シンガポール航空、ファーストクラス機内食を一新、羽田・関空線は1日3便目指す

  • 2023年1月25日

(右から)ケニー・テオ氏、ベティ・ウォン氏、村田吉弘氏、SQ北アジア地区リージョナルバイスプレジデントのフー・チャイウー氏

顧客の声を受け、本格的な日本料理メニューを伝統的なデザインの器で

SQの新しいファーストクラス向け機内食「京懐石」(上)。重箱に盛られた先付3種と向付。香りや味付けを濃いめにするなど機内での食事を考慮して工夫(下)

 シンガポール航空(SQ)は、2023年1月からファーストクラス向けの機内食「京懐石」のメニューと提供する食器を一新した。メニューおよび食器の選定を手がけたのは、インターナショナル・カリナリー・パネルのメンバーであり、ミシュランの3つ星レストラン「菊乃井」の村田吉弘氏。同氏を迎えての試食会の模様と、SQ日本支社長のケニー・テオ氏へ需要の復調や今後の取り組みについて聞いた。

 SQでは1999年から日本発着のファーストクラスにおいて「京懐石」を提供しており、ディビジョナル・バイスプレジデント・インフライトサービス&デザインのベティ・ウォン氏は「今回の刷新にあたりおこなった2回のフォーカスグループインタビューでは、日本の旬の食材を使った本格的な日本料理体験を求める声が高かった」と述べ、23年間シンガポール航空の機内食に携わっている村田氏は「メニューはフュージョンから伝統的なものに、器もモダンなデザインからトラディショナルな日本文化に根ざしたものに変えた」と今回のコンセプトに触れた。

 今回の新しい冬メニューは、ナルミの新しいデザインの食器で、1月6日から機内で提供されている。先付3種と向付(刺身)は、二重の重箱にそれぞれが盛り付けられている。重箱にすることで客室乗務員のサービスの効率性を図りながら、伝統的な懐石料理を再現している。本格的な京懐石を追求し、味付け、器の重量やデザインなども様々に配慮がされている。

アウトバウンド増への刺激と共に質と効率性の向上図る

テオ氏

 SQは、2022年冬期スケジュールで羽田・成田/シンガポール線がそれぞれ1日2便で週28便、関西は週14便、名古屋が週3便、福岡が週3便と大幅に増便。成田/ロサンゼル線は週7便で総計55便で、コロナ前の週84便と比較し、65%にまで戻している。さらに2023年5月1日以降は関西/シンガポールを週14便とする計画だ。

 テオ氏は昨年10月からの日本の水際対策の緩和について「インバウンドは順調に復調してきている。ここ数ヶ月で円安も追い風となり、シンガポールやインドネシア、さらにオーストラリアやニュージランドからトランジットで日本へ行く需要も非常に増えた。一方で日本からのアウトバウンドはまだ弱い。たとえば期間限定ブッキングのディスカウントなどのキャンペーンなどでアウトバウンドへの刺激を図りたい」と現状について述べた。

 また今後の見通しついては「弊社はコロナ以前の5年前から燃油サーチャージを航空運賃と別に設定していない。料金や便数は需給バランスで決めており、今年の年末を目指し、羽田、関空のシンガポール便を1日3便に増やせればと思っている。名古屋、福岡も来年の3月を目指して週5便に増やしたい」と語った。

 そのほかサービス面については、アジアではすでに実施しているエコノミークラスの弁当ボックスやお粥などシンガポールフードを取り入れたサービスなどを展開していきたい考えだ。

 テオ氏は最後に「旅行会社や観光局ともさらにアウトバウンドに対するクリエイティブでエキサイティング、また顧客には重要な機内の衛生や安全性の高さなどメッセージを発信していくことが大切。対面で連携を深めることもできるようになったので、今後は旅行会社と一緒に需要喚起を強化していきたい」と意欲を語った。