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宿泊業界は「求める人材」が不透明、キャリアプランを明確に

ホスピタリティコーチングサービス代表チーフコーチの青木昌城氏

 宿泊業界からはホスピタリティコーチングサービス代表チーフコーチの青木昌城氏が登壇。帝国ホテルの企画部で再開発やホテルの再生などを手がけてきた経験を生かし、経営者視点で宿泊業界の現状と就職状況について語った。

 同氏はコロナで多くの宿泊業者が廃業したことに触れ、「投資家目線で、コロナは単なるトリガーだったのではという厳しい目線で見ている。経営実態がどうだったかを見ておかないといけない」と指摘。都市よりも地方、シティホテルよりもビジネスホテルや旅館は深刻な状況にあるとした。

 なかでも地方のホテルや旅館はコロナでスタッフを解雇したことで、スタッフが別業界に流出。需要が戻ってきても再雇用が難しいことから人手不足が深刻な課題となっている。外国人労働者についても円安などから他国に出稼ぎにいく傾向があり、「今後は外人投資家による進出・買収・経営交代の波が来るはず」と予想する。

 そんななかで労働力の確保に取り組む宿泊業界だが、青木氏は「欲しい人材像の分かりにくさがある」とコメント。シティ系高級ホテルは「総合職・専門職の区分があるが、結局は専門職でも専門化しながら総合職になる」という。ただし、外資系ホテルはジョブディスクリプション(職務定義書)があることからキャリアプランがはっきりしており、適材適所が明確化しているという。

日本大学国際関係学部准教授の矢嶋敏朗氏

 旅館については業務に幅がある「何でも屋」で人材育成のスピードが早いが「経営者に依存する割合が高い」状況。こうした違いを説明したうえで、青木氏は「学生の皆には自分たちが選ぶ、という気概を持ってほしい」とコメント。人事制度がしっかりしており、キャリアプランが明確化し、成長するための制度がある会社を選ぶためには、幅広い年齢のOBOGを訪問する必要があるとした。

 宿泊業界に対しては「管理職が決定的に不足している。新卒から管理職に育てるという企業の態度が宿泊業界にはほとんどなく、自然に持ちあがるため甘い管理職・甘い経営者になってしまう」ことを課題として挙げた。そのうえで「学生に選ばれているという感覚を持つべき。人事がしっかりしているか、キャリアプランに哲学はあるのか。他人の人生を預かる気概がなければ(学生からは)選ばれない」と語った。