JTB代表取締役社長執行役員 山北栄二郎氏

  • 2024年1月9日

平和で心豊かな社会の実現に貢献する

 新春を迎え、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 また、このたびの令和 6 年能登半島地震により被災された皆様に心よりお見舞い申し上げるとともに、一日も早く生活の基盤が回復されますことをお祈り申し上げます。

 昨年 5 月の新型コロナウイルス 5 類感染症への移行に伴い、私たちは 3 年超に及んだコロナ禍を克服し、旅や交流が日常生活に戻ってきました。訪日インバウンド旅行は特に目覚ましい回復を見せ、訪問先としての日本への関心が一段と高まっています。世界の人流を見ても昨年の国際観光客到着数はコロナ禍前のおよそ 90%の水準まで回復し日本発着以外のグローバル旅行においても著しい回復が見込まれます。

 一方で日本発の海外旅行については、地政学リスクや円安の進行、燃油高騰などにより、完全な回復までには時間を要しています。私たちは海外旅行の機運醸成に努めるとともに、当社ならではの海外拠点ネットワークの力を生かし、渡航するお客様の安心・安全、そして豊かな旅行体験のために、現地での受け入れ態勢を万全に整えてまいります。

 さて、昨年開催された 2023 ワールドベースボールクラシックやラグビーワールドカップ 2023 では、多様性あふれる日本代表選手の活躍が大変印象的でした。当社所属の松山恭助選手(フェンシング男子フルーレ)も、世界選手権において日本の団体史上初となる金メダルをもたらすなど、更なる活躍が期待されます。今年は「第 33 回オリンピック競技大会(2024/パリ)・パリ 2024 パラリンピック競技大会」や、「国民スポーツ大会・佐賀(SAGA2024)」が行われ、2025 年には「世界陸上競技選手権大会」が 18 年振りに日本(東京)で開催されます。

 スポーツのみならず、2025 年に開催される「日本国際博覧会(大阪・関西万博)」では、訪れたお客様に大阪を起点に日本全国を回遊していただけるよう、47 都道府県にある JTB 拠点を有効に活用してまいります。

 2025年はまた、「汽車時間表」として創刊したJTB時刻表が100周年という大きな節目を迎える年でもあります。現在ではライフスタイル全般の情報をカバーするに至った出版事業を始め、交通と宿泊手配から発展した MICE 運営、報奨旅行や修学旅行の知見から考案された従業員エンゲージメント向上や教育活動支援の各ソリューション、事業パートナーの皆さまと進める観光産業のプラットフォーム基盤整備など、すべて祖業である“旅”から進化させてきたビジネス領域です。私たちは人と社会に深く関わるこうした領域に、デジタル化と DX 推進の投資を行い拡大していくと同時に、担い手となる社員がその力を十分に発揮できるよう、DEIBを強力に推進してまいります。

 JTB グループの経営理念である「地球を舞台に、人々の交流を創造し、平和で心豊かな社会の実現に貢献する」、その大前提となるのが豊かな地球の存続です。コロナ・パンデミックは収まりましたが、国連事務総長により“グローバル・ボイリング”と表現された気候変動は、カナダやハワイ・マウイ島での森林火災の遠因となり、私たちが地球市民の一員として速やかに行動する必要があることを示唆しています。

 新たな一年も、コンプライアンスを最優先に、私たちの企業活動ひとつひとつが経営理念を実現し、持続可能なツーリズム産業の未来につながるものとなるよう、弛まぬ努力を続けていくことをお約束し、年頭のご挨拶といたします。