星野リゾートが考える山のホテルとは?「LUCY尾瀬鳩待」宿泊レポート

  • 2025年9月22日
LUCY尾瀬鳩待の外には「鳩待」にちなんだ鳩のオブジェ

 星野リゾートは9月1日、尾瀬国立公園の入り口にある鳩待峠に「LUCY尾瀬鳩待 by 星野リゾート」を開業した。同社が立ち上げた、山岳観光に特化した新ブランド「LUCY」の1軒目で、登山やハイキングに不慣れな層をメインターゲットに設定。滞在における負担の軽減により、山岳観光のハードルを下げたい考えだ。今回は同ホテルに滞在し、星野リゾートの「山ホテル」を体験してきた。

星野リゾート初の「山岳観光」特化型ホテル

四季折々でさまざまな表情を見せる尾瀬ヶ原

 歌曲『夏の思い出』で知られる「はるかな尾瀬」こと尾瀬国立公園。5月から6月上旬に見ごろを迎えるミズバショウに、夏の高山植物、9月中旬以降の紅葉が人気の山岳観光地だ。

 以前は団体旅行も多く、1996年には年間約64.7万人が訪れた。しかし、その後徐々に減少していき、2019年は24万7700人となった。新型コロナの影響を受け、2020年は10万6922人にまで落ち込んだが、その後回復。2024年は15万5630人が訪問した。

 尾瀬国立公園の入山で最も多いのが尾瀬ヶ原方面の鳩待口からのアクセスで、約6割が利用する。そんな絶好のアクセス場所である鳩待峠(群馬県利根郡片品村)に、滞在環境の快適性を高めたホテルが開業した。それが全25室の「LUCY尾瀬鳩待 by 星野リゾート」だ。

鳩待峠の尾瀬国立公園への入口はホテルのすぐ目の前。人が少ない早朝から尾瀬を楽しむのにぴったりだ
LUCY尾瀬鳩待の外観。ホテルの左側のスペースにはテラス席もある

 星野リゾートは同じ群馬県で山の魅力に触れあえるスポット「谷川岳ヨッホ by 星野リゾート」やパウダースノーが楽しめる「Mt.T by 星野リゾート」などを運営し、他施設でも体験プログラムなどを通し自然観光に取り組んできたが、山岳観光に特化した宿泊施設の運営は今回が初めて。

 LUCY尾瀬鳩待のある場所は40年以上前から山小屋「鳩待山荘」が建っていたが、老朽化に伴い立て直しが必要となった。その際、オーナーである東京電力のグループ会社・東京パワーテクノロジーからの声掛けがあり、星野リゾートが運営を担当することになった。

総支配人の福井ゆう子氏

 総支配人を務める福井ゆう子氏は本紙のインタビューに応え、「広い意味での観光市場を見ると、一部の都市や観光地に需要が集中している状態。自然観光、なかでも山岳観光に目を向けてほしい」と訴えた。同氏によれば、日本は古くから登山を楽しんできており「山をめざす旅行ニーズは今でもあり、可能性もたくさんあるのでは、という考えがもともとあった」という。

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