ドイツ【サステナブル・ワインツーリズム】視察①溪谷一面のブドウ畑の地で滞在を楽しむゆとり旅のあり方
翌朝は、ザール川の自然保護区をカヌーで下って、カンツェムへ。3席または4席カヌーのツアーで10.5kmを3〜4時間で下るツアーで、カヌーまでのシャトルサービス込みで一人17.5ユーロ(催行KANU SAARFARI)。
今回のカヌーツアーには、オーガニック認証を受けたナチュラルワイン「Dr.Frey(ドクター・フレイ)」のコード・ハインリッヒ氏が同行。船着場のところで、まずはゼクト(2018年リースリング辛口)を一杯。フレッシュでブドウのアロマも清々しいスパークリングはカヌーの後の体に染みわたった。彼らは、ドイツでワインに特化したビオ生産者の団体であるecovin(エコヴィン)に加盟している。
土壌のために自然の草花はそのまま残す。急斜面で栽培するブドウは、垣根ではなく1本ずつ支柱を立てて、プラスチックではなくワイヤーで結ぶ。左右から枝をとり、ハートの形にする「モーゼルハート」というローマ時代からの伝統的栽培法をとっている。Dr.Freyのワインは日本でも販売されている。
そこから車で約30分、1750年まで修道院で使われていた建物をワイナリーと5室のホテルにし、ザール川にも近いナチュラルリゾートとして人を呼びたいというワイナリー 「Cantzheim (カンツハイム)」へ。ここはKanzem駅から徒歩で川辺にあるというロケーション。ベルリンがベースの建築家マックス・ダドラー がデザインしたホテルは、ちょっとしたモダンアートギャラリーのようなおしゃれさで、アーティストの住まいのような趣もある。2名1室のスイートは朝食付きで200ユーロ。
この日最後に立ち寄ったのは、85ヘクタールという広大な敷地に現代的なミュージアムのような建物に圧倒されたワイナリー「Van Volxem (ファン・フォルクセン)」で、日本を含む14カ国に輸出するワインを造っている。ミネラルの多いスレート粘板岩土壌の急斜面に広がる畑のブドウがワインの酸やエレガントな個性を醸している。醸造所を斜面中腹に造って、ワイン造りに重力を利用。屋根に設けた太陽光発電パネルで自家発電。ワイン畑のあぜには野生の花を生やして水を保つなどサステナブルなワイナリー運営をしている。
モーゼルからライン・ヘッセンへ。後編では、サステナブルなワイン造りに邁進する若手醸造家たちに出会う。
取材協力/ドイツ・ワインインスティトゥート(DWI)
取材・文/小野アムスデン道子