オランダ5美術館、日本市場限定でスタンプラリー実施-日本の回復に期待が高まる

  • 2024年9月23日

 駐日オランダ王国大使館は9月19日、オランダからのセールスミッションの来日に伴い、大使館でセミナーとレセプションを開催した。セミナーでは来日したオランダの美術館5館がプレゼンテーションを実施。5館共同の取組として、来年から日本市場のみを対象にしたスタンプラリーの実施が発表された。

来日したセールスミッション

 来日したのは「アムステルダム国立美術館」「エッシャー美術館」「クレラー・ミュラー美術館」「マウリッツハウス王立絵画ギャラリー」「ロイヤルデルフトミュージアム」の5館。スタンプラリーでは5館のスタンプをすべて集めた人にプレゼントを贈呈する。

 5館は昨年もセールスミッションで来日しており、その際旅行会社とのミーティングで出たアイデアなどをもとにスタンプラリーの実施を決定したという。レセプションで登壇したアムステルダム国立美術館セールスマネージャーのニック・ポスト氏は「皆様と一緒に作ったことにとても意義がある」としたうえで「未来に向けて(旅行会社と)これからも関係を深め、協力しながら多くの日本人にオランダに訪れてもらうことを祈っている」と話した。

 スタンプラリーは来年1月から開始し、台紙は各美術館のインフォメーションデスクで配布。スタンプ帳は5000部用意しており、反応を見て増刷を検討する。

スタンプ帳は持ち歩きしやすいパスポートサイズ

各美術館が見どころを紹介、リノベーションや日本巡回展も

 セミナーでは5館がプレゼンテーションを実施し、美術館の特色や日本人訪問者数の動向、今後の展覧会になどについて紹介した。共通項としては、各館とも日本語のオーディオガイドやアプリを用意。開館前後での美術館の貸切もしくは専用ミーティングスペース、レストラン・カフェなどの料飲施設が貸切できるため、旅行商品の独自性につながるユニークベニューとしての活用も可能だという。

クレラー・ミュラー美術館のバス・ハーメリンク氏

 参加者の注目を集めたのが、アムステルダムから1時間強のデ・ホーヘ・フェルウェ国立公園内にあるクレラー・ミュラー美術館。2023年の入館者数のうち約6%にあたる1万8000人が日本人で、団体客がメインだ。セミナーではセールス&トレードマネージャーのバス・ハーメリンク氏が、2026年初頭からの大規模な拡張工事を紹介。安藤忠雄設計による新たな展示棟が新設される。

 それに伴い、同美術館が所蔵する世界2位という270点のゴッホコレクションの一部などが、2025年から27年にかけて「大ゴッホ展」として来日する。巡回展は神戸・福島・東京の3都市で2期にわたって開催され、今年9月からの第1期は『夜のカフェテラス』『自画像』、第2期は『アルルの跳ね橋』などが見学できる。巡回展中は博物館に絵画がないため注意が必要だという。

マウリッツハウス王立絵画ギャラリーのシモーネ・ホレン氏

 ハーグにあるマウリッツハウス王立絵画ギャラリーからは、国際セールスマネージャーのシモーネ・ホレン氏が登壇し、フェルメールの『真珠の首飾りの少女』などをアピール。日本人は2019年は海外からの訪問者数のトップで、コロナで減少するも2024年の第1・第2四半期では3位まで回復しているという。マウリッツハウス王立絵画ギャラリーでは現在パウルス・ポッテルの『牡牛』を修復中。修復作業は一般公開されており、ホレン氏は「修復作業を見れる機会は特別な体験」とアピールした。


 マウリッツハウスから徒歩5分内というエッシャー美術館からは館長のマルセル・ウェステルディープ氏が登壇した。同美術館はエマ皇后が住んだ「旧冬の宮殿」を改装して2002年にオープンした美術館で、だまし絵で有名なM.C.エッシャーの作品を展示している。ウェステルディープ氏は日本人の傾向として、2016年から19年の間に82%増であることに触れ、24年も「日本人はゆっくり増えてきて戻ってきており、大変うれしい」と喜びを語った。

 デルフトのロイヤルデルフトミュージアムからはセールス&マーケティングマネージャーのディディ・ファン・ダーレン=デ・フィッサー氏が登壇。ロイヤルデルフトの作品見学や、ミュージアムでの絵付け体験などを紹介した。また、デルフトはフェルメールが暮らした街としても知られており、合わせての観光もおすすめだという。

 同氏によれば日本人はコロナ以前は2位を占める市場だったが、コロナで減少。とはいえ23年から回復傾向にあり、24年は4位まで戻ったといい「25年には2位、3位に戻ることを期待している」と話した。

アムステルダム国立美術館セールスマネージャーのニック・ポスト氏

 最後に登壇したのはアムステルダム国立美術館のポスト氏。同博物館はフェルメールの『牛乳を注ぐ女』をはじめ、フェルメール4作品、レンブラント24作品など計8000作品を所蔵している。日本人については全体の6割を占める海外客のうち10位以内を占めており「日本は重要な国であり、戻ってきてくれて嬉しい」と話した。また、現在同館ではレンブラントの『夜警』の修復作業をおこなっており、常設展で修復作業が見学できる点もアピールした。

 このほか、レセプションではオランダ王国大使館特命全権大使のヒルス・ベスホー・プルッフ氏が挨拶。旅行会社との協力をアピールするとともに、2025年が日・オランダ交流425周年であることに触れ、「2025年の大阪・関西万博の成功がオランダへの送客につながれば」と期待を示した。