マンチェスター、ネットゼロ挑戦で日本と経済関係強化、直行便実現にも意欲
マンチェスターを中心とするイングランド北西部の10の自治体が構成するグレーター・マンチェスター合同行政機構からこのほど同機構の市長や市議会議長ら30名超が経済ミッション団として来日し、大阪市と関係強化のためのMOUを締結するとともに12月7日には東京でレセプションも開催。「2038年ネットゼロ」への取り組みや大阪・関西万博を契機として日本との結びつきを強めながら経済を成長させたい考えを表明するとともに、日本からマンチェスターへの直行便の実現にも意欲を示した。
マンチェスターは、英国全体が2050年のネットゼロを目標としているなかで2038年と野心的な目標を掲げているところ。これについてグレーター・マンチェスター市長のアンディ・バーナム氏は、「英国全体が2050年に達成するためにはどこかが先行する必要がある。マンチェスターがその役割を担うことで新たなビジネスチャンスを生み出し、雇用を創出し、生活や住環境も改善でき、光熱費や公共交通機関の利用料金の引き下げも期待できる」と狙いを説明。
すでにトラムが再生可能エネルギーで運行され始めており、「遅くとも10年後までには英国で初めて路上の公共交通機関についてはゼロカーボンを実現できる」見通し。もちろん住宅など課題は多いものの、同地域で最大の電力事業者である関西電力をはじめとする日系企業との協力に期待しており、今回の来日でもダイキンやパナソニック、富士通、三菱、東芝、SSEパシフィコなど様々な企業と「良い協議ができた」という。
大阪市とも、こうした流れの一環で環境や経済の分野における交流促進や大学間連携等を内容とする友好協力関係構築のMOUを締結。バーナム氏はかつて「東洋のマンチェスター」と呼ばれた大阪との関係強化に喜びを示すとともに、MOUによって産学官の様々な場面で交流が拡大され今後「双方に非常に大きな恩恵をもたらす」と期待を語った。
直行便は取り組み重ねて実現目指す
マンチェスターへの直行便は、その可能性を疑問視する業界関係者も少なくないものの、日本以外では米国、中国、インドなどで誘致に成功しているほか、近くバンコク線の開設も予定しているところ。マンチェスター市議会議長のベブ・クレイグ氏も「時間のかかることであり確約できることは現時点で何もないが、それでも取り組んでいきたい」と意欲的だ。
クレイグ氏は「グレーター・マンチェスターはロンドンに次いで欧州で2番目に大きなクリエイティブ産業を抱え、テクノロジーやデジタルの部門でも成長著しく、フィンテック分野でも他都市を牽引している」などと語ったうえで、「今回の訪問団をはじめとする様々な取り組みの積み重ねが直行便の開設に繋がる」として数年内の実現を目指したい考えを説明した。
観光では英国北部観光の拠点に
観光については、音楽やナイトライフ、サッカー、ファッションなどマンチェスターならではの魅力を積極的にアピールするほか、「ロンドンまで電車で2時間で北部にもアクセスが良く、宿泊費はロンドンよりも安い」点など立地の良さから、湖水地方やスコットランドへの旅行の拠点としても需要を開拓していく。
このうち音楽については、オアシスなど20世紀から有名だったミュージシャンだけでなくロックバンド「ニュー・オーダー」やラッパーの「Aitch(エイチ)」など新たな才能も続々と登場しているといい、バーナム氏は大阪・関西万博でもそうしたミュージシャンたちの演奏を披露する機会を設けたいとの考えを語った。
また音楽関連では、2.4万人収容の屋内アリーナが来年完成予定で、これにより「マンチェスターはごく小規模なライブから大規模なコンサートまで幅広く対応可能となり、音楽の街としての立場をさらに強固なものになる」(クレイグ氏)予定。さらに英国で最も伝統あるオーケストラであるハレ管弦楽団の首席指揮者に日本フィルハーモニー交響楽団の首席指揮者であるカーチュン・ウォン氏の就任が決まったことも日本との関わりの一つとして触れられた。
このほかクレイグ氏はグルメシーンについても言及。「10年前にはミシュランの星付きレストランが市内にできるとは思っても見なかった」ものの現在は「名の通った素晴らしい店が何軒もできている」と充実ぶりをアピールした。