モバイルファーストとオールインワンでシェア拡大、グローバルOTAが見る日本市場-Trip.com勝瀬博則氏

-コロナ禍以降、旅行先としての日本の位置づけに変化を感じますか。

勝瀬 我々はデータの推移から、コロナ禍で大きく変わったのは4つの「S」だと分析しています。まずはグループが小さくなる「Smaller」、安全を求める「Safety」、予約から旅行までの時間が短くなる「Short booking window」、そして持続可能性「Sustainability」。この4つが大きくお客様の行動を変容させています。

 引き続き日本は海外のお客様、特に東アジア、東南アジアのお客様にとって魅力的なデスティネーションであることに変わりはありません。中国でコロナが終わったらどの国に行きたいかを調査すると、日本が断トツの1位で、2位がタイです。現在タイにはほぼ入国制限がないため、この春節の間はタイに行かれるお客様が多く、日本にはまだ中国からのお客様は戻っていませんが、恐らく時間の問題です。今年タイに行かれた方は、来年日本が開いていたら日本にいらっしゃるでしょう。その点は悲観はしていません。

 Trip.comは中国、香港、シンガポール、台湾、韓国など日本の近隣のお客様にリーチできますが、こうした近隣の人々が、日本にはじめにマスで戻ってくるお客様だと思います。またこうした客層は日本に対して非常に友好的な目を持っていらっしゃる方が多いので、リピーターも多くなります。我々はこうした方たちに対して、いかに日本は安全で魅力の高いところであるかを発信したいと思っています。

-観光庁や日本政府観光局(JNTO)は付加価値の高い旅行者の誘致に力を入れていますが、日本が旅行先として選ばれるためにはどのような課題があるでしょうか。

勝瀬 まず重要なのは発信を強めること、日本には何があるのかをしっかりとお伝えすることだと思います。例えば我々のデータでは、約半数のお客様はInstagramやTik Tok、Facebookなどで旅行情報を取っています。こうしたSNSで情報発信をしていないと、そもそも見つけてもらえないということになります。

 手前味噌になりますが、Trip.comではアプリに様々な機能を統合して、旅のInstagramやTik Tok、YouTubeのようなメディア機能を持っており、非常に多くのお客様にリーチしています。中国でのマーケットシェアは多くを占めており、中国で作られているほとんどのスマートフォンにはTrip.comの中国版であるCtripのアプリがプレロードされて、基本的に皆が使っているアプリです。アプリ内で自分達のエリアの広告を発信していただくことを検討していただいても良いかもしれません。

 もう1点必要なのは観光インフラです。以前はWi-Fiの問題もありましたが、言語の問題もあります。こちらも手前味噌ですが、当社はいわゆる3大OTAのなかで唯一、自社でカスタマーサービスを提供しています。トラブルがあったときには25言語で24時間、お客様には母国語で、宿泊施設には日本語でサポートするので、インフラとして活用していただくことも可能です。言葉のギャップや通信のギャップをいかに埋めていくかが重要だと思います。

 また、「チームジャパン」として発信をしていくことも重要です。JNTO、都道府県、DMOなど様々な観光プレーヤーがいるなかで、いかに日本として発地にアピールしていくかということです。

-観光産業では世界的に人材不足が課題となっていますが、日本のTrip.comでは今年、昨年の4倍の採用を実施していると聞きました。人材確保や育成に関するお考えをお聞かせください。

勝瀬 引き続き採用はしていきたいと考えていますが、バイリンガルやトリリンガルの人材を採用することはどんどん難しくなってきています。良いオフィス環境やコンペティティブな給料、やりがいがある仕事、成長できる環境を提供しつつ、一緒に伸びていきたいと思っています。良い人材を確保することは会社にとって重要な成長の基礎になっていくと認識しています。

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