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【学生記者】長年SDGsに着目しているJTBが提供する「企業版SDGs理解促進研修プログラム」とは?-玉川大学観光学部共同企画

  • 2024年9月6日
コロナ禍で多くの人材が流出した観光業界。多くの企業が人材確保に努める今、未来を担う学生も重要な人材となることは間違いない。では、その多くが観光業界への就職を志す観光学部の学生らはどのようなことに興味関心を示し、何を思うのか。今回トラベルビジョンでは玉川大学観光学部家長ゼミナールと共同企画を実施。学生自らが取材テーマや取材先の選定、記事化までを行った。


 近年、多くの企業がSDGsに対しての取り組みを強化しているが、電通の第6回「SDGsに関する生活者調査」によると、SDGsの認知度は9割を超えるものの、その具体的な内容まで含めて知っている人は4割に留まった。そこで、私たち玉川大学観光学部サステナブルツーリズムゼミは、企業側のSDGs理解を深める取り組みに着目し、ツーリズム業界で初めて「企業版SDGs理解促進研修プログラム」を開発・導入したJTBに取材を実施。教育第一事業部の原口洋介さん、浅村有紀さんにお話しを伺った。取材を通し、私たち学生の視点から、今後の企業に求めるものや私たちが成し遂げなければいけないことを分析する。

(左から)浅村有紀さん、原口洋介さん

 私たちが興味を持った「企業版SDGs理解促進研修プログラム」は、JTBと国連支援SDGs促進協会が共同で推進しているSDGsプロジェクトの一環として、2024年4月に開発された新たな企業向けプログラムである。プログラムには、新入社員や若手社員を対象とした従業員の健康を経営的視点から考え戦略的に実施する「健康経営」の概要を理解するためのESG実践基礎研修をはじめ、中間管理職向けのアドバンスコースや、上級管理者向けのエキスパートコースといった企業の立場としてのSGDsをより深く学ぶコースも用意されている。

 開発にあたって担当者は専門書籍などから知識を深める中で「SDGsに取り組むことが企業に大きな社会的評価をもたらすこと」、「社員1人1人がESGの実践を意識して活動していくことが、企業のサステナブルな経営に繋がり、ひいては社員1人1人の安定した生活に繋がっていくこと」を再認識したという。一方で、現状は企業においてSDGsや健康経営に関する学習の機会は少ない、また企業間の学習機会の格差も大きいとのことから開発に至ったそうだ。

 企業は本プログラムを活用することで、企業価値の向上や差別化に繋げることができる。一方で、「ガバナンスとしてのESG実践基礎研修や、健康経営の理解といった非財務価値の向上を目指す本プログラムは、対外的には研修の成果が指標化しにくい」という懸念もあるが、基礎研修を修了した社員には修了証が、それ以上のコースには認定証が国連支援SDGs促進協会より発行されることで、評価が可視化される。

 また、「企業版SDGs理解促進研修プログラム」という名前だけを聞くと、堅そうな印象を持ってしまいがちだが、例えば、新入社員や若手社員を対象としたESG実践基礎研修では、カードゲームを活用することで、楽しみながら取り組むことができる。このことは、チームビルディングと良質なコミュニケーションスキル醸成に高い効果をもたらすほか、ゲームを通して目標の未達成や失敗が自分の経験として認知されやすく、実際にプログラムに参加した社員の健康経営に対する意識の向上が見られたという。

 JTBではこのようなプログラムを通して、企業側のSDGsに関する理解の浸透を進めていく。同社をはじめ、現在多くの企業や学校でSDGsに関する取り組みが幅広く行われている。そのおかげか日本でもSDGsだけでなく、サステナブルへの理解が深まり始めている。しかし、他国では日本以上にその考えや活動が浸透しているのが現実だ。

 観光においては、インバウンドを中心に賑わいを取り戻す一方で、オーバーツーリズムの課題に直面しており、持続可能性の観点は不可欠。JTBでは、地域パートナーと協力しながら、今後「交流人口が増加するほど環境の課題が解決し、むしろ発展を促すようなツーリズムの在り方への変革」を目指していく。

取材後記

 「企業版SDGs理解促進研修プログラム」は始まったばかりだが、取材を通し今後注目されるプログラムになると確信した。それと同時に、これまで観光学部の学生としてSDGsや環境負荷を考慮した旅行に関する学びを深めてきたが、学んだ知識を世の中全体に広めることの難しさも実感した。

 企業の発信を待つだけでなく、学生自身も社会の一員として、自ら行動し意識を変えていく必要がある。私たち学生もCSR(企業の社会的責任)の取り組みに着目していくことで、今後のツーリズム業界全体の意識改革と持続可能な未来の実現に貢献できるのではないだろうか。