東アジアから中東・インドまでを結ぶ「広域ASEANキャリア」への成長を描く。
また、今回の成田線では日本語を話せるスタッフを配置しているというが、今後「大阪就航のタイミングには日本語を母語とするスタッフを採用する予定」とリー氏。
プノンペンの新空港開港、日本直行ルートの再開と今後の拡大方針。同社は、観光とビジネスの両面で日本を含めた広域ネットワークの構築を目指す。