前売り券発売の大阪万博、旅行観光産業の意欲・戦略・期待感は?(後編)

 ツーリズムEXPOジャパンのフォーラムから万博の歴史や意義についてまとめた前編に続いて、後編では「万博を契機とした国際交流による持続可能な観光振興とは」をテーマとしたシンポジウムでJTB代表取締役社長執行役員の山北栄二郎氏らが語った万博の「売り方」「両業界としての向き合い方」について紹介する(全2回中の第2回)。

 シンポジウムでは、はじめに一般財団法人関西観光本部代表理事・専務理事の東井芳隆氏が講演しDMOとしての万博への取組状況を説明。続くパネルディスカッションでは東武トップツアーズ代表取締社長執行役員の百木田康二氏がモデレーター、一般財団法人沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)会長の下地芳郎氏、JTBの山北氏、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会担当局長の堺井啓公氏、日本政府観光局(JNTO)理事の若松務氏がパネリストとして登壇した。

「関西」の課題、解決に向けた取り組みとは

 東井氏の関西観光本部は、広域連携DMOとして福井県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、徳島県の関西地域2府8県をカバー。東井氏は、現状での課題として、東の東京や千葉と並んで西の大阪、京都を中心とする関西が訪日外客6000万人の達成に貢献すること、大阪、京都、奈良、兵庫と2府2県が近接し鉄道による移動が容易であることの有効活用、関西国際空港の利用促進を列挙した。

 そしてさらに、それらすべてに関わるより重要な問題として「ワン関西とよく言うが実は一つではない」と言及。「モザイク、ステンドグラス、サラダボウルなどと言われるが、インバウンドをお迎えするとなると例えば5日か6日お泊りになることになれば1つの観光地では対応できない」とし、各府県が連携して受け入れる体制づくりが重要であるとした。

 周遊・回遊の促進に向けては、かねてからモデルルートづくりを進めておりすでに8つを設定し、さらにそれを補強する形で酒蔵や城郭、グルメなどのテーマで複数の府県を束ねるテーマツーリズムの確率にも取り組んでいる。

万博へ、地域内のコンテンツ集約やMaaSなど注力

関西観光本部代表理事・専務理事の東井芳隆氏

 万博についても「万博プラス関西観光」を標榜し、一般財団法人アジア太平洋研究所が可能性を示した全体で5000億円の経済波及効果の引き上げを目指す。

 万博で見込まれる来場者数は2820万人でこのうち訪日外国人は350万人とされているが「こういった方々は万博に来るだけではない。万博から色々なところを巡られるわけで、巡られるのであれば関西に巡っていただき、それを広域観光の大きなエンジンにして行きたい」「反対に、周辺地域に泊まって万博会場に行くというのも十分あり」と言及した。

 その実現に向けては、これまでの複数日にまたがるモデルルートだけでなく、半日、日帰り、1泊2日など来場者がニーズに合わせて選べる多様なラインナップの確立や、万博会場の外でも万博の「いのち輝く未来社会のデザイン」のテーマに合った体験を提供できるようにすることが鍵になるとの考え。

 また、10の府県と4政令市、観光や交通関連の事業者が参画する「EXPO2025関西観光推進協議会」を今年3月に立ち上げ、地域内にあるコンテンツの集約・整理やそのプロモーション、受け入れ態勢の充実に取り組んでおり、関西広域観光情報ゲートウェイと名付けたウェブサイトも新設してワンストップで提供していく計画。交通分野でも10月に検索、予約、決済の機能をすべて一元的に提供する「Kansai MaaS」が稼働しており、こことも観光コンテンツを連動していく。

 そしてこれらの基盤が、北陸新幹線の敦賀開業、関空ターミナル改修、神戸空港国際化などの交通関連のサービス充実とともに万博後もレガシーとして地域の観光振興に貢献していく算段だ。