JATAがウェビナー参加者に海外旅行アンケート-3月以降は欧州復調?パッケージ回復はいつ?

  • 2023年4月27日

 日本旅行業協会(JATA)はこのほど開催したアウトバウンド促進協議会(JOTC)の総会で、JOTCが実施したウェビナーの視聴者アンケート結果を公開した。ウェビナーは2021年から22年の2年間にわたって開催したもの。3月22日から31日まで8247名を対象に調査を実施したが、回答期間が短かったことや年度末だったこともあり、回答者数は338名、回答率は4.1%にとどまった。

 JATAによれば、ウェビナーの参加者は主に現場で働く旅行会社の人々。回答人数は少なかったものの「現場の生の声が集約した」との考えだ。

マスク緩和や5類化が追い風に、東アジアや欧州が人気

 アンケートでは、海外旅行の予約動向や今後の見通しなどを質問。このうち3月13日のマスク着用「自由化」や5月8日に控える新型コロナの感染症法上の5類移行を受けた、海外旅行に対する問合せ・予約の傾向の変化について尋ねた質問では、予約や問い合わせが「明かに増えた」との回答が34.6%、「僅かに増えた」が34.3%だった。「特に変わらない」は31.1%となり、規制緩和が海外旅行を後押ししつつある傾向が改めて分かった。

 とはいえ、全体の3割強は変わらないとの回答だ。これに対し、一般消費者の海外旅行への参加懸念事項は何かを聞いた質問(複数回答)では、「旅行代金の高騰」を約9割の回答者が選択した。2位は「物価高騰に伴う経済的困窮」で半数以上が選択。こうした結果から物価高や燃油サーチャージなどによる旅行代金の高額化が大きな要因と推察される。なお、「同調圧力」「感染に対する根深い恐怖心」を選択したのは3分の1未満だった。

 3月に入ってから問い合わせや予約が多いエリアを聞いた質問(複数回答)では、距離的な面からか東アジアがトップ。次いでヨーロッパ、東南アジア、ハワイ、北米と続いており、ヨーロッパの人気が高かった。出発月別では7月から9月が39.6%、4月から6月が39.3%、10月から12月が14.2%だった。

 旅行形態別(複数回答)では、友人旅行や家族旅行が多かったほか、ひとり旅やハネムーン・ウエディングにも動きがあった。年代別では40代から50代が35.5%、60代から70代が34.0%と約4分の3を占めており、時間的・金銭的に余裕がある層の意欲が高いと推察される。20代から30代は23.1%、10代は6.5%にとどまった。

海外パッケージ回復は厳しい状況か、OTAが伸長

 アンケートでは、今後の海外旅行についても尋ねる質問があった。海外パッケージツアーについては、「コロナ前の取り扱い規模に戻ることはない」との回答が最も多く35.8%を占めており、旅行会社の人々が厳しい見方をしていることが分かった。一方2025年までコロナ前並みに戻るとの回答は33.1%、26年以降に戻るとした回答は27.2%だった。

 海外受注型企画旅行についてはパッケージツアーよりも楽観的で、25年までにコロナ前並みに戻るとの回答は42.6%、26年以降に戻るとの回答は28.7%となり、4分の3弱が回復に期待を示した。海外手配旅行も同様で、25年までに戻るとの回答は43.5%、26年以降に戻るとの回答は28.7%だった。

 OTAの取扱規模や存在感について尋ねた質問では、「取扱規模と存在感は大きくなる」との回答が67.5%と7割弱となった。「取扱規模と存在感は変わらない」とした回答は22.8%、 「取扱規模と存在感は小さくなる」は9.7%だった。

人材不足や仕入厳格化に課題も

 アンケートでは旅行会社の課題に関する質問もあった。業界の課題となっている人材不足やナレッジ・ノウハウの低下について影響度合いを尋ねた質問では、「問題として顕在化しており、会社が対策を行っているが、解決には時間を要する」との回答が40.2%となった。また「深刻な事態で事業の継続に大きな影響を及ぼしているは29.3%だった。

 また、地上・航空仕入れの厳格化の影響度合いを尋ねた質問では「グローバルスタンダードと認識し、柔軟に対応ができている」が50.3%だった。コロナ前から課題認識としてあったからか、5割の人々は対応できているようだ。一方「柔軟に対応できず、顧客・サプライヤーとのトラブルが頻発している」が31.1%で、対応に苦慮している様子もうかがえた。このほか「仕入条件が厳格されたという認識はない」は18.6%だった。

 また、JATAでは自由記述で海外旅行前の海外旅行の活況を取り戻すために、旅行会社が取り組むべき対策を質問。これに対し、人材を確保し人材流出に歯止めをかけ、賃金アップし若者がめざす業界に転換すべきとの意見が出されたほか、仕入れ条件にあった法改正など業界の改革を求める声が上がった。

 さらに、商品展開については存在意義を高め、差別化をはかるとともに高収益構造に転換するために高付加価値型商品を造成することや、多様化する顧客ニーズへの対応、デジタルとアナログのハイブリッドでの顧客対応などがあがった。

 このほか海外旅行促進については、社会的・経済的意義の発信や、業界全体で団結し積極的にプロモーションすべきとの意見も出された。

※表はJATA資料より転載