バルト三国「Baltic Roadshow 2025」メディア効果により日本人客増、今後はFITの回復を図る

このほど東京・大阪でエストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国セミナーとワークショップ「Baltic Roadshow 2025」が開催された。9回目となる今回、東京では旅行会社・メディア関係者約65人、大阪では約45人が参加と2日間で100人以上が参加。バルト3国からは各観光局代表を含めた12社・団体が来日。プレゼンテーションと旅行会社との商談会を行った。
■ 市場は緩やかに回復、今後はFITに向けアピール
エストニア・ラトビア・リトアニア政府観光局日本代表の能登重好氏によると、コロナ禍以降の日本人客の回復状況は3国によってばらつきはあるものの、全体的に緩やかな復調傾向だという。2024年の日本人客数はエストニアが対前年比39.6%増の約9000人、ラトビアが同36%増の約4700人、リトアニアは対前年比ほぼ横ばいの約5300人。

しかし2025年の1~4月期は3国とも好調で、特にエストニアの4月は対前年同月比200%と倍増、ラトビアも約45%増。リトアニアについてはまだ数値は出ていないが、「日本市場はバルト3国の周遊ツアーがほとんどなので、リトアニアも増加がうかがえる」と能登氏。好調の要因としては、2024年末にテレビの旅行番組で1カ月以上の長期にわたってバルト3国特集が組まれたことで主要ターゲットのシニア層に的確にアプローチできたことが大きいとみている。
「旅行会社によると、夏の販売状況も好調と聞いている」と能登氏は期待をのぞかせる。今後はバルト3国全体としてはFITの回復・増加が課題。市場をけん引する若い女性層の獲得を図り、市場認知度の拡散を狙っていきたい考えだ。素材としては従来の世界遺産都市のほか、グルメ、サウナ、田園旅行などの露出にも力を入れていく。
■ エストニアが好調、3国以外とのコンビネーションも
3国のなかで最も復調が早いのがエストニアで、他の2国のほぼ倍を記録している。この要因の一つとしては、ヘルシンキ(フィンランド)からの訪問・周遊旅行が挙げられる。ヘルシンキとエストニアのタリン間はフェリーで2時間ほどであるため、フィンランドからの日帰り旅行客のほか、2カ国周遊旅行も増えているという。

能登氏はこうした事情を背景に、エストニアの今後の方策として、北欧デザインや歴史文化を軸とした両国のコンビネーションツアーを提案。エストニア政府観光局トレードマーケティングプロジェクトマネージャーのアグニア・ナスト氏は「エストニアは安全な国。歴史や食文化、現地の人々との触れ合いなど、質の高い素材をアピールしていきたい」と語る。
ラトビアについては、コロナ禍以前から取り上げられていたハンディクラフトや歌と踊りの祭典(2028年)のほか、田園ツーリズムやミシュラン掲載のレストランなどのガストロノミー、健康といったテーマなど。また、「ヘルスツーリズムやMICEの誘致も視野に入れている」とラトビア政府観光局シニア・プロジェクト・マネージャーのクリスティン・ミッツカーネ氏は話す。
リトアニアは首都ビリニュスや杉原千畝、2026年に生誕150年を迎える国民的芸術家チュルリョーニスで知られるカウナス、ケルナヴェやトラカイといった小さな町や村を訪れる周遊旅行を提案。「森やビーチまでバラエティ豊かな周遊が楽しめる」とリトアニア政府観光局B2Bプロジェクトマネージャーのエルゼ・ヴィシュニアウスカイ・ミッケ氏。「歴史的なゆかりも深いポーランドとのコンビネーションの可能性も探りたい」と能登氏は話した。