【コラム】飛ぶのがトクか?泊まるのがトクか? コロナ後の旅の優先順位

 航空会社とホテルのマイルやポイント、ステータスに関して、海外出張の多いお客様や観光産業外の知人と話をする機会が有り、筆者の所見も交えてここに書かせて頂きます。

 コロナ前までは航空会社(日本人の場合JLやNH中心)のマイルを貯める、ステータスを上げる・維持することを重視されていた人が多くいたのですが(筆者もそうです)、最近はマリオットやIHG等ホテルのポイント・ステータスを重視する人が増えた印象が有ります。

 理由としては、コロナ以降国際線の減便により会員となっている航空会社(アライアンス含め)では効率的なスケジュールが組めない、無償航空券やアップグレードに要するマイル数が増えた・取れない、最上級会員資格(例えばダイヤモンド)維持のハードルが高い、提供されるサービスが最上級ラウンジ利用や搭乗順等限定的等々、色々な理由があるようです。

 中には長年最上級を維持してきたのに、コロナ後の減便期間にダウングレードされたと言う恨みも有りました。これはホテルでも同じような事はあったはずですが、なぜかマイラーからのみ聞かれた理由です…。(因みに筆者もその一人です)

 一方、ホテルは貯めたポイントが比較的使いやすい(無償宿泊でも有償と同じ、或いは殆ど変わらず予約が取れる、更に無償でも宿泊実績には加算される等)、特定のクレジットカードの利用でポイント獲得・上級ステータス獲得が比較的容易、上級会員に提供されるサービスが充実している(部屋のアップグレード、朝食無料、アーリー・レートチェックイン・アウト、ラウンジアクセス等々)、分かりやすく特別扱いしてくれる等々の理由をよく聞きます。

 筆者もホテルポイント・ステータス重視に転向したのですが、一番大きな理由は提供されるサービスの「時間」と「費用換算価値」です。

 航空会社の上級会員はラウンジ利用(長くて数時間)と優先搭乗(長くて数十分)の合計時間がサービスの提供される主な時間となり、これを費用換算した場合(最上級ラウンジを前提としても)食事と飲み物1回分程度かと思います。その他、追加手荷物の無料預け入れ、優先的な座席選択、アップグレードの優先権もありますが、毎回利用される方はそこまで多くないと思われます。

 一方、ホテルの上級会員に提供されるサービスの時間としては、アップグレードされれば部屋に居る時間全て、アーリー・レイトチェックイン・アウトで有れば最大10時間以上恩恵を受けることができます。費用換算では朝食やラウンジでの食事や飲み物代、アーリー・レイトチェックイン・アウトはケースによってはそれぞれ1泊分の宿泊代、この2点だけでも相当な価値となります。

 JL、NHに関してはグローバルやスーパーフライヤーという(一定の条件を満たす限り)生涯有効な資格があり、これを既に得ていれば普通のラウンジは使えますし、搭乗順は前から2番目というサービスは享受できます(これは大変ありがたい)。

 よって、筆者のお勧めとしては、航空会社で生涯有効なステータスを得ているのであれば、ホテルのポイント・ステータスを優先し、心地よくかつ経済的な出張とホテルステイを楽しむことです。

 インターネット上には効率よくマイルやポイントを貯め、上級ステータスを獲得する手法(提携クレジットの利用や裏技まで)が多数公開されていますが、よっぽどお好きで時間のある方以外はなかなか自身での情報収集、それに沿ったスケジュールやホテル選びをするのは難しいかと思います。

 航空券やホテルの仕入れによる差がほとんど出せない今、マイルやポイントを効率よく貯め・使う、早期上級資格を獲得し維持することを勘案したサービスを提供する旅行会社が有れば、使いたい方も一定数いるのでは無いでしょうか?

 実際、米国やインドには「プライベートエージェント」が今も一定数存在し、上記を含めたサービスを提供し、一部のお客様からは重宝されているとの話も聞き及びます。

 今後も必要とされ、生き残る旅行会社の一つの類型なのでは無いかと思われ、ここには大手やOTAは少なくとも当面は進出しなさそうなところも妙味かと思うのですがいかがでしょう。

岡田直樹
㈱エフネスを1990年に創業、2023年に一部の事業を上場会社へ譲渡、現在は同社の創業者・オーナーとして後方支援の傍ら企業・団体の役員、顧問を務める。
㈱アイユーアール・コーポレーション代表取締役/インターナショナルホスピタリティコネクションズ㈱取締役会長/一般社団法人 新観光創造連合会 (TIFS)代表理事・会長
その他複数の企業・団体に顧問として関与​