ポルトガル、テレビや雑誌からの注目増、持続可能な回復へ多彩な魅力アピール
ポルトガル政府観光局は、日本でテレビや雑誌などからの関心が高まっている状況を追い風に地方分散などサステナビリティに配慮して観光振興に取り組んでいく戦略だ。日本市場は為替などの問題もあって回復が遅れている状況だが、大使館や観光局ではメディア懇親会や旅行会社向けのセミナーを開催するなどして復活に向けた取り組みを強化している。
このほど本誌取材に応じたポルトガル観光局日本・韓国局長のイネス・ケイロース氏によると、ポルトガルを訪れた日本人宿泊者の数は2019年に14万5000人となり、宿泊数の27万泊とともに過去最高を更新。しかしコロナ禍を経た現在は、他デスティネーションと同様に回復が遅れており2023年はそれぞれ5万5000人と11万3000泊となった。
そうした状況の日本をどう見るか。ケイロース氏は、日本はもともと人数では上位には入っていないものの、シーズンによる需要の上下動がほとんどなくショルダーシーズン、オフシーズンにも安定して訪問が見込める点でオーバーツーリズム対策の観点から重要な市場であると説明。今後も引き続き需要の喚起に取り組む考えを示した。
現状としては、グループツアーでの訪問は回復が遅れている一方、ファミリーやFITはすでに動いているところ。特にビジネスクラスや5ツ星ホテル、高価格帯のレストランなどを利用する客層が好調で、消費額の回復を牽引しているという。一方、今後については欧州のなかでも特に日本からの距離があり円安の影響も大きいことから慎重な見方をしており、「2025年までに25%減までに戻したい」との考え。
観光局としての活動では、改めて観光地としてのポルトガルの認知度向上に取り組む方針だ。ケイロース氏は、車で7時間で縦断可能な国土でありながら幅広い伝統や自然、歴史、文化、食やワインなどを楽しめるというポルトガルの「ぎゅっと詰まった多彩さ(packed diversity)」をアピールしていきたいと意気込む。また、地政学的リスクへの懸念が各地で高まるなかで世界平和度指数で常に10位以内にランクインする安心・安全の側面なども強みとして打ち出していく。
2024年の具体的な活動では、旅行業界向けにセミナーやFAMツアーを計画。またメディア露出の強化に向けてプレスツアーも予定。メディアについてはテレビや雑誌などからの協力依頼が明確に増加しており、全国ネットの人気旅番組で5週間連続での放映も予定されているところ。こうしたポルトガルへの関心の高まりは日本だけでなく米国でも進んでおり、2017年には国別で10位程度だった訪問者数が昨年は5位にまで上昇したという。