上半期の訪日客1000万人超え、今後は中国の団体旅行解禁がカギ-JNTOメディアブリーフィング
日本政府観光局(JNTO)がこのほど開催したメディアブリーフィングで、JNTO理事の中山理映子氏は6月の訪日外客数が2019年同月比28.0%減の207万3300人となり、コロナ禍後初めて単月で200万人を上回ったことを報告した。1月から6月までの累計では35.6%減の1071万2000人で、上半期で1000万人を超える結果となっている。
下半期については「順調に回復しており、このままいけば引き続き(回復するのでは)」との見通し。夏休みや秋の紅葉需要に期待を示す一方で、コロナ以前は最大の訪日数を誇っていた中国の団体旅行緩和のタイミングが完全回復に向けたカギになるとの考えを述べた。
ブリーフィングでは中山氏が6月までの訪日外客数の動向を説明。最も回復が著しいのは米州・豪州で、昨年10月の訪日個人旅行再開以来右肩上がりで回復し、3月、5月、6月は19年を上回っている。東南アジアも1月以降高い回復率を示し、6月にはシンガポール、フィリピン、ベトナムが19年を上回り、全体で19年比の9割まで戻った。一方中国を除く東アジアは1月から横ばいで推移するも6月に回復率が高まり、同じく19年比で9割近くまで回復。欧州・中東についても昨年10月以降右肩上がりに伸び、3月以降も月により変動はあるにしろ着実に回復しているという。
中山氏は今後の課題として、1月から4月までの都道府県別宿泊統計を示しながら「東京都が著しく回復しているが、もともと地方を訪問していた東アジアの地方宿泊の回復が遅れている」点を指摘。地方空港の国際線直行便の再開の遅れが理由であるとし、夏ダイヤ以降の回復に期待を示した。
なお、中山氏によれば夏ダイヤの直行便はコロナ禍前の6割まで回復しており、東アジアを中心に増便・副便が続いているところ。6月単月では訪日客数の回復が直行便の回復を上回る市場が多く見られる一方で、アウトバウンドの伸びの鈍さが目立っているという。
「訪日マーケティング戦略」の活用呼びかけ
メディアブリーフィングでは、JNTOが6月末に発表した「訪日マーケティング戦略」の狙いと活用方法について中山氏が説明した。同戦略は観光立国推進基本計画を踏まえ、訪日観光における「持続可能な観光」「消費額拡大」「地方誘客促進の実現」に向け、効率的かつきめ細やかにプロモーションを展開するためのもの。市場別、市場横断での「高付加価値旅行」「アドベンチャートラベル」「万博」、MICEの3部構成で成り立っており、期間は2023年度から25年度までとなっている。
市場別のマーケティング戦略では旅行者のアンケートデータや海外事務所の知見などをもとに、消費額が大きく地方での宿泊の可能性が高く、一定の旅客数が見込めるセグメントを市場ごと設定し、訴求する対象や手段などを細かく選定。市場横断でのマーケティング戦略については3つの柱に合わせた方針を決定した。MICEについては国際会議とインセンティブ旅行をターゲットに訪日増のための取り組みを進めていく。
中山氏は「地域の観光関連事業者には戦略のターゲットを参考にしてもらい、地域にとってどこを狙うべきかを考えてほしい」と語り、訪日マーケティング戦略を地域に適したターゲットの絞り込みや効果的なプロモーション等に活用することを提案。「地域内で別のターゲットを狙うのではなく、『皆でここを狙いませんか』と協力してもらいたい」と呼びかけた。
このほか、メディアブリーフィングではJNTO市場横断プロモーション部次長の門脇啓太氏が、アドベンチャートラベルと高付加価値旅行推進に向けた取り組みについて言及。アドベンチャートラベルについては、9月に開催される「Adventure Travel World Summit(ATWS)2023」に向け、海外のアドベンチャートラベル業界向けイベントに参加して情報を発信していることや、サミット前に北海道を中心に全国で22コースのファムツアーを実施する予定であることを説明した。
一方で高付加価値旅行については「DMOと高付加価値旅行の販売者がつながっておらず情報不足なのが課題。JNTOがハブとなり、必要な情報が把握できる体制づくりに取り組んでいる」と説明。今後は東京都内で国内関係者のネットワーキングイベントを開催し、参加者を対象にLinkedInを活用したオンラインコミュニティも運営する計画という。