JNTOらが能登巡るモニターツアーで現地視察、「高単価・高付加価値」な観光で取り組む復興支援

  • 2024年9月10日

 日本政府観光局(JNTO)や石川県の職員らはこのほど、建設業やホテル運営などを手掛ける高田産業グループの金沢アドベンチャーズが実施した能登地域を巡るバスツアー「行かないと!能登」のモニターツアーに参加。元日に発生した能登半島地震から8カ月が経過した現在の状況などを視察した。

輪島市黒島地区で住民から案内を受ける参加者ら

 ツアーに参加した石川県文化観光スポーツ部次長兼国際観光課長の北口義一氏によると、被災地では今なお仮説住宅の建設が続いており、全ての完成は年内いっぱい掛かる見込み。国際観光課からも常に現地へ人を派遣するなど、復興の道のりは長い。

 観光事業者も多くの被害を受けており、オーバーツーリズムの懸念から大勢の観光客を迎え入れられる状況ではないものの、観光による復興を望む声もある。県としても「アクセルとブレーキ両方に足を置いている状態(北口氏)」だが、県の観光公式サイトでは、能登地域の各役場から聞き取った情報を基に「今行ける能登」として、施設などを公開、発信している。

 ツアーに組み込まれている輪島のレストラン「mebuki ー芽吹-」の池端隼也シェフも観光による復興を望む一人。同店は、震災の炊き出しをきっかけに集まった被災した飲食店のメンバーを中心に出来たもの。池端氏は「自然は生きていて、美味しいものは沢山ある」と語っており、同氏の相談からこのバスツアーも企画されたという。

「mebuki ー芽吹-」池端隼也氏

 金沢アドベンチャーズ代表の髙田恒平氏によると、企画造成の際にポイントとなったのは高単価・高付加価値化。ツアーが復興の妨げにならない、且つ地域にしっかりとお金を落とすために、少数でも高付加価値で高単価な商品に。「mebuki ー芽吹-」では、能登の食材を多数使用した特別コースが提供される。

 同ツアーについては、内容やターゲットについて地域の方と相談の上進めたと話した髙田氏。地域と伴走する姿勢が重要と述べており、「現地に還元される仕組みを作ることも旅行会社の役割」と強調した。

 また、ツアーに参加したJNTO市場横断プロモーション部次長の門脇啓太氏も、「(大勢の観光客が押し寄せることで)疲弊してしまう観光地は今まで沢山あった」と、高単価・高付加価値化を推進するとともに、同地域については今後長く滞在してもらうことが重要と指摘。そのために宿泊含めた観光施設の充足が課題とした。

 なお、同バスツアーは17日より一般向けに開始する。レストランの他には、実店舗や畑に大きな被害を受けながらも製造・営業を続ける「ハイディーワイナリー」や、「黒島地区」などに立ち寄る。黒島地区は、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された海沿いの街。多くの地震被害の跡が残る同エリアを、住民の案内とともに見学する。