ドイツ【サステナブル・ワインツーリズム】視察①溪谷一面のブドウ畑の地で滞在を楽しむゆとり旅のあり方

  • 2023年8月8日
斜面の美しいブドウ畑を見ながら野鳥が訪れるザール川の自然保護区をカヤックで下る。

 翌朝は、ザール川の自然保護区をカヌーで下って、カンツェムへ。3席または4席カヌーのツアーで10.5kmを3〜4時間で下るツアーで、カヌーまでのシャトルサービス込みで一人17.5ユーロ(催行KANU SAARFARI)。

 今回のカヌーツアーには、オーガニック認証を受けたナチュラルワイン「Dr.Frey(ドクター・フレイ)」のコード・ハインリッヒ氏が同行。船着場のところで、まずはゼクト(2018年リースリング辛口)を一杯。フレッシュでブドウのアロマも清々しいスパークリングはカヌーの後の体に染みわたった。彼らは、ドイツでワインに特化したビオ生産者の団体であるecovin(エコヴィン)に加盟している。

カヌーツアー後のスパークリングは最高!Dr.Frey 2018年リースリング辛口
Dr.Frey のサステナブルなブドウ栽培について話すHenrich 氏

 土壌のために自然の草花はそのまま残す。急斜面で栽培するブドウは、垣根ではなく1本ずつ支柱を立てて、プラスチックではなくワイヤーで結ぶ。左右から枝をとり、ハートの形にする「モーゼルハート」というローマ時代からの伝統的栽培法をとっている。Dr.Freyのワインは日本でも販売されている。

日独の血をひくアーティストによる俳画を使ったエチケット(ラベル)Weingut Dr.Frey

 そこから車で約30分、1750年まで修道院で使われていた建物をワイナリーと5室のホテルにし、ザール川にも近いナチュラルリゾートとして人を呼びたいというワイナリー 「Cantzheim (カンツハイム)」へ。ここはKanzem駅から徒歩で川辺にあるというロケーション。ベルリンがベースの建築家マックス・ダドラー がデザインしたホテルは、ちょっとしたモダンアートギャラリーのようなおしゃれさで、アーティストの住まいのような趣もある。2名1室のスイートは朝食付きで200ユーロ。

ワイナリー Cantzheim の歴史的な建物の背後には驚くほど急斜面にブドウ畑が広がる
ここではインターナショナルな戦略もあってスパークリングをフランスのようにクレモンCremant と呼んでいる。日本にも輸出。
ホテルでは地熱の利用も。内部は、コンテンポラリーなアートや家具が飾る。
広々したスイートの客室には珍しくバスタブがあった

 この日最後に立ち寄ったのは、85ヘクタールという広大な敷地に現代的なミュージアムのような建物に圧倒されたワイナリー「Van Volxem (ファン・フォルクセン)」で、日本を含む14カ国に輸出するワインを造っている。ミネラルの多いスレート粘板岩土壌の急斜面に広がる畑のブドウがワインの酸やエレガントな個性を醸している。醸造所を斜面中腹に造って、ワイン造りに重力を利用。屋根に設けた太陽光発電パネルで自家発電。ワイン畑のあぜには野生の花を生やして水を保つなどサステナブルなワイナリー運営をしている。

1858 年からあるワイナリーを1999年に購入した現オーナーのローマン・ニエヴォドニツァンスキー 氏。この地の歴史を語る。
フレッシュでエレガント。ミネラルの味わいが広がる辛口のキュベは、シャルドネとピノ・ブランのブレンド
テイスティングルームの外の眺望広がるテラス。イベントやパーティも開催。
Van Volxemの全景。規模の大きさに圧倒される

 モーゼルからライン・ヘッセンへ。後編では、サステナブルなワイン造りに邁進する若手醸造家たちに出会う。

取材協力/ドイツ・ワインインスティトゥート(DWI)
取材・文/小野アムスデン道子