JTB、2年連続で売上高1兆円超えも純利益は大幅減 攻めの投資で次世代成長を模索

  • 2025年5月24日
山北栄二郎氏

 JTBは23日、2024年度(2024年4月〜2025年3月)の連結決算を発表した。売上高は1兆733億円と2年連続で1兆円を突破したが、営業利益は149億円と前年の303億円から半減。当期純利益も86億円と、前年の221億円から大幅に減少した。一方で、営業利益は当初計画の116億円を大きく上回り成果を示した。

 代表取締役社長の山北栄二郎氏は同日の会見で、「2024年度はグローバルにおける事業が大きく成長した1年だった」と振り返っており、海外旅行、訪日旅行、第三国間旅行の取り扱い拡大が進んだ。欧米、アジア太平洋を中心とするグローバル市場での事業展開が奏功し、第三国間旅行の売上総利益は前年比53億円増の233億円と過去最高を記録。前年比では海外旅行も147%、訪日旅行も119%と大幅に増収し、旅行外事業とともに利益を下支えした。

 旅行外領域では、宿泊施設向けの商事・決済サービスが伸長し、クレジット決済や宿泊オンライン決済が過去最高額を記録した。また、企業イベントや地域支援業務などMICE関連の売上も拡大し、旅行外ビジネス全体での収益比率は19年度18%から26%に上昇。旅行に依存しない収益構造の構築を進めている。

 一方で、国内旅行の売上総利益は927億円と前年から微減し、固定費・人件費・販売費の増加により、全体の営業利益は前年から154億円の減益となった。これについてCFOの武田淳氏は、コロナ禍からの脱却に伴い、DX推進や人材採用など「攻めの投資」を強化したことを説明。特に、旅行需要の減少に伴い削減していた人件費の回復が費用増の主因であるとした。

 中長期的には、構造改革による固定費削減が効果を見せており、2019年度比で286億円の削減を達成。自己資本比率も21.1%まで回復し、財務基盤の強化が進んでいる。25年度の業績見通しでは、売上高1兆2980億円、営業利益120億円を目標とし、さらなる事業構造改革と人材投資の継続を掲げている。

 会見では、グローバル領域の成長戦略も示され、欧州・カナダを中心とした「シートインコーチ事業」の拡大、世界規模のDMCの整備、ホスピタリティ事業の強化を柱とした戦略が語られた。シートインコーチ事業では、買収企業との連携により「欧州とカナダで利用者ナンバーワンを目指す」。その上で、同事業を世界展開する意向を示した。

 為替や地政学的リスクが旅行業界全体に影響を及ぼす中、JTBは旅行事業と非旅行事業のバランスを取りながら、グローバルな収益基盤の構築を加速している。25年度は「未来から現在を創る~ビジネスモデル変革の加速~」とのテーマを掲げており、山北氏は「急速に変化する市場環境や多様化するニーズに対応して、革新的なサービスの創出と提供に努める。また、サステナビリティの取り組み強化、社会的な責任を果たしながら、企業価値の向上を目指す」と示した。