TCSA、高齢者の雇用推進で調査事業-赤字で訪日検定中止 新eラーニング講座開設へ

日本添乗サービス協会(TCSA)は2025年度、シニア添乗員の活躍の場作りに向けた調査研究事業「高齢者雇用推進事業」を実施する。高齢化する添乗員志望者の採用が増加する背景を受けたもので、3月25日、第39回通常総会のプレスインタビューで明らかにした。
高齢・障害・求職者雇用支援機構の「産業別高齢者雇用推進事業」を受託して実施するもので、2025年4月から2027年の3月まで、2年間にわたって取り組む。なお、TCSAが同事業を受託するのは今回3回目。
今後は推進委員会と作業部会を立ち上げ、添乗員派遣事業者や、キャリアチェンジをして添乗員業界に加わった高齢者に対するインタビュー調査を実施。調査結果に基づきTCSAの会員企業や現場の添乗員へのアンケート調査、業界の魅力啓発のためのツールの作成などに取り組む。2026年度以降は会員各社が活用できるガイドブックの作成、セミナー開催などの普及啓発事業を行う予定。

TCSA会長の金澤悟氏は「高齢者が第2の職場として添乗員を選ぶケースが、最近のインバウンドブームもあって出てきている」と現状を説明。旅行業経験者のみならず、海外経験のある他業界の出身者などさまざまな高齢者が添乗員に応募してきているといい、「コロナ以降の厳しい状況で若者が戻らないなか、人生経験のある高齢者を活用できないか」と意義を語った。
同氏によれば、質の高い高齢者を再雇用し、添乗員として現場で活躍する事例がある一方、スマートフォンやiPadなど業務で活用すべきデジタルツールが不得手な高齢者による問題や、添乗業務未経験の高齢者向けの研修の難しさ、年齢による体力的な問題などもあり、高齢者再雇用の課題は多い。TCSAでは事業を通じて高齢者でも安心して添乗業務ができる環境づくりをめざす方針だ。
その一方で、若手への添乗業界の魅力の訴求は継続する計画で、SNSの活用も視野に入れる。ただし、金澤氏はコロナ禍で他業界に若い人材が流出したことに加え「添乗員が戻ってきて若手を育成しようとしても、添乗員がいらない旅行のほうが多いので訓練の場を十分に提供できない」との課題があると解説。海外旅行が緩やかに回復するなか、添乗員付きの高付加価値旅行は依然として動きが遅いとしたうえで「今後は多少動いていくはず。前向きにやっていきたい」と話した。
9年連続赤字で事業を精査、新たなeラーニング立ち上げに向け準備
プレスインタビューでは、TCSAの財政上の理由から既存事業の精査を実施したことも明かされた。TCSAは9年連続での赤字計上となっており、経費がかかり参加者が少ない研修事業については2025年度は実施を見送る。
中止するのは添乗員能力資格認定試験とインバウンド検定の2種類。このうち金澤氏はインバウンド検定について「研修に手間や費用がかかり、反省点が大いにある。予算の制約のなかでの選択」と説明した。
一方で2026年度をめどに「添乗スキルアップeラーニング講座(仮)」を実施する方針も示された。TCSAでは日本旅行業教会(JATA)と共同で「添乗業務レベルアップ研修」を実施しているが、好評を博していることを受けたもの。ニーズの高さから事業化をめざし、作業部会で検討していく考え。中止する添乗員能力資格認定試験とインバウンド検定の内容も盛り込む予定だ。
さらにTCSAは2025年度から年会費を一律5万円値上げする。これにより、年会費は添乗員派遣売上1億円未満が25万円、1億円以上3億円未満が30万円、3億円以上または資本金1億円以上が35万円となった。なお、TCSAではコロナ禍の特例措置として、2020年度から23年度まで年会費を大幅に削減していた。