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業界ニュースを振り返る ー JATAさん本当に作れますよね?

 今週、旅行業界全体に影響がありそうなものとしてJATAの観光業共通プラットフォームがありました。このプラットフォームの構想自体は、遅すぎる点を置いておけば理想的というか、少なくとも反対される事はなさそうなものですし、是非実現していただきたいものだと思います。問題は一点、実現できるのかというところでしょう。

 まず不安なのが、過去にも似たような取り組みがあったが「総論賛成各論反対で実現に至らなかったと聞いている」という点。「コロナによる逆境から一致団結」というには既に遅きに失しているというか、どちらかといえばもう慣れてしまった状況ですし、中小旅行会社がないがしろにされやすいということもGoToや旅行支援から明らかになり、挙げ句の果てには大手の一部は不正受給もあった上に、多くの大手が旅行を主とした事業バランスから変わっていこうとしていることが明らかな今、中小も大手も一丸となる、なんてことになるんでしょうか。

 もう一つは、参画する宿泊施設のメリットをどうするかです。というのも、まず前提として運営費をどうするのかという問題があります。これまでしていなかったことをするわけですから、プラットフォームの構築や運用保守に関するコストは純増になります。すでにJATAの正会員からは1社あたりの会費35万円を収集しているわけで、追加費用を払えというのはなかなか言いにくいことだと思います。会費で構築したのに利用すると別料金、なんてことになるならそれはそれである意味解決はしそうですが。そうしないとなると、運営費をカバーするためにAPI使用料やJATA会員以外の利用会社から料金をとることになるか、有料機能をつけたりこのプラットフォーム経由で仕入れができるような仕組みをつくることになるでしょう。

 しかし、売買の機能などはシステム構築や運営も大変でしょうし、競合が数多いる中やるのか?という疑問があります。そうなると、今度は宿泊施設からも金額を取るのか?ということになります。そもそも新たに情報を更新する先が増えるということは単純な業務負荷なわけで、それをしてもらうには宿泊施設側にそれ以上の恩恵がないと厳しいでしょう。理想はこのプラットフォームさえ更新すればどこも更新しなくても大丈夫となることでしょうが、すぐにそうなるのは不可能でしょうし、そういった利便性を提供しようとすると今度は大手旅行会社やOTAにも情報がAPIで提供される必要があるでしょう。でもそうなると今度はAPIでわざわざ繋ぎこむならそれなりのメリット、つまり繋ぎこむことでどれだけのメリットが得られるかという問題になり、よくあるプラットフォームのジレンマが生じます。そしてこういうことを色々話している間に各論反対状態にまたなるんじゃないの?という不安があります。

 望むことなら、こういった批判的な意見など意に介さず、理想的なプラットフォームを完成させていただきたいものです。どうか「やっぱりだめでした」や「ろくに使えないただの利権のためのシステム」にだけはならないように願います。