業界ニュースを振り返る ー 出国日本人数が正しい目標設定ですか?
今週は、観光庁長官に就任された髙橋一郎氏の会見がありました。
私の感想としては「特段何も言ってないな」というのが正直なところです。アウトバウンドが遅れているので復活に向けて継続していく、インバウントも変わらず進めて持続可能な観光立国にしていく、収益性や生産性の問題はDX推進を図り、待遇向上をお願いし、外国人活用も進めていく。悪いことは1つも言ってませんけど、少なくとも記事に書かれている情報では具体的な施策は全然書かれていません。
アウトバウンドの回復に向けて、記事中でも触れられているアウトバウンドの本格的な回復に向けた政策パッケージも円安オイル高の今の経済状況で、目標である令和元年のアウトバウンド数の半分を切っている状況から目標まで持っていくようなパワフルなものだとは思えません。かと言って、コンプライアンスどころか法令違反のニュースが目立つ大手旅行会社に税金を投入してキャンペーンを大々的に始められてもそれはそれで困りますが。
正社員の年収中央値が350万円、つまり月収が30万以下の人が半数以上という現状で、ほとんどのアジア旅行ですらパッケージが5万円から、オーストラリアや欧州は10万円からという海外旅行の現状を考えたら、旅行者数を目標として追う設定が間違っているのではないでしょうか?
一旦シンプルに考えれば、この状態で海外旅行に行く人数を増やす方法としては「年収を引き上げる」「海外旅行の価格を下げる」「海外旅行の相対的な魅力を上げる」あたりになると思いますが、年収は観光庁がどうこうしても引き上がるものではないですし、現状の旅行業界の低利益率を考えれば値下げを推し進める方法はGoToのように税金を投入するなり無税にするなりでしょうか。それも一過性のものでしょうから、持続的なアウトバウンドの旅客数にはなかなか寄与しにくそうです。そうなると海外旅行の魅力を、ということで安全情報の発信強化などを行っているのでしょうが、そもそもとして無い袖はふれないわけですから、いささか弱いですよね。
残念ながら日本が相対的に貧しくなったことが海外旅行へ行く人を減らした一因であるのは多くの方が賛同してくださると思います。これに対して数を目標にするのはやはり噛み合っていないのではないかと個人的には思います。これが事業なら、富裕層を狙うことによる平均単価向上を狙うところなのだと思いますが、やはりお上が考えねばならないことは1企業視点とは違うということでしょうか。にしても、無茶な目標に対して責任なく旗振りしているだけな気がするのですが。
本題とは全く関係なく、かつ急なご連絡になるのですが、本コーナーは今回を持ちまして一旦休止とさせていただきます。トラベルビジョンを退社してから1年半、社員だった頃から合わせれば3年弱もの間ありがとうございました。引き続きトラベルビジョンをよろしくお願いいたします。