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業界ニュースを振り返る ー 給与以外の高待遇

 今週はJATA経営フォーラムから、海外旅行系の話題と訪日旅行系の話題を一つずつ触れたいと思います。

 まずは海外旅行系ということで、新たな需要創造のパネルディスカッションの内容に関して。1記事の中にダイナミックパッケージvsパッケージですとか、旅行業法の時代遅れですとか、色々と触れたいところもありますが、今回私が気になったのは酒井氏がおっしゃっている「旅行の真髄」の部分です。

 「OTAではそこまで深堀できず、目的ははっきりしているが動機を知らないということがありうる」というのは、賛同する一方で懸念点もあります。確かに、現時点でOTAが「この旅行者はどうやら車椅子を利用しているようだから、この場所までこう行ったほうが良いです」などと推奨することはないでしょうし、その点は旅行会社に勝ち目が十二分にあると思います。ですが、当然そういった手厚いサポートをするのであればコストも価格に乗っかるわけで、高くても丁寧な旅行を旅行会社に頼みたいという層の市場規模がどの程度あるのかというと少し疑問です。中小ならまだしも、大手旅行会社が生き残れるほどの規模はないでしょう。だからこそ、大手は旅行以外の事業による収益率をあげようと躍起になっているのでしょうが。

 もう一つは、どこかのタイミングでそれすらもITで解決しちゃうんじゃないのかなーと……最近のAIによる進歩を見てると少し思ってしまいますね。最初に旅行の目的や動機を詳しく聞くページがあって、それが顧客情報に紐付いて保存されていて、タイミングを見計らって旅行を勧めたり行く先もその人にアレンジしたり……昨今の進化の速度を見てたら数年でできちゃうんじゃない?と思ってしまうのが恐ろしいです。まぁそうなったら旅行業界とか関係なく多くの仕事が人じゃなくてAIがするのかもしれませんが。そうなったら人件費分を上乗せしてまで旅行会社に頼んでもらうには、結局旅行の提案力や知識で勝負するしかないんでしょうかね。

 もう1つウィズ・ポストコロナの訪日旅行に向けて~訪日旅行再生に向けた課題と質的変換~のパネルディスカッションに関して。人手不足が問題であるとなれば、解決方法はやはり好条件で人材を集めるしかないでしょう。ただでさえ、労働可能な人口がどんどん減っていく日本で、何も手を打たずにこれまでと同じような条件を出せば解決できる問題ではないでしょう。

 一方で、じゃあ高給与を出して解決だ!といけば話は簡単ですが、現実問題としてどこもかしこも給与を上げられるわけではないでしょう。インバウンド向けであればまだ単価を上げていける余地があるとはいえ、世界中に競合がいるわけでどこかで価格にも限度があります。

 じゃあどうするのかというと、だいたいは「高給だけど雇用保障がない」か「給与以外のところで好条件を出す」というところになるかと思います。前者は外資だとありがちな話で、私も今勤めている会社では絶賛リストラ旋風が吹き荒れていますが、代わりに給与や有給などの条件がめちゃくちゃ良かったのでそういうものだと同僚も私もどこか納得しています。ただ、当然企業としては先立つものがあるわけです。一方、後者は結構ホテルなどには合っていると思うんですよね。例えば「子供がいるから送り迎えの時間は勤務できない」「週3なら勤務できる」みたいな方を正規雇用するとかですね。自由度の高い勤務時間というのは、かなりのウリの1つになると思います。それこそ、日本の会社でサイボウズ株式会社なんかは自由すぎる働き方で有名ですが、こういったことができれば特別給与が高くなくても働きたい人は全然いると思うんですね。これもある種の高待遇だと言えるでしょうし、給与条件で勝てないならほかで勝負するというのが必要でしょう。